マガジンのカバー画像

世界の(未)公開映画

153
東欧映画、ロシア映画以外の未公開映画についてまとめています。最近は公開された作品も掲載しています。全ての記事をどこかに帰属させてあげたいという親心です。見逃してください。
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

ニコス・ニコライディス『モーニング・パトロール』海を目指して西へ進めば

終末世界をタルコフスキー的に描いた作品。それって『ストーカー』じゃん、と思った勘のいいガキの皆様、半分くらいは当たりです。廃墟と化したした街を一人旅する女の目的は、西にあるという海に行くこと。人はほぼ死に絶え、残った人々も僅かな資源を求めて殺し合っている中、"モーニング・パトロール"という謎の武装集団が徘徊する街を抜けるのは容易なことではない。セリフも音も極限まで減らされた異様な緊張感漂う世界で、女はここに至る断片的な記憶を掘り返しながら黙々と海を目指して前進し続ける。しかし

ジョディ・マック『The Grand Bizarre』世界中の布地を使ったコズモポリタニズムへの賛美歌

世界中の様々な模様の布が集められて等価に扱われた上で地図や地球儀、文字表やタトゥーなど示唆的なアイテムで溢れるコズモポリタニズムへの賛美歌。映画の多くの部分で基本的に屋外に布を広げて一枚一コマでコマ撮りを行っているんだが、コマとコマの間の時間を適切に保つことで外世界の変化を圧縮して描いているのが面白い。船や車の進行、太陽や影の移動、人や鳥の往来などなど。ロケーションも多種多様だが、場所がどこであるかは特定できない場合がほとんどなので映されている布とロケーションに関係があるかは

メティン・エルクサン『Time to Love』トルコ、愛の平行線

暖炉の上に飾ってあるバカでかい肖像写真に見入るハリル。その家は資産家の別荘であり、彼は内装工事を担当してから写真に惚れてしまい、毎日のように会いに来ていた。そこへ別荘の持ち主で写真の主でもあるメラルがやって来る。愛を信じていなかったが訳を聞いて一瞬で恋に落ちたとするメラルに対して、自分はあくまでも写真に恋したのであってキミじゃないと応えるハリル。ハリルにとって写真は"決して手に入らないもの"でありながら、それに恋してしまったために"幸せ"の象徴でもあり、両者の間を埋めるべく"

パトリック・タム『The Sword』不幸を呼ぶ名剣=妖刀を巡る旅

超絶大傑作!!馬鹿みたいに面白い。不幸をもたらす妖刀を巡る物語だが、悪の組織あり、久しぶりに再会した幼馴染あり、ロマンスあり、復讐ありというてんこ盛り展開を奇跡的なバランスで成立させている凄まじい映画。冒頭で足のない情報屋の爺さんが大量の鳩に囲まれて書斎にいるシーンから既に強烈。主人公は隠遁した凄腕剣士を探す若い剣士で、その旅の途中で悪者から追われる少女を助けたり、いつの間にか結婚していた幼馴染に出会ったり、彼女とのロマンスが再燃しかけたり、その夫が明らかに悪そうな輩だったり