三年千篇のツイッター小説 捌の100篇

毎日1篇、1ツイート分の長さの小説を投稿しはじめてから、もう2年が経過した。

800篇に到達したので、701篇〜800篇をここにまとめておこう。

701

「はい?ファンタジー?いえいえ、何見てたのかは知りませんけど、私が描いたのはアイドルにガチ恋するオタクの話ですよ?」
「どこがオタクよ!?完全に不定形の人外だったでしょ!」
「美化して描いたならともかく、醜いものをより醜く描いて文句つけられる筋合いも無いんですがね」
#ツイッター小説

702

「あ、そうだ。ししゃも食べる?」
「うん」
返事をしてから少し不思議になって兄に訊ねる。
「お母さん、よくししゃも出すよね。なんでだろ?」
その問いに兄は嫌そうな顔をして答えた。
「知らんでいい。……憑いて来られすぎなんだよ、お前は。どんだけ死人を接待させるつもりだ」
#ツイッター小説

703

「『玉ねぎ丸ごと1個をレンジ加熱で柔らかくなるまで加熱した料理の名称に関する検討』を行いたいと思います」
「……どうした?そんなもん——」
「チン——じゃあまりにもアレだろう!」
そう言って彼は真っ赤になってホワイトボードを叩いて、私はため息を吐いた。
#ツイッター小説

704

「なんで……なんでっ……!『泣いてお別れ』か『笑顔でお別れ』しかないなら、笑っている顔を覚えていて欲しかったから、笑ってお別れしようとしてたのにっ……!」
詰るように言う彼女を強く抱きしめて、僕は言った。
「泣いていいよ。ずっと一緒にいるから」
#ツイッター小説

705

世界で一番無念な瞬間があるとするならば、それは「自分宛ての、送られなかった手紙」を見た時なのかもしれないと、その手紙の山を見て思った。書かずにはいられなかった、けれど送ることはできなかった思いの山がそこにはあった。私の行動で、それを阻む堰は壊せたかもしれないのに。
#ツイッター小説

706

「僕は愛の力が困難を乗り越える瞬間が好きでね。さまざまな障害を、世界を敵に回してでも愛の力で乗り越える物語を書きたいといつも思っているんだ」
作家の言葉に記者は大きく頷いて言った。
「なるほど!それであなたの作品は不倫モノばかりなんですね!」
「……………そうだよ」
#ツイッター小説

707

「怖い話をしよう!」
「……定番っちゃあ定番だがよ」
「君、ほんとに怖い話が好きだよね」
「好きというか、思い出深いんだよね。初恋の人が『怖がりの怪談好き』で、その怖がってる様子が可愛くて」
「それ、私のこと……じゃないね?誰?」
「お前ほんとに怖いもの知らずだな!」
#ツイッター小説

708

「どうかしたの——」
布団に突っ伏して泣く妹にそう訊きかけて、あっと小さく言葉を切る。
母は猫のように気まぐれな人で、深夜や早朝にふらっと外出することがあった。そんな日は、布団に母がいた穴が残っていた。交通事故で亡くなったその日から、妹がいま躓いて潰すまで残っていた。
#ツイッター小説

709

地球史上最大にして最も美しい流れ星を、しかし見た人間は1人もいなかった。
7.34×10^22kgという巨大な質量をもつその岩石天体は、衛星軌道上を周回していた時には『月』と呼ばれていた。
太陽からの光で地球を照らし続けたその星が、最後に自ら光るのを見た人間は1人もいなかった。
#ツイッター小説

710

「貴方達は来ないの?」
「…地球の地熱は、“この太陽”に辿り着くまでに使い切ってしまったんだ。でも、それで良かったんだと思う。僕らはきっと“この日”の為にここまで来たんだ」
そう言って、生まれた星系を離れて孤独な宇宙の旅に出る星を見送る。
「さらば!星羅征く蒼き舟よ!」
#ツイッター小説

