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生まれ故郷
私の旅の醍醐味は、その土地の暮らしを見ることだ。
もちろん世界遺産や観光地を巡るのもいいのだけれど、
私は住宅街を歩いているのも同じぐらい楽しい。
思い出す風景といえば、昨年行った江戸川区。
あえて何かの目的を持たなければ、東北から東京に行った人は
立ち寄らないゾーンなのではなかろうか。
これまでほぼ山手線付近で行動範囲がとどまっていた私にとっては、
東京からかなり移動したなと思ってしまった。
駅を出れば少し人は多いけれどあまり高い建物はなく、
静かな街並み。
川が流れていてそこには犬の散歩に来るおばさんや
会社員の移動する姿。
家と家も隙間なく立ち並んで入るものの、
特別大きい家があるわけでもなくそれぞれ自転車が停められていたり、
鉢植えが並んでいたりする。
東京都いうか、都会の特徴だろうか、
狭い土地に3階建ぐらいのペンシルハウスが建っているのを見ると、
面白いなと思う。
隣に同じような家が並んでいると、ここに幼馴染同士が住んでいたりするのかなと
勝手に想像してみたりする。
朝の9時ぐらいになれば、自転車を一生懸命漕ぐママたちにたくさんすれ違う。
子供達を後ろに乗せて、スピードもそこそこに出しながら進む。
東京の人も自転車に乗るんだ、これもきっと偏見。
電車に乗って少し行けばビルが立ち並ぶ人混みの街に出るけど、
それ以外は全然変わらないように見える。
教育は最先端なのかもしれない、会える人数もすごく多いのかもしれない。
それはわからないけれど。
私がここに生まれていたら。
ありもしないことを考えてみたりする。
昨年は、東京に行こうかと結構本気で考えた。
オーディションを受けた。先輩に話を聞いた。
私の今やっていることを東京でもできないだろうか。
お仕事の幅が広がったりしないだろうか、もっと多くの人に会えるんじゃないか。
でもそれは、とても高い壁を乗り越えなければいけないと改めて知る。
そもそも東京にいなければディスアドバンテージになると、いつもキツめに言われる。そんなに、東京にいることが大事か。
大事なんだな、会えるということが。まだ、やっぱり、会えないとダメだ。
私も、地元にいながら、そう思う。
会えるということの価値は、きっと一生なくならない。
東京で生まれていたら、埼玉や千葉で生まれていたら、
いつもみているあのアイドルたちとも同じ舞台に立てる権利があっただろうか。
今のこの地元には権利を勝ち取ることすら難しく思える。
でも、ここで生まれたから、早々に芽をかられずに伸びてこられてた、とも思う。
同じように話す人を目指していた友人は、大学時代に諦めがあったことを察していた。ライバルが多い分、摘まれる芽だって多い。
なにを話したってたらればだ。
でもこれからも私は東京を歩きたいと思う。
ここに生まれた人たちはどう暮らすんだろうか。
何を考えるのだろうか、こちらのことはどう思うのだろうか。
少しだけいいなと思いながら、地元の良さを再認識していく。
やっぱり、ちょっとだけ、そちらに生まれてみたい。