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バーティカルSaaSにおける、カスタマーサクセスのTIPS 5選
こんにちは!ご覧いただきありがとうございます。
CareMakerという在宅医療向けのVertical SaaSスタートアップにてカスタマーサクセス部門の責任者をしています、尾田(@knsn_07)と申します。
今日は、主にノンデスクワーカーを対象としたバーティカルSaaSにおいて、カスタマーサクセスを行う際に生じやすい問題と対策を、自らの経験を踏まえCSM目線でのTIPSとして5つ書いていこうと思います。
▼本noteの想定対象者
・バーティカルSaaSのカスタマーサクセス
・クライアントはノンデスクワーカー
・故にお客様はITリテラシーが高くはなく非デジタルネイティブな高年齢層も多い、かつ実務が忙しくデスクワークに十分な時間を捻出できない
問題1. 基本的な操作理解のハードルが高い
・問題詳細
最も想像がしやすい事だと思いますが、ノンデスクワーカーの方の場合はITリテラシーが高くはない傾向にあるため「オンボーディングにおける操作理解」がまずハードルになります。
例えば、基本情報の登録1つとっても説明がないと自主的に行うことが難しい方は多いですし、UI上「…」の部分には設定があるだろう、「:」の部分は掴めばドラッグ&ドロップできるだろう、といった「日頃からITデバイスを多用している人にあるようは感覚」も持ち合わせていない前提に立つべきです。
また、一般的にITリテラシーが高くない方がITシステムを使う際の心理状態として「適当な所を押して、ミスしてしまったら怖い」という不安感が強い傾向にあります。
そのため操作自体が分からないというよりも、それらしいボタンはあっても初見では迂闊に押すことができない、という状態の場合もあります。
その他、ITリテラシーの問題は以下アセンド下吹越さんのnoteがとても参考になるので宣伝させていただきます。
・対策
上記の問題に対する対策としては、「①頭ではなく体で覚えてもらう」「②ミスや不具合の際の対処法の伝達」の2つが効果的でした。
1つ目の「体で覚えてもらう」については、こちらの一方的な説明や資料を渡して終わりではなく、お客様側で実際に操作してもらいながら理解を進める体験を設計することです。
具体的には、打合せの中で画面共有して操作してもらいながら説明を進めるやり方や、打合せ間に操作が必要となる簡単な宿題を渡すやり方などが一例です。
注意点として、そもそも画面共有の仕方が分からないケースも多いので、最初は丁寧に説明が必要です(※ウィンドウ共有とタブ共有の違いとか、地味に言葉にすると説明が難しい。笑)
ちなみに弊社では試行錯誤した結果、基本操作はプロダクトツアーで宿題として渡し、発展的な操作は打合せ内で画面共有しながら操作して理解するやり方に辿り着きました。
2つ目の「ミスや不具合の際の対処法の伝達」については、もし仮に誤った操作を行なってしまったとしても、「こうすれば元に戻せるので安心して操作して下さいね」を伝えて操作に対する不安を払拭するということです。
先述した通り、ITに不慣れな人ほど操作ミスに対する不安がありますが、ミスした時に操作を取り消せる方法があると分かっているとその不安は減ります。
加えてプロダクト観点では、上記を見据えて「操作の取り消し機能」や、「ミスを防止するアラート機能」などを拡充させておくことも重要です。
(※スプシの戻るボタンや履歴で復元ボタンはやはり優秀・・!)
