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【絵本レビュー ゆっくりがいっぱい】
「なんでそんなにゆっくりなんだい?」「なんでそんなになまけてるんだい?」ナマケモノくん考えた。
【並べて楽しい絵本の世界】
鮮やかな色が場面いっぱいに描かれている一本の木に、ナマケモノくんは1日中ぶら下がって過ごしています。
のんびり、おっとり。絵本の最初から、最後まで、ずうーっと同じ木の上にいます。
木の上で、葉っぱを食べて、すやすや眠り、ゆっくりおっとり目覚めます。
ジャングルの色々な動物たちが通りかかっては
「なんで、そんなにゆっくりなんだい?」とたずねるのですが、
答えは返ってこないのです。なぜ?
ナマケモノくん考えた。ながーいあいだかんがえた。
そして わかった
とっても考えたナマケモノくん、
「でも なまけてるんじゃないんだよ」「怠けているんじゃなくて、それがぼくのやり方さ。」「ゆっくり、のんびり、おっとりが好きなのさ。」
ぼくのなかには〈ゆっくり〉がいっぱいなんだ
と、とうとう答えました。
色の魔術師と言われる、エリック・カール氏の絵本の描き方はコラージュと言われる技法です。
薄いペーパーに、筆で大胆にベースとなる色をつけ、さらに次の色を加え、次の色をのせ、赤、青、黄色・・・と筆だけではなく、じゅうたんのきれっぱしを使ったりして線や点などを重ねていきます。そうやって作られたたくさんのペーパーを、下絵に合わせて切り取り、貼り付け、あの鮮やかな世界を作りあげていくのです。
カール氏の絵本はたくさんありますが、私はこの絵本「ゆっくりがいっぱい」の色彩あふれる表現が一番好きです。
ひらいた瞬間にとても幸せな気分にさせてくれます。
あさからばんまで 木の上でさかさまにぶらりんこしている ナマケモノくんは、とっても可愛いし、次々に現れる動物たちの姿も楽しい。
登場する動物たちの名前は、巻末にちゃんと紹介されているので、ちょっと画像検索して本物の姿を、しばしながめてしまいました。
以前にも書きましたが、登場人物たち(?)をこうやってちゃんと紹介してくれるのは、絵本のとってもすてきなところだと思います。
『ナマケモノ』についても調べてみたところ驚くことがいっぱいでした!
猛獣から身を守るために、ぶら下がったまま頭をお腹にうずめて木と一体化して1日のうち20時間くらい寝ていること。
ほんの少ししか食べなくて、1日10gくらいの葉っぱや新芽、それから自分の毛に生えているコケなどを食べているということ。
絵本を見てみたら、主人公の体には緑の線が描かれているではありませんか。ちゃんとコケも表現されていました。
1度の食事を消化するのには、16日間かかるのだそうです!
ゆっくりの王者ですね。
変温動物(外気に合わせて体温を変化させる省エネ動物)であるため、外気温が下がるとさらに動けなくなり、なんとおなかいっぱいなのに餓死してしまうこともあるのだそうです!あ~もう。。。
それに動きすぎても体温が上昇しすぎて死んでしまったり・・・あ~もう×2です。
その動きは全速力で分速2メートル・・・
1週間に1度ほど木からおりて排泄をするそうですが、この動きでは、ものすごく危険ですね。地上頭上の肉食動物に見つかれば逃げられない。(泳ぎは得意らしいですが。。)
なによりも驚いたのは、ナマケモノは戦う、抵抗するとか、逃げるとかの生物の持っている基本能力を持ち合わせていないのだ、ということです。
狙われたら、逃げられないのです。
なので、彼らは捕まったら、身体の力を抜いて抵抗せず、死を受け入れるというのです!!
なぜ、彼らはそのような生き方で生き残れてきたのでしょう。
そもそも争わない。エネルギーを最低限に抑えて生きる。
みつからないように動かない、少量の餌で済むように代謝を最小限にする、動きも体質もそのための理にかなっています。
命がけのトイレは、蛾との共生関係のためで、身体に生えるコケを繁殖させるために必要なことなのだそうです。緑色のコケは食料にもなり、敵から身を守るカモフラージュにもなるということ。
果たして自然界は 強いものが必ずや 生き残れるものなのでしょうか?
人間は最強でしょうか?
人間の世界でも、例えばたくさんの富を持っていたり、強大な国を築いたり、肉体の強いものが生き残っていくのでしょうか?
私たち人間は滅びないと、いえるでしょうか?
私たちは死を受け入れることができるでしょうか、彼らのように。
私たちは分速2メートルで生きることはできません。
だけどナマケモノのように「ゆっくりがいっぱい」の気持ちを、ちょっとだけ思い出して、ざわつく心や、不安や怒りやらをおさめることはできるかもしれない。
欲のために、自然を破壊する人間のこれから生きる道を、
絵本を通じて考え感じてみることになりました。
今日もお読みいただきありがとうございます。
あなたの世界も豊かなものになりますように。
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