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鶏の先頭からも退いたら,僕らはどうしたらいいのだろう?

やあ。
昨日投稿した記事は,ぜんぜん読まれず。ちょっとへこみますね。。
こんな始めたての小さなnoteでも,反応の良し悪しがあるんだねぇ。

このnoteは何を書くか定まっていなくて,いろいろ書いてみているところ。
でも,こうやって反応がいつもより少ないと思えること自体が,特別なことなんだとも思う。
だって,僕はこれまで,こういう話をする機会を失っていたから。
友達となんでも共有できていたと思っていたティーンエイジャーが終わって,夢を叶えようと修行に明け暮れた20代が過ぎ去った。
はっと周りを見渡したら,友達なのに知らないことがたくさんあった。知らない趣味,知らない興味,知らない物語。
それは自分を主語にしても同じで,友達に話していていいはずのことを話せないままになっていることが積み重なって,でもいまさらその山を崩すと一気にバランスが崩れちゃいそうで,結婚して子どももできて,単純にゆっくり話す時間もないし。

そんな中で始めたnoteだから,反応の良し悪しがわかるなんて,僕の生活には大きな変化が起きているんだね。


そんなわけで,今日は昨日の続きを。
ただ,そのままじゃやっぱり読まれなさそうなので(読んでくれた人,ありがとう),前置きはしないで先に主題から入ろう。

昨日話したかったのは,「ジェズスと鶏口牛後」という話。
ジェズスは,アーセナルというプロサッカークラブのフォワード。
鶏口牛後は,「大きな組織で末端に甘んじるよりも,小さな組織でリーダーになれ」という意味のことわざ。
これだけで,アーセナルファンの人はだいたい言いたいことがわかっちゃうと思うんだけど。
ファンじゃない人にも、ぜひ耳を傾けてほしい。
これは,自分の立ち位置に悩む人に向けた話なんです。


僕はジェズスという選手が好きなんですよ。
彼がいま陥っている苦境に感情移入してしまうから。

彼は2年前に,リーグトップのチームから移籍してきた。
そのチームは超強豪で,ここ数年タイトルを取り続けてきた。
彼自身は若手の頃からずっと期待されてきた有望株で,いよいよサッカー選手として油が乗る時期に差し掛かっていた。
しかし,競争の世界は厳しい。
強豪チームには,毎年とんでもない選手がどんどん移籍してくる。
このままではジェズスは,このチームでは次のエースストライカーになれない。

そこで,彼はアーセナルにやってきた。
アーセナルは長い暗黒期を経て,新体制のピースがはまりはじめていた。
新生アーセナルで指揮を取る新進気鋭の若手監督は、若かりし頃の期待されていたジェズスを知っていた。
ジェズスは彼に請われてアーセナルにやってきたのだった。
「本当のジェズスになって,一緒に優勝してくれ」と。

そして迎えたシーズン。
彼は約束通り,期待通り,アーセナルで主役になった。
得点を決め,仲間を鼓舞し,エースストライカーになった。
明らかにチームの主軸であり,試合中継の画面越しに見るだけでも,その熱量は伝わってきた。
充実した表情,エネルギーに溢れた動きは,一人のサッカー選手が自己実現を果たす瞬間を映し出していた。

その姿は,僕がちょうど修行期間が終わって,再びサッカーを真剣に見始め,アーセナルというチームを応援し始めたときと重なっていた。
僕の新しい赴任先も,「牛」の集団ではなかった。あきらかに「鶏」の小さな集団だった。
でも,その中で自分は高い志を持っているという自負があった。
周りはもうここで満足してしまっているように見え,これ以上求めていないように見えた。でも,同僚たちは不満も抱いているようだった。
それでも動かない,動けない人たちを見て,僕は暗澹たる思いを抱いた。
自分もいつかこうなっちゃうのかな。

そんなとき,ジェズスの移籍と活躍は,僕を勇気づけてくれた。
遥か異国,分野もまったく違うし,プロフットボールというレッドオーシャン中のレッドオーシャンで戦っているジェズスの姿と,自分を重ねるのは,恥知らずかもしれない。
それでも,そこに通ずるものを僕は感じてしまった。
その実感は確実なものだった。「がんばれ!いいぞ!」


こうして,彼は「本当のジェズス」になった。
なのにー。
これで話が終わらないという事実が,競争の残酷さを否応なしに教えてくる。

翌シーズン,そしてさらにその次のシーズン(今シーズン),彼はケガに苦しんだ。
先発出場を逃している間に,よくあることではあるものの,新しい選手が活躍した。
やっと,彼はセットバックから戻ってきた。
でも,そこに以前あった彼の居場所がなくなっていたのだった。

つまり,次のエースストライカーが,その椅子に座っていたのだ。
彼は,将来を期待されながら,「牛」のチームではエースになれなかった。
だから,「鶏」のチームに来て,エースになった。
なのに,気づけばまた同じことが彼を襲っていたのだ。
牛後をやめて,鶏口になったのに,「鶏後」に位置していた。
トップを目指す戦いは,かくも厳しい。。

その頃,僕も同様に悩んでいた。
いまの所属先で激しい競争があるわけではない。
だけど,僕は僕で,「鶏」の先頭に立ちたいとも思っていないし,「牛」のチームに行きたいという野望もしぼんできていた。
このまま「鶏」でもいいのかもなぁ,安定しているし,子どもも生まれたばかりで大変だし,このままでも十分幸せだし,なんて。
でもそれは,僕がいまの職場に入りたてのころに抱いた同僚への違和感や嫌悪感が,今度は自分に向かって突き刺さることを意味していた。

これはジェズスとは違う状況だけど,
でも,「鶏」の中で自分の立ち位置を見つけられなくなって,自分の居場所だと信じられなくなっているという点で,シンパシーを感じてしまうのだ。
彼はいま,エースの座を取り戻すべく頑張っている。
だけど,試合に出ていても,以前のようなパッションもエネルギーも感じないのよ。それがとってもさみしくて。
このままじゃいけない,このまま終わりたくない。そういう気持ちはすごく感じる。
だっておれは,おれになるためにここに来たんだから。
だけど,壁は分厚い。
努力をやめるわけにはいかない。
でも,心底熱中できない。本腰を入れられない。
現時点での自分に与えられた役割をこなしちゃっている自分がいる。
それでは,少なくともあのときの自分を納得させられない。
それもわかっているんだけど,と。


だから,僕はジェズスが,そして彼の物語が好きだ。
ここから,再び主役になることがサクセスストーリーとしてはわかりやすいし,万人受けするかもしれない。
だけど,そうならなかったとしても,僕は彼のことを追いかけたいと思う。
そして,僕自身も,これからどうなっていくかはわからない。
未来の自分と交わせる約束が,いまはない。
それでも,またこの数ヶ月先,数年先に,彼の物語に感情移入して,自分を重ね合わせてみたいと思う。


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