若杉栞南(ワカスギカンナ)

「言葉に鼓動を」その言葉を胸に脚本を書く仕事をしています。 一日に一つの鼓動…「一日一…

若杉栞南(ワカスギカンナ)

「言葉に鼓動を」その言葉を胸に脚本を書く仕事をしています。 一日に一つの鼓動…「一日一鼓」の物語をお届けします。 創作ペースは様々ですが、中編の物語も描き続けます。 ぜひ、ご一読ください。 https://wakasugi-kanna.comoinc.co.jp/

マガジン

  • 一日一鼓【6月】

    この辺りには神様の木があるんです。 何か碑があるわけじゃない。 ただ静かにずっしりとこの地に根を張っています。

  • 若杉栞南の世界

    • 4本

    |弊社所属の脚本家 若杉栞南 |「言葉に鼓動を」その言葉を胸に脚本を書く仕事をしています。 |#一日一鼓やオリジナルコンテンツの脚本などを掲載中です。

  • 一日一鼓【四月の話。】

    夜が来ない街で、青い目の青年と出会った。 でも、彼は本当に存在しているのだろうか?

  • 一日一鼓【2月】

  • 一日一鼓【1月】

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works

最新▶︎テレビドラマ テレビ朝日土曜ナイトドラマ「ハレーションラブ」 etc... ▶︎朗読劇 4/13-14|雷5656会館 音楽朗読劇「銀河鉄道の夜を、また」 etc... ▶︎オリジナルコンテンツ 配信朗読劇onetake「真っ赤なひとみ」 etc... portfolioこちら→https://wakasugi-kanna.comoinc.co.jp contactこちら→ https://tayori.com/f/wakasugikanna/

    • 一日一鼓【6月】まとめの物語

      6月の物語 『緑色と、答えてもいいのですか?』 一日一鼓【6月】再会。  まとめられない私の物語。 講義のサボり方を知った21歳の夏。 衰退の「た」の字まで見えている街を目指して電車に揺られた。 人よりも植物の方が生き生きとした街の竹に囲まれた渓谷を歩いていた。 あの頃のように。 すると…「晴れ間に見える雨の色は?」 背中に向けられたその声は、紛れもなく彼のものだった。 変わらず彼は問いかけてくれた。 変わってしまった私に。 「晴れ間に見える雨の色は?」

      ¥600
      • いつも応援してくださる皆さまへ

        本日、脚本家として1歳の誕生日を迎えました。 七月は私にとってとても縁のある月です。 作品をとっても、私個人のお話をとっても。 昨年夏には“七夕が消えた街の物語”を、 今年の春先には“雨の七夕の物語”を描きました。 24年前の7月、この世界に生まれ落ちました。 そして 私、若杉栞南は昨年の7月15日に放送された テレビ朝日新人シナリオ大賞スペシャルドラマ 『拝啓、奇妙なお隣さま』で脚本家デビューを致しました。 若杉栞南としての誕生月でしかなかった七月が 脚本家として

        • 彼は今、何をしているだろうか。 私は今まで、何をしてきたのだろうか。 私の目にはまだ、緑の雨は映るだろうか。 単位の取り方と講義のサボり方を知った21歳の夏。 晴れた日。 この渓谷。 変わらず彼は問いかけてくれた。 変わってしまった私に。 晴れ間に見える雨の色は?_と。

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        • 一日一鼓【6月】
          18本
        • 若杉栞南の世界
          4本
        • 一日一鼓【四月の話。】
          4本
        • 一日一鼓【2月】
          30本
        • 一日一鼓【1月】
          17本
        • 一日一鼓【12月】
          32本

        記事

          案の定、作者の名は彼だった。 イシイ ムツ。 懐かしいその名前の並びを見て 鼻の奥で土を打つ雨の匂いがした。 キャプションにはこう書いてあった。 - 長い間この地を見つめる神様すら知らない 僕たちの「今まで」と「これから」がきっとある。 でも、この雨だけは知っている。