711

「……教えた俺が悪かった」
「なんで謝るの?私、他意なんて全然ないよ?」
「他意がない人間は自分で他意がないとは言わないだろう!」
悪戯っぽく舌を出す彼女にため息をついて、俺は受け取ったたまごアイスの先端をハサミで切った。
「あ、それでも食べるんだ」
「好物だからな」
#ツイッター小説

712

「妹のあなたが、私に勝てるはずがないでしょう!」
一喝した彼女は、人竜一体の雷霆と化して一直線にその妹を襲う。
キィン
鋭く貫くような音。まさか、ここはまだ射程の3倍——
「ダイナモ。速度を犠牲に射程と威力を伸ばす、お姉ちゃんを追いかけていた私なら絶対使わなかった魔法」
#ツイッター小説

713

最終的に、地球人は宇宙の平和を守る宇宙人の手によって滅ぼされることになった。様々な点が危険視されていたのだが、決定打は、地球人が初めて到達したハビタブルゾーンにある別の惑星の原初のスープを飲み干してしまい、その星で将来生まれる命を根こそぎにしてしまった事だった。
#ツイッター小説

714

内見した時は四畳半の部屋だと思っていたのだけれど、中央の半畳だと思っていたものは、1/3の大きさの四畳半だった。その中央もまた1/3の大きさの四畳半で、その中央も……ぞっとした私が部屋を出ると、部屋の外側には3倍の大きさの畳が敷かれていた。その外側は——
#ツイッター小説

715

「忍び装束のまま街を歩くな!忍べ!」
路地裏で俺がそう詰ると、そのくノ一は頭を掻きながら言った。
「私、変装が下手で、どんな格好でもコスプレって思われちゃうんですよね」
「開き直りすぎだ!」
「……だから、この格好の私が本物の忍者だって分かるの、本物だけなんですよね」
#ツイッター小説

716

時折、夜中に目が覚めて眠れなくなる日があった。そんな時は、2階の子供部屋からリビングに降りると、いつも母さんがいて砂糖をたっぷり入れたホットミルクを作ってくれた。牛乳は苦手なのにそれは好きだった。なんで母さんがいつもその時間まで起きているかなんて想像もしなかった。
#ツイッター小説

717

「もし安全に行けるとしたら、宇宙と深海どっちに行きたい?」
「深海」
「……深海って即答する人初めて見た」
「そっちが質問してきておいてその反応?」
「で?どうして深海に行きたいの?
「……深海にも宇宙にも会いたい人がいるけど、宇宙じゃ遠すぎるだろうから」
#ツイッター小説

718

「はぁ……どうしてこんなに好きな人はたくさんできるのに、恋が実らないんだろう」
「きっと——」
突っ伏す幼馴染を見て溢れかけた言葉を飲み込む。
「きっと、何?」
「なんでもない」
見咎めた君にシラを切る。

『君の中で一番美しい“誰かを想う横顔”を、誰も知らないのだ』と
#ツイッター小説

719

『大好きです、さようなら』
私は本を閉じて、深いため息を吐いた。大好きな作家の書き下ろしの新作に書かれていたのは、つまりはそういうことだった。それは、“ジャンル”に対する愛と別れの言葉だった。私はその本に置き去りにされたヒロインに自分を重ね、勿忘草の香りを想起した。
#ツイッター小説

720

流れ星が欲しくて、落ちた先まで駆けて行ったことがある。小さなクレーターの中央にあったそれは、少し重い以外は普通の石と変わらないように見えた。
なら『自分で流れ星を作ればいい』と宇宙飛行士になったのだけれど、周回軌道から地球に物を投げ込むのは人間の肩では難しそうだ。
#ツイッター小説

721

小学生の頃は、学区内が世界の全てだと思っていた。だから中学生になってびっくりした。転校した君が、こんなに近くに居ただなんて。これからも大きくなって、どれだけ離れても君の隣に行けるようなるのだと思った。
…それなのに、高校生になった今、隣の席の君が何故こんなに遠い。
#ツイッター小説

722

移民船を名乗ってみても、向こうから見れば侵略者以外の何者でもないわけで。長い遠征で疲弊した我々は行く先々の星で先住民たちに門前払いを食らった挙句、最後にたどり着いたのは科学技術が発達した先住民が既に脱出していなくなった星……つまりはまぁ、猿が住んでいた惑星だった。
#ツイッター小説