問題2. お客様が忙しすぎて導入が頓挫する
・問題詳細
バーティカルSaaSは導入後、お客様が忙しすぎてオンボーディングがうまく進まないケースがよくあります。
最悪の場合は十分に使いきれていないのに解約…ということもあり、そういった価値を判断する手前の解約はCSとしては何ともやるせない気持ちになります。
この問題の背景として、ノンデスクワーカーの方はやはりデスクに向き合う時間が少ないため、「最小限の時間で準備を終えて、さっさと運用を始めたい」のが本音です。
ただ、そこにITリテラシーの問題が障壁としてあるので、デスクワーカーの方と比べて中々現実的には難易度が高いわけです。
「現場は忙しい」を踏まえた上で、初動の限られたオンボーディングチャンスの中でいかに運用に乗せられるか。
「ズルズルと時間をかけずに軌道に乗せるためのオンボーディングフローをいかに仕組み化できるか」の最適解を、CSとして見つける必要があります。
・対策
上記の問題に対する対策としては、「打合せ内での導入作業進行」「失敗しないための導入体制」の2つが効果的でした。
1つ目の「打合せ内での導入作業進行」については、貴重な打合せの場でなるべく具体的な導入作業を進捗させてしまうということです。
一般的には打合せでは説明をし作業は宿題にしがちですが、ノンデスクワーク業界の場合はお客様は忙しいので宿題は渡しすぎると負担になりやれないケースも多いです。
そのため打合せ内では説明中心になるよりも、必要な作業や操作検証などをご一緒することに時間を割く方が、限られた時間の使い方としては有効です。
また宿題を渡す場合も、お客様が忙しい中でも対応しきれる分量で渡すことが重要なため、その程度については検証しながら調整する必要があります。
2つ目の「失敗しないための導入体制」については、お客様側の体制を厚くすることによって失敗リスクを減らすということです。メインの業務担当ではなくても、顧客社内の中に年齢が若い方くて世代的にデジタルネイティブな人や、事務の方で少しでもExcelを普段から触っている方などがいらっしゃれば、プロジェクトに巻き込むべきです。
最低限その方にさえ理解いただければ、CSが都度教えなくてもお客様の中で教え合ってくれるので、かなり進みが良くなります。
そういった意味で、キックオフした時に体制面が不安な場合は一度立ち止まって、他に巻き込める方がいないかお客様と相談するのが良いかと思います。
(※体制づくりに関しては、以下のBYARD小堤さんのnoteを勝手ながら参考にさせていただきました)
問題3. 言語化が足りず意思疎通に苦戦する
・問題詳細
ノンデスクワーカーのお客様と対峙する際に、特に機能に関する要望や質問を頂いた際、その背景や意図が汲み取りきれないことが多々あります。
結果として、お客様の声を解像度高く言語化しきれず、重要な機能改善に繋がる声だったとしてもそのチャンスを棒に振ってしまうリスクさえあります。
そうなってしまう要因として、CS側はドメイン知識が不足していることが多いため少しの会話から深くを洞察する勘所がないこと、またお客様側は現場業務で忙しいためコミュニケーションが簡素になりがちなこと、の両面が起因しています。
・対策
上記の問題に対する対策としては、「CSがお客様の声を理解し、丁寧に言語化する努力をする」ことが効果的でした。
たとえば顧客から要望やフィードバックを貰った際、「起きている問題」「問題の背景」「それを踏まえた改善要望」など、絶対にヒアリングする項目を決めておいて、それを聞きながらCSがお客様の声を言語化することをルール化してしまうのが良いです。
(※前提、お客様は忙しいのでメールベースではなく、電話や打合せのついでにサッとヒアリングするのが⚪︎)
また私の経験では、機能フィードバックを深ぼっていく中で、最終的に戦略のアップデートに繋がるぐらい大きな示唆を得られることもありました。
従って、フィードバックを貰った際に私の場合は、なるべく以下のように具体的に深掘って&思考を拡張して整理することを心がけています。
▼機能フィードバックを貰った後のアクション
1. 機能面でのフィードバックを貰う
2. その背景を "自分が完全に腑に落ちて理解できるまで" 徹底的に聞く
3. 理解したことを抽象化して整理し、再解釈する
4. 整理する過程で理解不足なことがあれば、再度深掘って聞く
5. 同じことが他の戦略顧客にも当てはまるのか、整理したことを当ててみる
6. 戦略顧客にとって汎用性が高い機能改善を特定し、開発に連携する
7. 上記整理の中で、戦略顧客自体の言語化もアップデートする
問題4. 本部を重視して現場が疎かになる
・問題詳細
バーティカルSaaSの場合、営業段階で現場が意思決定に関わらず経営や本部との接点だけで導入が決まることも少なくはないですが、いざ始めてみると現場の方が否定的で反発が強いケースがあります。
