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How do U spell EPiPHANY?

閃き、と言うのは突然にやってくるモノ。だから時としてその閃きを待たなくちゃならないなんて事もある。僕は閃きと良く待ち合わせをするが彼が僕より先、もしくは同じくらいに待ち合わせ場所に着いた事がない。大抵ウンザリするほど待たされる羽目になる。

対して彼女は閃きと仲が良いようで四六時中脳内でフラッシュの様に光る閃きで生きているのかと思う程、思い立ったら止まらない。僕にだって(僕の範囲で彼女自身の為になると思った事は)止められない。

夢中になった心はもはや自分の指図すら受けなくなるとロックシンガーとラッパーが歌っていた。残された人生で今日が1番若い日だとも言っていた。それをそのまま形にしたのが彼女だ。今を一所懸命に握り続けている。鷲掴みにして逃さないように。時々潰れてしまわないかと不安にさえなる。でも彼女は今を辞めない。だから時々何もかもを見失ってフラフラとスリープウォーカーになる。そんな時が僕の出番なのだ。

ハロースリープウォーカー

"ほら起きて!今は此処にあるよ!"そう言って肩を掴んで揺らす。彼女は時としてしかめっ面で接触すら拒否してしまう。そんな時僕は丁寧に言葉を紡ぐ。丁寧に丁寧に言葉と言葉を織り込んで彼女の震える肩にかけてやる。彼女の頭の中にかかるモヤを、その解れをどんなに時間が掛かったって一本ずつ解きほぐす。少しずつ普段の彼女に戻るのを見て僕は心の中でそっと言う。"さぁ、悪い夢はもう覚めたよ。おかえり。"

スターゲイザー

星は誰かを羨んだ事が有るのだろうかといつか消えるオリオンの一つを眺めて考えていた。彼女はボソッと"オリオン、ダサくなるね"と言っていた。その横顔はあまりにも純粋で月明かりよりも透き通って見えた。

彼女は打算で動かない。ピュアすぎるが故に口から出る言葉はどれも荒削りで尖っていて時として誰かに深く刺さって致命傷を与えてしまいそうなほどだ。誰よりも狡猾でドライな雰囲気を纏いつつ、実は誰よりも傷付いて誰よりも人を本当の意味で大切に思える。そんな人だ。

星が流れる事を、月が微笑むのを、夕焼けが染まるのを、雲が形を変えて旅を続けるのを誰よりも純粋に誰よりも敏感に、それでいて誰よりもグロテスクに感じ取っている。

シェルター

僕の脳内でサイレンが鳴り響いた。
大丈夫。慌てなくていい。日常のあれこれに滅多刺しにされて満身創痍の彼女が今夜も部屋に転がるように逃げ帰ってくる。13畳ワンルームは前線のベースキャンプでもあるわけだ。"ヒュゥーーン…"また打ち上がった。新たに舞い込んだ仕事、真面目ゆえの焦り、それに付随した人々との繋がり、距離感。そのどれもが彼女めがけて投下される。

だから僕は絶対的安全領域をこの両の腕で作り出す。この腕の中にいる間彼女はあらゆる攻撃的なモノから守られ、体の奥の奥に閉じ込めた残り僅かな女の子を許してやり、重くて動きにくい武装を解く。大丈夫。大丈夫。そうするうちに彼女は彼女を取り戻していく。

スカイ・ロック・ゲート

かと思えば閉じこもる。大きな岩で扉を作って。彼女が天照大神なら僕が思兼神(オモイカネノカミ)だ。精一杯楽しい事を扉の前に並べて、そこに少し2人の思い出も置く。すると彼女は少し扉を開けるから引っ張り出して無理矢理にでも楽しませる。最終奥義だ。

でも岩の祠の中で悲しみや苦しみを1人で消化する時間だって必要だ。だからそんな時は僕は姿を消して空気と一体化する。しばらくすると彼女はモゾモゾと動き出すのだ。それを待って甘いものといい匂いのお風呂を用意する。そうやって復活の儀式は執り行われる。

ハイアーザンザサン

雲より高く飛んでいつか宇宙についたらスペースデブリの中を飛び石みたく散歩したい。月の裏側で地球からしばらく身を隠したい。太陽フレアの揺らめきで照らされる死に絶えた星の残骸のその一つ一つに彼女と名前を付けてやりたい。

今日も彼女の隣で僕はこの閃きの光が消えない様に慎重に分解して言葉として紡ぎ出す。

僕の服を着た彼女が"もう嫌いー!"
と悪戯っぽく笑った。



今日はここまで!!
またいつか与太話を。
んじゃまた!

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