723

御伽噺の世界に転生したけれど、水面に映る自分の顔は蛙だった。
「これは!」
心臓が高鳴る。その水辺に、1人の女性が水浴びに来た。一目見た瞬間に心を奪われ、そして自分の役割を理解した。
彼女の目の前に飛び出して告げる。
「お望みの御子が1年経たずにお生まれになるでしょう」
#ツイッター小説

724

父からもらったプリズムは私の宝物だった。太陽の光を入れると7色に分かれて、まるでポケットに虹を入れているようだった。
その日もプリズムを眺めて、息を呑んだ。嫌な汗をかきながら辺りを見渡す。まさか、私以外誰も気づいていないのか?太陽がいつのまにかLEDになったことに。
#ツイッター小説

725

23世紀初頭に【宇宙文明唯一定理】という法則が提唱された。それは
『宇宙の膨張を加速させるダークエネルギーの正体は、知性体文明による観測力であり、宇宙は常に星間文明同士が互いを観測できない速度まで膨張を加速させる』
という物だったけれど、それが事実でも証明は不可能だ。
#ツイッター小説

726

『きゅうりにはちみつをかけるとメロンの味になる』というのはよく知られている話だけれど、ではメロンにはちみつをかけたら何の味になるのだろう?
試してみた。メロンの味になった。試しにメロンにはちみつをかけないで食べてみた。きゅうりの味がした。
じゃあメロンの味って何だ?
#ツイッター小説

727

「新しい職場は以前の職場よりかなりキツいけど、夜にすぐ寝付けるようになったのはいいところだよ。前はベッドに入ってからどうしようもないことをぐるぐる考える時間が長かったから」
そう語る彼に、私は少し嘆息しながら言う。
「アンドロイドでも鬱とか入眠障害になるんだな」
#ツイッター小説

728

オンラインチャットで大規模に参加者を募ってチューリングテストが行われた。
参加者を質問役と回答役に分け実施したが、主催者は肝心のAIを用意しなかった。“チューリングテストで人は何を訊くか”についての調査だったのだけれど、回答役の1人が横着して回答をAIに任せていたらしい。
#ツイッター小説

729

今際の際に
「言葉もかけられなくていい。ただ好きな人の最期の時まで一緒にいたい」
と願ったら、猫に生まれ変わっていた。けれど猫の命は短くて、また貴方に看取られて、目が覚めると私はまた猫になっていた。
繰り返して「こんなのもう嫌だ」と思っていたのに、貴方の最後の日は——
#ツイッター小説

730

「ねえ、なんで私なんかの恋人になってくれたの?」
「それはね、私は君の恋人になるために生まれたからだよ」
「嘘だぁ」
「もちろん、嘘だよ。でも、そういう『嘘を吐いている』ってことは『それが本当に見えることだけを“選ぶ”』ってことだから。本当にそうであるより本当だよ」
#ツイッター小説

731

「なぁ旦那。随分勝ってるじゃないか」
「……誰だ、お前は」
「いや、こっちは負けが込んでて、種銭はこれしか無い。どうだろう、こいつで勝てるか俺と賭けをしてみないかい?」
「ほう……いや、止そう」
「何で?」
「賭けに勝つのは胴元だけ。で、お前は胴元ぶろうというわけだ」
#ツイッター小説

732

「夫婦は価値観が一致してる方がいいって思われがちだけど、存外価値観が違うことにも利点はあるね」
そう言いつつ、腕に抱きついた妻の頭を撫でる。  
「私は理解できない」
いい終わるより先に窓が光って轟音が響き、妻は身体を震わせる。俺は言った。
「あんなに綺麗なのに。雷」
#ツイッター小説

733

「ねえ、この手紙は分かってて書いたの?」
その言葉に、僕は首を横に振って答える。
「分からないよ。分かってしまった今となっては。酷くあからさまだったくらいなのに、分からなかったのか、分かりたくなかったのか、分かっていて信じたくなかったのか。この手紙が届かないなんて」
#ツイッター小説