こういったケースは大抵、「売上利益を向上する」「生産性を向上する」など本部目線に寄った目的でトップダウンで導入されてしまっており、現場目線で嬉しい目的設定がしきれていないことが問題です。
中にはそもそも本部↔︎現場間の関係性自体に致命的な問題があるケースもありますが、単純に進め方/巻き込み方が悪いだけのケースも多いです。
・対策
上記の問題に対する対策としては、「現場のライトサクセスを第一優先にした支援フローの構築」が効果的でした。
本部とは関係構築しているものの、現場は否定的で積極的に使わない
本部に対する価値提供はまだ不十分だが、現場からとても好評
1,2の状態を比較した際、1は早期に解約されてしまうリスクが非常に高い状態であることは容易に想像できます。
もちろん中長期目線では本部まで価値提供することは大事にしたいのですが、特に現場の業務をDXするバーティカルSaaSにおいては、現場に受け入れられることはまず第一に重要であるため、
CSの取り組み優先度としても、現場のライトサクセスを再現性をもって達成することにフォーカスした仕組みをブラッシュアップすることが何より重要だと考えています。
弊社では導入後3ヶ月をライトサクセス達成までの期間と捉えて、そこまでの効果的な支援方法について検証を重ねました。
現在では現場の方に浸透し価値を感じてもらえるやり方が見えており、一定の再現性は担保できました。
そしてこれができると、3ヶ月後に現場の方にインタビューした良いお声を導入事例にすることもでき、ライトサクセスの事例づくりのプロセスまで一定型化することができるようになりました。
※ライトサクセス・ディープサクセスについては以下山田さんの記事をご参照ください。
問題5. 営業担当やCS担当の印象が悪い
・問題詳細
私自身、初対面の方であってもコミュニケーションは比較的得意なタイプなのですが、実は現職でノンデスクワーカーの方と向き合うようになってから、初回の打合せでいきなり相手方の機嫌を損ねてしまった失敗をした経験があります。
また、それ以外にもバーティカルSaaSを経験する中でお客様の口から「XX(ツール名)の営業は偉そうだから嫌い」というような趣旨の声を聞くことが比較的多いと感じます。
中には、「営業担当は嫌いじゃ無いけど、同席している上司が偉そう」と、マネージャが足を引っ張っているケースも散見されます。
共通する理由として、「現場の方の苦労やプロフェッショナルさを理解せず、自社視点のポジショントークを振りかざしてしまっていること」が挙げられます。
いきなり畑違いの人間がやってきて、よく分からない難しい言葉を使いながらこれまでのやり方を否定される、そんなイメージです。
もはや、その担当者が原因で解約されかねないほどの心象の悪さになってしまいます。
・対策
上記の問題に対する対策としては、「現場を視察し、そのプロフェッショナルさを見て理解すること」が効果的でした。
具体的には、関係値のある顧客の現場に1週間以上ぐらいの期間を設けて滞在させてもらうと良いです。
私も実際に、しばらくの期間お客様の現場に毎日出勤させてもらい、現場視察をさせてもらったことがあります。
ただ横にいるだけでは迷惑なので、PCのお困りごと解決や業務外の集計業務の手伝いなど、自分にできることを考えてギブするようにはしました。
その結果、現場を知る前とはお客様の見え方が180°変わり、まさにその道のプロフェッショナルなのだなと、心からリスペクトを感じました。
それにより、それまでは非効率だから早く変えるべきだと安易に思っていた従来のホワイトボードや紙による管理業務も、その背景や工夫を知った上でコミュニケーションすることができるようになったり、
日々ひっきりなしに電話対応されていることを知ったことによって、お客様の忙しさが事実ベースで身をもって理解できたりと、顧客と向き合う上でのマインドセット・心構えが大きく変わりました。
おわりに
本日は、バーティカルSaaSでカスタマーサクセスをする上でCSMが直面しがちな問題を5つ厳選して、それに対する対策に言及してみました。
ややふわっと書いてしまったので具体性に欠ける部分はありますが、気になる部分があった方がいらしゃれば、ぜひ直接ディスカッションさせてください。
ちなみに、本noteは2/19(水)にあるバーティカルSaaSのCS交流会に向けて話したいことの整理のため書いたものでもあります。
今回開催分は既に枠がいっぱいなのですが、次回以降の開催もあるみたいなので、ご興味ある方はぜひ次回ご参加下さい!
(※次回開催日は未定なので、詳細は主催者の株式会社TAIAN のりまんさんのXをチェックしていただければと思います)
そして、今回の内容に限らず、今後もカスタマーサクセスに携わる方々とフランクに情報交換が出来ればと思ってます!
Xでフォローやコメント、DMもお気軽に頂ければリアクションさせていただきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。