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カスタマーサクセスにとって重要な「アウトカム」を、実際に考えてみた話

こんにちは!ご覧いただきありがとうございます。
CareMakerという在宅医療向けのVertical SaaSスタートアップにてカスタマーサクセス部門の責任者をしています、尾田(@knsn_07)と申します。

今日は、昨年ぐらいから特にカスタマーサクセスにおいてその重要性が高まっている「アウトカム」について、自社のSaaSにおいても実際に言語化してみたので、どのような思考プロセスで考えたかを、参考までにシェアしたいと思います。

<このnoteで参考になるかもしれないこと>
・カスタマーサクセスにとって重要な「アウトカム」についての理解
・アウトカムを特定するためのフローの具体事例

<より参考にいただけそうな対象企業>
・オンボーディングプロセスは一定型化出来ているが、その後の顧客の成果創出の取り組みが道半ばな企業
・自社のカスタマーサクセスが顧客にコミットすべき成果に対して、チーム内で明確に共通言語化が出来ていない企業


1. アウトカムとは何か

アウトカムとは、簡単に言うと自社のプロダクト/サービスを提供することによって顧客が創出する成果のこと。

もう少し詳しく言うと、最終成果である「売上向上」「コスト削減」ではなく、その一歩手前で自社のSaaSが影響を及ぼしうる成果のことだと捉えています。

ここ数年のカスタマーサクセスにおいては、単純に顧客のオンボーディングを完了させたり活用を促進するといったことだけではなく、その先に
自社のプロダクト/サービスによって顧客がビジネス上の成果を得られることに、よりカスタマーサクセスとしての論点が移ってきているようです。

考えてみれば、それは"カスタマーサクセス"という名称を持つ職業の本来的なミッションだと思いますし、個人的にはそこに向き合うことは、カスタマーサクセスをやることの醍醐味だと感じます。

※アウトカムについてより詳しくは、以下の記事を参考にしてみてください。


2. アウトカム特定の具体的なプロセス

今回アウトカムを考えるにあたって周辺の関連項目も含めて考えたかったので、以下のようなフレームワークを準備して考えてみました。

結果としては、以下のようなアウトプットになりました。ここに至るまでの手順や考え方を、順を追って記載します。

手順1.プロダクト価値を言語化する

まずはプロダクト価値を言語化しました。プロダクト価値はいわば「そのSaaSが機能として優れている点はどこか」ということで、「その価値を最大限享受することによって、顧客が求めるアウトカムが創出される」という関係性だと理解しています。

アウトカムは顧客側が得たい成果なので、個社ごとに違う可能性はありますが、ソリューションとしてのプロダクト価値はプロダクトに起因するものなので、顧客に関わらず共通です。

弊社の場合は、訪問看護業界向けのスケジュール管理SaaSを提供しており、「AIによるスケジュール自動作成」を主要なプロダクト価値だと定義しました。

弊社のサービスは元々紙やExcelでやっていた業務を代替するため、他のプロダクト価値として、もう一歩手前の「スケジュールをクラウド管理できる」も候補として考えましたが、以下のような点を踏まえて AIによる自動作成をメインのプロダクト価値として絞って考えました。

※プロダクト価値をAIの自動作成に絞った背景
1. メインターゲットは自動作成までいって初めて価値になる
2. Excel等の導入前の代替手法と明確に差分があるのは AIによる自動作成
3. マーケティングメッセージでもAIによる自動作成をメインの訴求として使っている

手順2.プロダクト価値から導き出されるアウトカムを、ライト/ディープに分けて言語化する

次に、プロダクト価値を最大限に享受するとどういったアウトカムが創出できるかについて考えました。
この時に参考にしたのは、導入時に顧客からヒアリングする「導入目標」でした。
アウトカムは顧客がそのSaaSの活用によって得たい成果であるため、導入目的と概ねイコールになってくるからです。

一般的に、各SaaSで主要なアウトカムは大体数個に集約されるようですが、弊社でも顧客の導入目的を集計し分類すると概ねいくつかに集約されたので、この点からも顧客の導入目的からアウトカムを考えるのは、アプローチとして割と妥当ではないかと思います。