734

ぶどうの応用で、あらゆるものを『種無し』にする薬が開発された。種無しりんご、種無し桃、種無し銀杏、種無しチェリー……あらゆるものの種無し版が作られ、それらは想像以上の成果をあげた。だが、一番効果のあった『種無し』は……これは言わない方が間違いなくいいだろう。
#ツイッター小説

735

それを拾ったのは、花火大会が終わった夜の河原だった。懐中電灯に照らされたそれは、焼け焦げた紙屑のように見えた。いや、そのものなのだろう。それは、『花火の欠片』なのだと私には分かった。私はそれを持って帰って宝物にした。熱く輝いて散った後にも確かに残るものがあると。
#ツイッター小説

736

「かささぎさん。少しいいかい?」
「どうしましたか?彦星さん」
「今日は七夕だよね。せっかく晴れたのだけれど……織姫はまだかい?」
「え?織姫さんなら先ほど……ほら、向こうで私の仲間の背中に」
「ああ、確かに。……いや、マズい!!あれはかささぎじゃなくて白鳥だ!!」
#ツイッター小説

737

「奇数のゾロ目の日ってさ、1月1日は元日、3月3日は雛祭り、こどもの日、七夕、ポッキーの日ってあるけど、9月9日だけ何もなくない?」
「一応、菊の節句・重陽って栗ご飯を食べたり菊酒を飲んだりする行事があるんだけど、マイナーだよね。……待ってポッキーの日そこに並ぶ!?」
#ツイッター小説

738

「……眠れない。最近なぜか目がさえてしまって。4時には目が覚めてしまうんだ」
「それは大変。ちなみに何時に寝るの?」
「午後7時」
「原因それでしょ!?」
#ツイッター小説

739

「フードコート?私が知っているものとはずいぶん違いますが」
「ここは【食罪法廷】です。ここで【裁かれ】た食罪を国民は食べるのです」
『判決!豚、牧草3000コールの命を奪った咎で有罪!』
「……これだと、人間が一番罪深くなりませんか?」
「いえ?無辜の命は奪いませんから」
#ツイッター小説

740

「頭が回らない……」
私は首を捻りながらつぶやく。
「どうかした?」
同居人の問いかけに私は答えた。
「疲れたせいか、頭が200°くらいしか回らないの。普段は360°は回ってると思うんだけど」
その言葉を聞いた同居人は真っ青になって叫んだ。
「今すぐ寝ろ!頭が働いてない!」
#ツイッター小説

741

「可愛くなりたいんです!」
「えっと……なんで?」
「だって……貴方も可愛い女の子の方が好きでしょう?」
「なら……何か可愛いと思う物を真似してみるのはどう?」
すると彼女は僕をじっと見つめてから言った。
「可愛いと思う人はいますけど、真似するのはちょっと」
「待って」
#ツイッター小説

742

「その……羽が偽物だって、いつから気づいてたの?」
こちらの様子を伺うように上目遣いになりながら彼女が言う。
「まあ、最初からかな」
「……がっかりした?」
その言葉に、俺は頭を横に振って答えた。
「そんなことはないよ。羽が無いから、隣を歩いてくれるんでしょ?」
#ツイッター小説

743

「……」
俺は黙ったまま通販サイトの『カートに入れる』ボタンを押した。
「あれ?セールは昨日までじゃなかった?その商品、定価になっちゃってるよ?」
スマホを肩越しに覗きこんで恋人がいう。
「だからだよ。安売りじゃなくなってもまだ欲しかったから、本当に欲しいんだなって」
#ツイッター小説

744

手紙はいい。だって、相手の反応を見なくていいんだから。だから、ほんとうに思っていることをそのまま伝えることができる。
……そんなことを思いながら書いたのだろう。タイムカプセルからでてきたその手紙を読んで、私は書いた当時の私を恨んだ。なんて身勝手な。
#ツイッター小説