          案の定、作者の名は彼だった。 イシイ ムツ。 懐かしいその名前の並びを見て 鼻の奥で土を打つ雨の匂いがした。 キャプションにはこう書いてあった。 - 長い間この地を見つめる神様すら知らない 僕たちの「今まで」と「これから」がきっとある。 でも、この雨だけは知っている。

          一日一鼓【0619~0622】

          \19日〜22日/ 目まぐるしく作品が進んでいく4日間だったので 4日分の560字を時が流れる一鼓に。 4日間の一鼓 しっかりと高校を卒業し、 しっかりと大学に入学し、 しっかりと単位を取って一年目を終えた。 真面目な良い子という肩書きで同期の中に紛れた私は 晴れ間の雨の色を、記憶の奥底に仕舞い込んだ。 いつも通りが365回続いた。 大学2年生もあっという間に終わっていく。 特別なことと言えば、私は大人になった。 「大人」と言われる年になった。 でも何も変わらない。

          何かと理由をつけて渓谷に足を運ばなくなった。 面倒だったわけじゃない。 透明で美しい彼と話すことができていた“濁りのない心”をどこかに置いてきてしまったような気がしたから。 いつからだろうか、どこにだろうか。 大人になるってこういうことなのだろうか。 だったら、嫌だな。

          何かと理由をつけて渓谷に足を運ばなくなった。 面倒だったわけじゃない。 透明で美しい彼と話すことができていた“濁りのない心”をどこかに置いてきてしまったような気がしたから。 いつからだろうか、どこにだろうか。 大人になるってこういうことなのだろうか。 だったら、嫌だな。

          しばらくの間、青々としたあの渓谷に足を運び 足を運んでは緑の雨を眺めた。 面白くないことを無理に笑い 期待の眼差しを笑って受け取って… 気付けば“こうあるべき私”を生きていた。 緑の雨を眺める間だけ、その全てを忘れることができた。 でも “しばらくの間” だけだった。

          しばらくの間、青々としたあの渓谷に足を運び 足を運んでは緑の雨を眺めた。 面白くないことを無理に笑い 期待の眼差しを笑って受け取って… 気付けば“こうあるべき私”を生きていた。 緑の雨を眺める間だけ、その全てを忘れることができた。 でも “しばらくの間” だけだった。

          「NodaEmi LIVE 2024 “time”」 に伺いました。

          本日、野田愛実さんのLIVE 「NodaEmi LIVE 2024 “time”」 に伺いました。 全力の野田さんを全身で浴びました。 野田さんとのご縁は約1年前に遡ります。 脚本家・若杉栞南のスタートを一緒に迎えて頂きました。 その作品は… 若杉栞南デビュー作『拝啓、奇妙なお隣さま』です。 - ▷作品情報 テレビ朝日新人シナリオ大賞 スペシャルドラマ 『拝啓、奇妙なお隣さま』 放送日|2023年7月15日(※一部地域を除く) 主題歌|ロスタイム/野

          「NodaEmi LIVE 2024 “time”」 に伺いました。

          お家の事情で引っ越しました_そう簡単に告げる先生を見て、大人になったら透明なモノは見えなくなるのだろうかと無性に怖くなった。 側から見れば私と彼は何の繋がりもないただの同級生。 でも こうあるべきという仮面をいとも簡単に剥がす彼を、私はどうしても記憶から消すことはできなかった。

          お家の事情で引っ越しました_そう簡単に告げる先生を見て、大人になったら透明なモノは見えなくなるのだろうかと無性に怖くなった。 側から見れば私と彼は何の繋がりもないただの同級生。 でも こうあるべきという仮面をいとも簡単に剥がす彼を、私はどうしても記憶から消すことはできなかった。

          当たり前が奪われるのは映画の中の話だと信じて疑わなかった。 でもそれは突然音もなくやってきて 奪っていった。 いつも通り教室に行き、いつも通り会話を交わすことのない透明で美しい彼を探した。 でも、その日から彼が学校に来ることはなかった。 もちろん、青々とした竹の渓谷にも。

