【絵本 金曜日の砂糖ちゃん】
小さな絵本の中に、3篇のお話しが入っています
「金曜日の砂糖ちゃん」
「草のオルガン」
「夜と夜のあいだに」
【並べて楽しい絵本の世界】
砂糖ちゃんは、静かな暗闇のなかで、お昼寝しています。
森の中の眠り姫のように。とても深い眠りの中にいるようです。
周りには花が咲き、ハチが女の子を見つめています。
かわいい砂糖ちゃんの姿を、一目見ようと、庭のあちらこちらから、いろんなお客さんが集まってきます。
すやすや 砂糖ちゃんは眠り続けています。
おかあさんに起こされて、砂糖ちゃんは眠りの世界から帰っていきます。
みんなとさよならしますが、かわいい砂糖ちゃんにご執心のカマキリだけは不満そうです。
【草のオルガン】
男の子がどこかから、帰るところ。
物憂げな表情で、歩いています。
今日はさみしいことがあったから、つまらないことがあったから、いつもとは違う道を歩いて帰ると言っています。
ふと 知らない場所が目の前に広がり、そこには音のでないオルガンがありました。弾いてみると、バッタや蝶々が集まってくる。
タンポポをくわえたカラスも。静かな美しい時間が流れます。
黄色いヘルメットのおじさんに、蛇が出るからあぶないぞ!と言われて、男の子はそこを立ち去りますが、「へびにも あいたかった」とつぶやきます。
【夜と夜のあいだに】
こっそりとベッドから降りる女の子
お母さんの持ち物は小さな女の子の憧れ。そっと取り出して身につけて、とりかご の扉を開ける。宝物を入れたクッキーの缶を手にして、お母さんの白くて ひらひらの シュミーズをまとった女の子は、玄関のドアを開けます。そこには、騎士のように立派な真っ黒な犬が何匹か、待っていました。
女の子は何処へ?
この子たちは、これからどこにいくのだろう。
かつて、わたしもたしかにそこにいた、この場所から。
江國香織 帯より
遠い昔、私たちは花の王冠を戴き、ひとりで夢を見て、はじめてひとりで歩み、ひとりでドアを開けた瞬間がありました。
そんな遠い昔の自分を思い出させてくれました。
かつて確かに そこ にいた という感覚がすぅーっと戻ってきて、疲れてしまっていた自分に気づき、心ざわめく自分に気づき、迷っている自分の ”たましい” に、やさしい息を吹きかけてくれるような絵本です。
美しい3人の子ども達の本を手に取って、ながめて、また そっと本棚に戻します。
おとなになった私もまた、歩き出すために。