745

「ふふっ」
文庫本を読みながら思わず笑ってしまう。
「何読んでるんですか?」
不思議そうに訊ねる後輩に俺は答えた。
「ハーレムもののラノベ」
「……え?」
目を丸くする後輩に、本の中を見せる。
「これは……」
「作者はよほど恥ずかしかったんだろうね。独自言語で書かれてる」
#ツイッター小説

746

「私ね、『負けヒロイン』って好きなんだ〜。自分の大切な人が幸せになれるように背中を押す女の子。かっこいいでしょ?」
そう言って彼女は伸びをする。
「でも——」
振り返った彼女の目には
「自分がなりたいとは思ってなかったッ……!」
大粒の涙が溢れていた。
#ツイッター小説

747

「流しそうめんって、なんでそうめんしか流さないんだろう?」
ということで、その年の流しそうめん大会はそうめんとそばを流したが、救急車が呼ばれて中止になった。参加者の1人がそばアレルギーだった。彼女は流しそうめんだからと安心していた。

翌年はそうめんとうどんが流れた。
#ツイッター小説

748

電源の落ちた小惑星級のサーバーを見つけた。このレベルのサーバーの用途というと、電脳化した知性体たちの収容だろう。再起動することも技術的には可能だが、放射線と宇宙塵によって修復不可能な損傷があちこちに生じていた。何も分からず眠りについたままの方が幸せかもしれない。
#ツイッター小説

749

気候変動による酷暑から逃れて、僕らの先祖は地底に潜った。
元は気候学者の予報であった
「1万の夜の後、青空は再び我らを受け入れん」
という言葉を“宗教的予言”として信仰して3千年、約束の日に僕らを受け入れるはずだった地上で、先祖が海底に潜った奴らとばったり鉢合わせした。
#ツイッター小説

750

とても仲が良かったのに、お別れも言わずに居なくなってしまった幼馴染がいて、
「あの子は彼方へ行ってしまった」
と親に言われたのをずっと信じていたのだけれど、10年ぶりに帰ってきた彼女曰く『彼方』ではなく『カナダ』に居たらしい。
……彼方の方がロマンチックだったと思う。
#ツイッター小説

751

「庶民が私の前を飛ばないでくださる!!」
帰投した龍舎で彼女は号哭めいて叫ぶ。
「私は貴族として育ち、貴族として最高の教育を受けてきたんですのよ!——貴方がた庶民を守るために!それなのに……それなのに貴方が目の前で傷つくなら、私はいったいどうすればいいんですの!」
#ツイッター小説

752

夏の匂いを閉じ込めた瓶を持っていたのだけれど、ある時うっかりその瓶を落としてしまって、入ったひびから夏の匂いがどこかへ逃げていってしまい、それ以来私の前には夏の匂いは現れていない。この間、街で歩いているのを見かけたような気がしているのだが。
#ツイッター小説

753

「それにしても、この惑星って出来過ぎなくらいよくできてるよね。海水に浮かぶ植物でできた島が、海水の対流で1年周期で極と赤道を往復して四季を作るなんて」
「むしろそっちの惑星の、動かない大陸でどうして季節ができるの?」
「うちは地軸が傾いてて」
「地軸が!?なんで!?」
#ツイッター小説

754

「でも、私はいろんな小説を書いてきましたよ?スランプの作曲家が“話せないけど歌える”少女と出会う話、少女漫画風のパティスリーでの三角関係、夏に帰省した実家で“お姉さん”に出会う話——」
「恋愛ものばかり書いてるんですね?」
「……私は今ピグマリオン王の気分ですよ」
#ツイッター小説

755

その城には、魔法使いが献上した魔法の鏡があった。といっても、特別なものが映るわけではない。単に『絶対に割れない鏡』だった。王子がいたずらに石を投げつけてみても、その鏡は傷ひとつつかなかった。砲撃の雨で城が崩れ落ちた今も、その鏡はかつて壁があった場所に残っている。
#ツイッター小説

756

夢見るような眼差しの女性を、友人3人が窘めている。
「さすがに結婚は早くない?まだ相手のこともよく知らないでしょ?」
「じゃあ、相手の何を知ったらよく知ったことになるの?」