          当たり前が奪われるのは映画の中の話だと信じて疑わなかった。 でもそれは突然音もなくやってきて 奪っていった。 いつも通り教室に行き、いつも通り会話を交わすことのない透明で美しい彼を探した。 でも、その日から彼が学校に来ることはなかった。 もちろん、青々とした竹の渓谷にも。

          私たちは晴れ間の雨の色を問いかけ続けるのだろう。昨日も今日もそうだったように明日も明後日もきっと。 そう思っていた。 教室では交わされることのない清らかな会話を神様の木の麓で交わすのだろう。 そう思っていた。 当たり前なんてない …なんてことないんだと そう思っていた。

          私たちは晴れ間の雨の色を問いかけ続けるのだろう。昨日も今日もそうだったように明日も明後日もきっと。 そう思っていた。 教室では交わされることのない清らかな会話を神様の木の麓で交わすのだろう。 そう思っていた。 当たり前なんてない …なんてことないんだと そう思っていた。

          晴れの日の雨…目にするまでは分からなかった。 雨が続く日々の、雨の休息日のようなある日。 青々とした葉の隙間から差すのは 緑を帯びた幾筋もの儚い光。 美しいそれを見せてくれたのは 透明で美しい彼だった。 以来、 「晴れ間に見える雨の色は__緑色」 それが合言葉になった。

          晴れの日の雨…目にするまでは分からなかった。 雨が続く日々の、雨の休息日のようなある日。 青々とした葉の隙間から差すのは 緑を帯びた幾筋もの儚い光。 美しいそれを見せてくれたのは 透明で美しい彼だった。 以来、 「晴れ間に見える雨の色は__緑色」 それが合言葉になった。

          雨、続くね そうですね 雨、好き? はい 私も _他愛もない話だった。 梅雨が終わったらちょっと寂しいです 確かに、寂しい でも知ってます? ここでは晴れていても雨が見えるんですよ 晴れの日に? 葉っぱの間から差す光と、葉が揺れる音…あれは晴れ間の雨ですね

          雨、続くね そうですね 雨、好き? はい 私も _他愛もない話だった。 梅雨が終わったらちょっと寂しいです 確かに、寂しい でも知ってます? ここでは晴れていても雨が見えるんですよ 晴れの日に? 葉っぱの間から差す光と、葉が揺れる音…あれは晴れ間の雨ですね

          教室の喧騒にも 羅列する英語にも数字にも漢字にも その全てにアレルギーが無さそうで でもその全てに興味も無さそう。 しっかりと開かれたその瞳が捉えるのは確かに私たちの存在する世界で でも私には見えない世界のよう。 そんな世界を生きる彼が教えてくれた。 晴れ間に見える雨の色を。

          教室の喧騒にも 羅列する英語にも数字にも漢字にも その全てにアレルギーが無さそうで でもその全てに興味も無さそう。 しっかりと開かれたその瞳が捉えるのは確かに私たちの存在する世界で でも私には見えない世界のよう。 そんな世界を生きる彼が教えてくれた。 晴れ間に見える雨の色を。

          雨が降り続けるある日のこと。 学校から帰るバスの中で押しつぶされるのが馬鹿馬鹿しくて 傘が雨音を奏でるのを聞きながら歩いていた。 そんな帰路だった。 _この辺りには神様の木があるんです そう話す彼の その声も顔も名前も知っていたはずなのに なんだか初めて会った気分になった。

          雨が降り続けるある日のこと。 学校から帰るバスの中で押しつぶされるのが馬鹿馬鹿しくて 傘が雨音を奏でるのを聞きながら歩いていた。 そんな帰路だった。 _この辺りには神様の木があるんです そう話す彼の その声も顔も名前も知っていたはずなのに なんだか初めて会った気分になった。