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「キーウィ」大阪万博がきっかけで日本に上陸した鳥
※2024年8月5日更新
天王寺動物園で飼育されていたキーウィの「プクヌイ」がその生涯を終えました。現在、日本国内でキーウィを観察することができなくなりました。心よりお悔やみ申し上げます。
42歳で幕を閉じた「ジュン」
伴侶の「プクヌイ」も高齢に
2024年7月5日、天王寺動物園は同園で飼育していた希少鳥類「キーウィ」の「ジュン」が亡くなったと発表しました。ジュンは1982年にニュージーランドで生まれ、享年42歳だったとのこと。キーウィの寿命は30〜40歳とされており、同園で飼育されているメス個体の「プクヌイ」も34歳で高齢となっています。
キーウィはニュージーランドに生息する夜行性の飛べない鳥(走鳥類)で、絶滅危惧種に指定されている希少鳥類です。同国から輸出制限がされている生き物なので、日本でみられるのは大阪にある天王寺動物園だけとなっています。
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卵は鶏卵の6倍ものサイズ
重さは親の体重の20%
飛べない走鳥類のなかで、キーウィは最小とされています。ですが、この鳥が産む卵のサイズは鶏卵6コ分もの大きさを誇ります。重さは親鳥(メス)の体重の20%、つまり5分の1の重さなので、かなりボリュームがあります。これは卵から孵化したヒナが、2〜3日程度で自立してエサを獲れるよう、育児の時間を減らすためだとされています。
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(2018年開催の大阪自然史博物館の特別展示)
キーウィは孵卵期間(産卵から孵化するまでの期間)も鳥類では長く、70〜85日間とされています。じっくりと守り抜いて生まれた分、ヒナは早く大人になれる印象でしょうか。ただ、卵を産んだ親鳥は、夜間でも数時間、卵を巣内に置いたまま数時間もどこかに行ってしまうこともあるそうです。こうした卵が外敵に食べられてしまうケースも非常に多いとのこと。ニュージーランドにはもともと、キーウィを捕食するような動物がいなかったそうなので、こうした生態になったのではないかと個人的に感じます。
飼育開始は1970年
NZ政府から2羽寄贈
日本でキーウィの飼育がスタートしたのは、1970年。大阪万博の開催を記念して、ニュージーランド政府が2羽を寄贈したのがきっかけでした。天王寺動物園ではキーウィの繁殖にも挑戦してきたそうですが、成功例は報告されていません。
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カメラ前まで出てきた様子
20世紀後半、ニュージーランドで増加した外来種によりキーウィは数百〜数千羽まで減少しましたが、現在原住民や現地の保護団体の取り組みによって数が回復傾向にあるそうです。この先また、キーウィの生息数が増えていき、輸出制限が解かれて、日本各地でキーウィがみられるようになった未来を期待したいところです。
参考文献
・天王寺動物園のキーウィ「ジュン」死ぬ 国内では唯一飼育 あべの経済新聞 2024年7月5日 https://abeno.keizai.biz/headline/4212/
・「キウイ」って鳥なんです 見られるのはアジアでは天王寺動物園だけ 朝日新聞2023年10月5日
・藤原昇「キーウィ物語(1)」(2007)『畜産の研究61巻8号』養賢堂
・藤原昇「キーウィ物語(2)」(2007)『畜産の研究61巻9号』養賢堂
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