「ファッション」
「作品」
「出身地と年齢?」

「……なんなの?そのチョイスは……」
#ツイッター小説

757

「あなたがみんなを分け隔てなく助ける人だってことは充分承知してるけど、流石にあいつは助けなくて良かったんじゃないの?」
そう言われたスーパーヒーローは困ったように眉を下げて笑った。
「いや、彼こそ助けないと」
「どうして?」
「それは……私も昔は彼だったからね」
#ツイッター小説

758

翼だった。人類の巣立ちに必要だったものは。宇宙服から伸びたしなやかで強靭な太陽光パネル、いや、恒星光パネルは隣の恒星系からの光でも十分なエネルギーを作り出し、人間が宇宙空間で生存することを可能にした。地球から、太陽から離れられなかった人類は遂に自由になった。
#ツイッター小説

759

オペロボットが普及し、それは起こった。医療ミスによる患者の死亡事故。
メーカーが言うには
「医師の指示通りに動いただけで、弊社のロボットに瑕疵はない」
しかし問題は、操作していた『医師』もアンドロイドであった点だ。議論の紛糾の後、そのアンドロイドは廃棄処分になった。
#ツイッター小説

760

身体を縛り上げる鎖が軋みを上げる。これは自分で巻きつけたものだった。この鎖で大好きな人を縛り付けて「いかないで!」と叫びそうになる自分を止めるために。肉に鎖が食い込む。悲鳴をあげているのが肉か、鎖か、もう自分でも分からなくなっていた。
#ツイッター小説

761

「もう行くの?」
寝静まったと思っていた子どもに呼び止められて、私は振り返る。
「ああ。紙芝居は置いていくよ」
それはここに居る間の路銀を稼ぐために即興で作ったものだった。
「なんでもっと居られないの?」
「……追いつかれちゃうからね」
「何に?」
「……編集と〆切に」
#ツイッター小説

762

「ねえ」
「何?」
「また会うためには、次は何になったらいいと思う?ほんとは猫になるつもりだったけど、猫じゃ別の街に生まれたら会いに来られないでしょ?」
「そうだね——じゃあ、歌になってよ。世界中のみんなが歌うような歌に。そうすればきっと分かるから」
#ツイッター小説

763

どうも睡眠時間というものが無駄に思えて、寝ている間に運動し続けられる装置を作ったら、翌朝は筋肉痛で起き上がれなくなった。それならば体を動かさずに出来ることにしようと、寝ている間にゲームをプレイできる装置を作ったら、翌朝には1本クリアできていたが、記憶が全く無い。
#ツイッター小説

764

ハロウィンの夜。
「離せよっ!」
叫ぶほどに押さえつける力は強くなる。嗚呼、あのひとを守るって決めたのに、どうして僕は子どもで、どうしてこうも無力なんだ。不審そうに僕を見ていた彼女が踵を返す。だめだ、そいつの手を取っちゃだめだ。そいつは、もう生きていないんだ。
#ツイッター小説

765

30分ほどエスカレーターに乗っているが、終点にたどり着かない。後ろを振り返ると、既に最初に乗った場所は見えなくなっていた。思わず元来た方へと駆け降りたくなるが、上り続けるエレベーターを駆け降りるのは悪手だろう。身体を手で押さえつけながら、私はエレベーターに乗り続ける
#ツイッター小説

766

「昔は風邪をひくのが少し楽しみだったんだ。風邪の時に食べるマシュマロが好きでね」
「風邪でマシュマロ?」
「ああ、店で売っているのとは全然味が違うんだ。マシュマロは、もともとマーシュマロウってハーブの根から作られた咳の薬でね」
「そうなの!?」
「嘘だって言ったら?」
#ツイッター小説

767

その年は小麦が大不作で、私は食べられるものがないかとあちこちを彷徨っていた。やがて、開けた場所に枯れた向日葵が俯いて群生している場所に着いた。
「花じゃお腹は——」
と、閃いた私は、向日葵の種を貪ってその年を凌いだ。なぜそこに向日葵が咲いていたのかを、私は知らない。
#ツイッター小説

