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「ヒグマ」1年で1800頭が××された大型生物
成体は最大500kg近くに
ウシ60頭を襲った個体も
この生き物を語るために、血生臭い話を引き合いにすることは躊躇いがあります。ただ、この生き物と近い距離で生きている者と、縁遠い土地で生きている者との間に、大きな乖離があるように感じられ、あえて少し煽るような記事を投稿しようと思います。
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この生き物、ヒグマは国内では北海道にのみ生息するクマです。本州でみられるツキノワグマよりも体格は大きく、成体では最大500kg近くにも及ぶのだそうです。道内ではたびたび獣害事件が報じられており、最近では家畜であるウシ60頭超を襲った「オソ18」と呼ばれるオス個体が駆除され、話題を呼びました。
「腹破らんでくれ!」と
懇願する妊婦を食うクマ
ヒグマが引き起こした事件を紹介するうえで、「三毛別事件」を避けては通れません。「三毛別事件」とは、たった1頭のヒグマが8名もの道民をあやめ、官民合わせ600名もの討伐隊員が集められた獣害事件史上最悪の事件です。
事件が起きたのは1915年の12月。北海道の三毛別にて、開拓村の村民が次々と襲われる事態が起きました。本件の詳細は木村盛武氏の『慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』にて深く語られているのですが、冬眠できなかったオスのヒグマが開拓村を襲撃して人を食べたり、食べ残した人の死体を埋めて貯蔵したりと、村民を恐怖の渦に陥れました。
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被害者のなかには妊婦も含まれていました。妊婦はヒグマに「腹破らんでくれ! 喉食って殺して!」と懇願したとも記録されています。それは子を守ろうとする母の必死の想いでしたが、空しくも母子ともに死亡するという結果となりました。
「かわいそう」の意見が
なぜ生まれるのか考える
’23年度、北海道におけるヒグマの補殺数は1804頭と、記録が残る1962年からみて最多を記録しました。補殺の内訳でもっとも多かったのが「有害鳥獣捕獲(駆除)」であり、農作物の食害や人身への危害防止のための駆除が進められました。
話が「オソ18」に戻りますが、本個体が駆除された際、管内の町には20件以上の批判が集まったといい、いずれも道外の人たちから寄せられた声だそうです。そうした声のなかには「クマがかわいそう」といった感情的なものもあるそうで、つい「実情も知らずに……」と一蹴したくなります。
ただ、そうした声が出るのは、ヒグマという生物の危険性や、彼らが引き起こした惨事が充分に伝わっていない、ということも考えられるのではないでしょうか。森の奥深くで静かに暮らしている、ふさふさした大きな生き物。そうしたデフォルメされた印象だけでクマという生き物をみている人が一定数いるのではないか、と私は思っています。
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クマに限らず、厳しい自然界を生き延びようとする野生生物には、共通するおそろしさが必ずあります。本記事がだれかにとって、野生生物を再考するきっかけになってもらえれば、と切に祈ります。
参考文献
・木村盛武『慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』文春文庫 2016年 第6刷
・北海道23年度ヒグマ補殺 最多1804頭 前年度比1.9倍 ドングリ不作で出没多発 北海道新聞2024年12月3日
・ヒグマ駆除 自治体に批判も寄せられていますが… 賛成/反対?〈みなぶんアンケート〉 北海道新聞2023年10月11日
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