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「プテラノドン」ヘアスタイルは軽量化しない

かつて太古の空を制した
恐竜”じゃない”大型生物

 恐竜映画への登場頻度が高いためか、プテラノドンはよく恐竜の1種と勘違いされることが多いです。確かに、プテラノドンは白亜紀時代の地層から化石が発掘されていますが、恐竜ではなく「翼竜」という別グループの古生物です。

 太古の空を飛んでいた大型の爬虫類であるプテラノドン。近年の研究で「獣脚類の恐竜は鳥類となり、現代を生きている」とされていますが、鳥類と同様に飛翔能力が認められる翼竜は鳥類とは縁が遠いグループとなります。

プテラノドンの骨格

翼開長は約6mにも及ぶ
1本の手指を伸ばした翼

 鳥と違って、プテラノドン含む翼竜は羽毛の生えた翼ではなく、皮膜を伸ばした翼で飛翔します。この皮膜は、人間でいう手指の薬指(第4指)から発達したものです。プテラノドンの化石をよくみると、薬指が異様に長く伸びているのがわかります。

 その翼開長は約6mにも及び、非常に大きな空気抵抗を生じます。そのため、一般的には羽ばたきに適さないとされ、おもに滑空することで飛翔していたと考えられています。プテラノドンは魚食性であったとされ、海辺近くに生息していたと考えると、障壁の少ない環境で滑空飛行していたとイメージしやすいでしょう。

プテラノドンの翼をみると、手指が発達したものとわかる

トサカは異性を惹きつけ
子孫を残すための器官か

 飛翔する大型生物と考えると、さぞかし軽量な体のつくりをしていたと思われます。ですが、プテラノドンの化石の頭骨をみると、トサカのような妙な突起物が確認できます。これはジュラ紀の地層から発掘された翼竜にはみられないものなので、飛行に必要なものではないと考えられます。軽量化のためには無用どころではない、この突起物。これはいったい、なんなのでしょうか。

ジュラ紀の地層から発掘されたランフォリンクス

 一説によると、異性を惹きつけるためのディスプレイではないか、と考えられています。それも、メス個体がほかの種類の翼竜と区別できるよう、オス個体が発達させたものではないか、という見方をされているようです。真下には大海が広がる空の上、照りつける逆光のなかで同種を判別するには、トサカというシルエットから判別できるポイントが必要だった、というのです。

 その真意は、絶滅してしまったプテラノドンに尋ねることはできません。ただ、「あれはこういうために使われていた」、「いやいや、じつはこういう役割があった」なんて議論を深める楽しみを、かつての空の王者はわたしたちに与えてくれているような気もします。

参考文献
・川上和人『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』新潮文庫2018年
・リチャード・コニフ(2017)「翼竜 空を飛ぶ世にも奇妙なモンスター」『ナショナルジオグラフィック 日本版 2017年11月号』P57-69

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