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Vineland-Ⅱ: 結果の活用方法と具体例

以前の記事で、Vineland-Ⅱについて解説しました。

Vineland-Ⅱの評価結果は、日常生活や支援計画において非常に役立ちます。
今回は、 どのような状況で、この適応行動評価ツールが役立つのか具体的な例を挙げて説明します。

1. 支援計画の作成 

例1: 学校での個別教育プログラム(IEP)
状況: 8歳の子どもが学校で困難を抱えていた。 友達とは遊んでいるが、引っ込み思案であまり自分のことを話すことはない。教師からの指示は、聞いているように見えるが、あまり理解していないようで、そのような時は困惑したまま固まっていることもある。
評価結果: Vineland-Ⅱの評価で、コミュニケーションスキルが遅れていることが判明。
活用方法:
具体的な目標設定: セラピストと保護者が協力して、言語理解や表現のスキルの向上を目指す具体的な目標を設定。教師ともその目標を共有した。教室では、座席を前にし、一斉の指示だけでなく、個別に声かけるようにした。
特別支援クラス: 言語聴覚士によるプログラムを特別支援教室での個別指導に取り入れ、トレーニングの機会を増やした。
進捗のモニタリング: 定期的な評価とフィードバックを通じて、目標達成度を確認し、必要に応じてプランを調整した。個別指導の場面では、自分からわからない時に伝えられるようになり、次のステップとして自分から質問をするように促している。 一斉指示で理解できることが増え、 個別の声かけはそれほど必要ではなくなっている。

2. 家庭での支援

例2: 日常生活スキルの向上
状況: 12歳の子どもが家庭内での自立生活スキルに課題を抱えている。学習面や家庭外での生活面では大きな問題は抱えていない。中学受験に向けて忙しく、自宅では自分のことでも自分でやらず、保護者にやってもらうことが多い。
評価結果: 日常生活スキルの評価で、身の回りの整理整頓や簡単な家事にスキル不足があることが判明した。
活用方法:
本人へのフィードバック: 知能や他のスキルに比べて、日常生活のスキル(身辺自立、家事、地域生活)の不足を数値をもとに説明した。将来一人暮らしをしたい希望があるが、このままでは生活に支障があることに自分でも気づき、スキルの向上を目指したトレーニングを希望した。
家事の練習: 現在のスキルをもとに、次の段階のスキルを確認した。まずは、親と一緒に簡単な家事(食器洗いや洗濯物の片付けなど)を練習し、自分で行う部分を増やしていくことでスキルの向上を図った。言われて行うのではなく、自分から気づいて行うことができるように、生活の中でチェックするタイミングやポイントをセラピストと確認した。
視覚的サポート: 忘れてしまってもリマインドできるようにチェックリストや視覚的手順書を使って、作業の手順を分かりやすく説明し、自分で確認しながら行えるようにした。
正の強化: 成功体験を積むことで自信をつけられるように、取り組みの結果を次のセッションに持参してもらった。

3. 社会的スキルの発達

例3: 社会性の強化
状況: 15歳のティーンエイジャーが対人関係を築くのが難しい。
評価結果: 社会性の評価で、友達との関わり方や感情の表現に課題があることが判明した。自分の興味のある話になると、一方的になってしまい、相手が戸惑っていても気づかずに話し続けてしまう。 友達と遊びたい気持ちはあるが、自分から誘えず誘ってもらうのを待っている。 自分の気持ちを伝えたい とは思っているが、どのように表現したら良いのかわからず、どうせわかってくれないと伝えること自体は諦めてしまっている。
活用方法:
ソーシャルスキルトレーニング: ソーシャルスキルトレーニングプログラムに参加し、対人関係のスキルを学んだ。また、セラピストと定期的に相談を行うことで、1対1での相互的なコミュニケーションスキルが高まった。
ロールプレイ: プログラムで学んだことをもとに家族とロールプレイを行い、さまざまな社会的状況での対応を練習した。その後に、友達との間で実践をすることで、さらにソーシャルスキルを高めていった。
グループ活動への参加: 趣味や興味に基づいたグループ活動に参加し、自然な形で対人スキルを向上させる機会を作った。

4. 不適応行動の管理

例4: 不適応行動の改善
状況: 10歳の子どもが攻撃的な行動を示し、学校や家庭で問題を抱えている。思い通りにならない状況の中で、かんしゃくを起こし、保護者や妹に対して、暴力を振るうこともある。学校でも、他の児童や担任に対して暴言を吐くことがある。
評価結果: 不適応行動の評価で、特定の状況で攻撃的な行動を示すことが確認された。
活用方法
心理教育: 感情について心理教育し、その対処の仕方について、より適切な方法を一緒に探していくことに合意した。
行動分析: 本人と一緒に行動のトリガー(引き金)やその後の結果を分析し、問題行動のパターンを理解した。
代替行動の指導: 攻撃的行動の代わりに、適切な表現方法や対処法を教えた。コントロールが困難になる前の自分の状態に気づくことができるよう自身の生理的反応への気づきを促した。
一貫した対応: 家族や教師が一貫して適切な対応を行い、 感情的になった場面でも、安全に落ち着いていく経験を積み重ねることで、問題行動の減少を図った。

まとめ

Vineland-Ⅱの評価結果は、個々のニーズに応じた具体的な支援や介入を計画する上で非常に有益です。 現状、大きなトラブルがなかったとしても、「スキルの不足が顕在化していないだけ」ということも少なくありません。スキルの獲得は一朝一夕ではできませんが、早い段階で現状を把握することで、時間を味方につけて、適切なスキルをじっくりと獲得していくことが可能となります。そうすることで生活の質を向上させることができます。このような例を参考にして、Vineland-Ⅱの評価結果を最大限に活用しましょう。


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