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世界の(未)公開映画

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東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
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2024年1月の記事一覧

ミン・バハドゥル・バム『黒い雌鶏』ネパール、視界の外側にある戦争

傑作。ミン・バハドゥル・バム長編一作目。ベルリン映画祭予習企画。2001年、ネパール北部の小さな村。この年は、1996年から続く内戦が短い停戦に至った年でもあり、王族殺害事件が起こった混乱の年でもあった。村にはカーストの異なる二組の姉弟がいた。結婚を間近に控えたウジャルとその弟キランは庄屋の子供で、最近母親を亡くしたビジュリとプラカシュは不可触民の子供だった。キランとプラカシュは仲良しなのだが、特にキランの家族はプラカシュと仲良くすることを嫌がっている。そんな中で、プラカシュ

Kazik Radwanski『Cutaway』&『Scaffold』ブレッソンとマッケンジーへの漸近

カジク・ラドワンスキ(Kazik Radwanski)短編二本。『Cutaway』は建設労働者として働き、恋人との間に子供が生まれようとしている男が迎える短い変化の時間を"手"のみで表現していく。壁をドリルで破壊する手、漆喰を捏ねる手、恋人とのSMSに返答する手、お金を引き出す手、恋人の手を握る手、頭を抱える手、窓の露を払う手。それぞれに不安や喪失感といった感情が宿った手の動作が連鎖していく。右の掌に怪我をしてから治るまでの長い時間を感じさせない、短く切られた場面の数々。窒息

アル・ウォン『Twin Peaks』あるトラック運転手の見た宇宙

大傑作。配達ドライバーとして働いていたアル・ウォンは、サンフランシスコのツイン・ピークス周辺のループする道路が持つ瞑想的な特質に魅了された、らしい。伝説的な曹洞宗の僧侶で、アメリカに"禅"を広めた鈴木俊隆の弟子ということもあって、禅哲学の無限のサイクルを象徴する作品になっている。画面に映されるのはトラックの運転席と助手席の間に置かれたカメラからフロントガラス越しに見える景色である。左手前には運転する人物がハンドルを回す腕だけが見えているが、言葉は発さない。画面のちょうど真ん中

ヴィットリオ・デ・セータ『オルゴソロの盗賊』イタリア、過酷な土地に生きる羊飼いの決断

ヴィットリオ・デ・セータ長編一作目。サルディーニャ島オルゴゾロ村の羊飼いは、脆弱な土地を移動するという過酷な生活背景から、彼らの中にある掟に従い、重要なのは家族と地域の繋がりだけらしい。デ・セータはこの3年前に『オルゴーゾロの羊飼い』というカラー短編を撮っており、多くの面で本作品はその延長線上にある。主人公は羊飼いミケーレ。ある日、彼が普段使っている休憩小屋に豚を強奪した盗賊たちが入り込んだ。しかし、ミケーレは彼らを追い出そうとせず(関わりたくないとは思っている)、後を追って

アザゼル・ジェイコブス『The GoodTimesKid』増殖した三人のルドルフォたちのすれ違うアイデンティティ

傑作。アザゼル・ジェイコブス長編二作目。彼女との生活に不満を持つロドルフォ・カノ(ジェイコブズ本人)は軍隊入隊を決意し、何の手違いか同じ町に船で暮らす同姓同名の男ロドルフォ・カノ(ヘラルド・ナランホ)にも召集令状が行ってしまったことで起こる奇妙なアイデンティティの交換。軍事務所でロドルフォ=ジェイコブズを見つけたロドルフォ=ナランホは彼を追って自宅まで辿り着き、彼の恋人ディアスに出会う。チョコケーキ粉砕、冷蔵庫殴り散らし、アップテンポなダンス、そして疾走といった、彼女の長い手

レイモンド・リー『ドラゴン・イン』やたら血の気の多い"龍門の宿"

大傑作。キン・フー『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(以下、原作)のリメイク作品。プロデューサーにツイ・ハークが参加している。いきなり東廠の訓練シーンから始まるのだが、雑兵が既に原作のトップレベルというくらいにインフレしていて笑えてくる。それに比例して主要人物の能力もインフレ気味で、原作は人間の延長線上にあった達人描写だったが、本作品では異能バトルみたいになってた(それはそれで面白い)。冒頭のバトルから、剣が湾曲し、人間ではありえない高さを飛んで、ラスボスが木端微塵にした剣の破片