またアウトカムを、ライトサクセスとディープサクセスに分けて段階を置いた定義にしました。
弊社のようなバーティカルSaaSは特に、現場のライトサクセスなくして経営のディープサクセスはないため、まず短期ではライトサクセスに注力して中長期ではディープサクセスに注力するという支援ステップを強調しておきたかった為です。

手順3.アウトカムを創出する為に、必要なサクセスプランを言語化する

次に、アウトカムを創出するために必要なサクセスプランについて考えました。

サクセスプランとは、アウトカム達成のためにプロダクト価値だけでは足りない部分を補うためのカスタマーサクセス担当による提案や追加サポートのことを指します。

弊社の場合、ライトサクセス段階では現場の方がAIを有効に使いこなせるようになるまでの検証を弊社側で主導しながら運用に乗せきることや、顧客の組織内で業務をDXしてこれまで属人化していた業務を標準化するために、To Beの業務フロー/運用体制を構築する提案がそれにあたると考えました。

また、ディープサクセス段階では、現場の負担解消という視点を離れて、売上増加により近いプロセスでのアクションにサクセスプランの視点も切り替わっていく事を念頭に考えました。

具体的に言うと、弊社の顧客は訪問看護事業を展開しており、売上=訪問件数×訪問単価で表されます。
一方で、保険サービスのために訪問単価は基本的に水準が決まっているため、我々が介入する事によってコントロールできる部分は少ないと考えました。
(※厳密には、我々が間接的に影響を及ぼしうるとしても、サクセスプランは後述の内容と同じものに集約される形でした)

そのため、アウトカムを訪問件数の増加と定義し、これを実現する為に我々が介入できるポイントをサクセスプランとして位置付けました。

その結果、移動時間を最小化するためのAI活用やデータ分析/コンサルティング支援、病院などから新規利用者の紹介数を増やすための営業活動数の最大化支援などがそれにあたるとしました。
ちなみに、これらは弊社ではメインプロダクトとは別のプロダクトを用いたサービス提供になってくるため、課題が高次元化することによるクロスセルの機会創出という話とも捉えられます。
ここまで実現できれば、現場だけではなく本部/経営にとって嬉しい、ディープサクセスとしての成果であると言えると思います。

手順4.(オマケ)プロダクト価値をCSメトリックに転換して指標化する

アウトカムについて言語化はできたのですが、最後にこのアウトカム思考の元でのKPIとして有効な「CSメトリック」についても考えてみました。

CSメトリックとはプロダクト価値をいかに顧客に伝えられているかを判断する指標で、チャーンの先行指標であるとも言われています。

CSメトリック自体が適切であれば信号のように、青サインの顧客はプロダクト価値が最大化されアウトカム達成へと向かう。一方で赤サインの顧客はプロダクト価値が顧客に伝わりきらず、費用対効果が得られないとしてチャーンしてしまう。といったように、非常に分かりやすくKPIマネジメントとしても機能させやすいポテンシャルのある指標だと思います。

前述の通り、弊社の場合は「AIによるスケジュール自動作成」を主要なプロダクト価値と定義しましたが、これをいかに顧客に伝えられているかを判断する指標として、「1週間に1回以上、AI機能が活用されている」という内容を設けました。
上記の記事でも、CSメトリックは絶対数より割合の方が推奨されていたのですが、あえて弊社の例では絶対数にしました。
その理由としては、そもそも絶対数が推奨されていないのは良し悪しの基準が一見分からないからなのですが、弊社の場合は顧客がスケジュールを組む頻度がおおよそ週1なので、少なくともその頻度でAIが使われていないと顧客状態としては悪いという判断は出来そうだと考えたからです。
これを週次/月次でトラッキングしていくと良いPDCAが回せそうです。

3. おわりに

以上、今日はカスタマーサクセスにおいて重要な「アウトカム」について、自社で考えた際の思考プロセスを一例として記載してみました。

なお、こうやって定義すること自体は出来ても、これを組織に共通認識として浸透させて運用に乗せることもまた難易度は高いと思っています。
そういう意味で、以下STORESさんの「サクセスリリース」という社内資料で全社的にアウトカムを周知してしまう取り組みはとても秀逸だなと感じたのでシェアさせていただきます。

この件に限らず、カスタマーサクセスに携わる方々とフランクに情報交換が出来ればと思ってます!
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