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遊ぶように生きる

「一生遊んで暮らしたいな~~」


そんな友人のなにげないツイートを見て、こんな考えが浮かんできた。

一生遊んで暮らすのは難しいけど、「遊ぶように生きる」ことはできるのではないか、と。

自分が楽しめることで誰かの力になれれば、それは遊んで暮らしていることと同義なのではないか、と。


「一生遊んで暮らす」という夢は、溢れんばかりの娯楽が存在する現代社会において、多くの人が抱く願望ではないかと思う。

当然、僕だって一生遊んで暮らしたい、と思うことはある。

そして、その気持ちは人一倍強く、これを実現するために何をすればよいかを大真面目に考えていた時期があった。


◇◇◇


思い返すと、始まりは高校時代に友人のこんな言葉を聞いたときだったように思う。

「もうすぐ懲役50年か~」

これは、就職を数年後に控えた友人が発した言葉である。

(かなりトゲのある表現だということは重々承知だが、斜に構えたい盛りの10代学生の軽口ということで、何卒ご容赦いただきたい。)

皮肉を込めた冗談交じりのこの言葉は、なぜか僕の心に強く刻まれたのだった。


「言われてみれば、平日に8時間も仕事をしていたら、自分のやりたいことがほとんどできないじゃないか!」

遊びに全てを捧げていた高校生の僕は、本当に嫌な気持ちになった。

どうすれば自分のやりたいことをして、一生遊んで暮らせるのか。

そんなことを夢想し続けていた僕も気づけば大学卒業間近、就活のシーズンが到来していた。


就職活動はしていたものの、「就職したい」という気持ちよりも、「なんのために就職するんだろう?」という感情ばかりが心の中で大きくなっていく。

「働きたくねえなあ~~」と言いながら、不採用の連絡に肩を落とす自分や友人の姿に、違和感を感じずにはいられなかった。

現代を生きるための当然の道筋だとしても、どうしてもこの矛盾から目を背けられなかった。


◇◇◇


こんな気持ちを抱いたまま就職活動に精を出せるわけもなく、僕は卒業後すぐにフリーランスとして活動を始めることになる。

…というと聞こえは良いが、実際は数か月のニート期間を過ごしていた。

そんな中、暇つぶしで始めたことがあった。

文章を書くことである。


基本的に家にこもり、話す機会が少ない自分にとって、文章を書くことは自分の感性や考えを発信する場として非常に楽しいものだった。

その後、文章を書くことに需要があることを知った僕は、初めて執筆の仕事をいただいた。

そこで書いたのは、大好きな歴史に関する文章だった。


歴史の教科書を読みこみ、初学者の方もわかりやすいように平易な文章で説明した。

その時、僕はある感情を抱いた。

「あれ、これ仕事っていう感じがしないぞ?」


仕事というと、「キツいことをしてお金をもらう」というのが僕の中での考え方だった。

それがどうだろう。

この仕事をしているときは、自分の好きな歴史について学ぶことができるうえに、文章表現まで磨くことができるのだ。


驚いたのは、初仕事の内容を気の知れた友人に話した時だった。

「こんな仕事で、こんな楽しさがあって…」

初めての仕事のことを意気揚々と話す僕に友人が発した言葉は予想外のものだった。

「よくそんなめんどくさそうな仕事できるな、おれは絶対できないわ(笑)」


あっけにとられてしまった。

自分にとって楽しい仕事が、他の人にとっての楽しい仕事ではないことを悟った瞬間だった。


このとき、僕は考えた。

「遊ぶように生きれば、一生遊んで暮らすことは可能なのではないか」と。

少なくとも、歴史に関する文章を書いているときの感覚は遊んでいるときのそれに非常に近いものだった。


◇◇◇


そして、フリーランス活動を始めてからわかったことなのだが、「こんなものまで仕事になるの?」というのは想像以上に多い。

イラスト制作、手芸、動画編集、旅、ゲームといった、自分の中では趣味と判別していたことが仕事になりうると気づいたのだ。

自分が楽しいと感じるもので、誰かの力になる。

自分にとっては「遊び」でも、それを必要としている誰かにとっては「遊び」ではなく「仕事」となることもあるのだ。


楽しさは感じるものの、時間がなくて手が回っていない、というものが誰しも一つはあるはずだ。

「遊びだ」とまで感じなくとも、「楽しさを感じる」だけでよいと思う。

楽しむ心が向上心を育て、「楽しい」という気持ちをさらに大きいものにしていく。

その「楽しい」と思える気持ちは誰でも持てるものではなく、実はあなただけが持っているものなのかもしれない。


まずは、自分の「楽しい」に正直になってみてほしい。

その小さなタネが、「遊ぶように生きる」感覚につながっていくことだろう。

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