768

「ああ、好きだよ」
私の問いかけに振り返りながら答えた彼に私は食ってかかる。
「それならなんで本人に伝えないの!」
「困らせたくないんだ、彼女を」
「そんなの——!」
言い募る私を手で制して彼は続ける。
「この怖さも、きっと『好き』という気持ちそのものなんだよ」
#ツイッター小説

769

「うおおぉ!!」
崖から飛び降りた少年は、空中で少女に追いつき抱きしめた。
「もう離さないぞ!」
「で、ここからどうするの?」
「え?」
固まる少年をよそに、少女は背中の翼を広げてゆっくり着地した。
「……俺、邪魔だった?」
「……ううん。1人じゃ飛ぶ勇気はなかったから」
#ツイッター小説

770

鏡の国のアリスは最後にひとつ謎を残す。
『これはいったい誰の夢?』
アリス?それとも赤の王?
……いや、ほんとうは、どちらも違うのだ。
これは懐かしい舟遊びの夢。僕がアリスに物語を語って聞かせた追憶。
#ツイッター小説

771

「“男女に友情が成立するか”?友情は知らないけど、男女間の関係が恋愛だけじゃないのは確かだよ。私にも世界で一番大切な女性がいるけど、絶対恋愛感情ではないし」
「ちょっと待ちなさい。世界で一番大切な女性って誰のこと?」
身を乗り出す君に、俺はこともなげに答える。
「姉」
#ツイッター小説

772

「あ、先輩。ちょっと屈んでみてもらえますか?」
今日こそ一矢報いてやるという意気を隠して言うと、先輩は少し怪訝そうに膝を曲げた。私は先輩の頭に触れて言う。
「ただ頭を撫でたかっただけです」
さて、先輩は——
驚くほど赤面していた。
初めて見る表情に心臓が跳び上がった。
#ツイッター小説

773

果てなき軍拡競争の末、人類は地上で核が1発でも誘爆すれば全滅を免れない状態になっていた。
そこで、参謀は一計を案じた。
「保有する核兵器をありったけ火星表面にぶつけて、より大きな爆発を作れた方を勝者とする」
両国はそれに同意した。
これが、地球-火星戦争の発端である。
#ツイッター小説

774

「そんな……」
吸盤が付いた両手を見ながら愕然とする王子の、隣の葉っぱに座った蛙が声をかけた。
「見てたよ。あんたも蛙にされたんだな。……でも、あんたはまだいいじゃないか。キスで呪いが解ければ王子なんだから。俺なんか、蛙のままの方が良かったって言われるのがオチだよ」
#ツイッター小説

775

コンタクトレンズ型のディスプレイのテストモニターとしてマーケティング調査に参加したのだけれど、日中のまばたきしている間の視界を広告枠としてスポンサーに売る機能は無くした方がいいことはアンケートに書くつもりだ。試して分かったが、人には何も見えない時間が必要なのだ。
#ツイッター小説

776

「まずい……」
皿にフォークを突き立てながら私はうなだれた。
「あ、そっちはハズレの日だった?」
「理屈としては、毎日美味いものを食べてると耐性が付くからってのは分かるけど、マズメシの日はやっぱり納得いかねえと思うよ。コックロボは美味い料理作れるんだから」
#ツイッター小説

777

弟子入りをお願いしに行った魔法使いは困ったように言った。
「魔法が使えるようになるのは、あまり難しくは無いんだよ。けど、魔法を使えるままでい続けられる人はそう多くないんだ」
「どうして?」
「魔法は何でもできるから、その状態で“やりたい事”を持ち続けるのは難しいんだ」
#ツイッター小説

778

おばあちゃんが言ってた。魔力がある人が長く触れていたものには、心の欠片が残ることがあるって。
「お姉ちゃん……」
主が独り立ちして空になったベッドで、置き去りになったテディベアを抱きしめたら、微かに抱きしめ返してくれた気がした。でもその後お尻を撫でたのは何のつもり?
#ツイッター小説

779

「もう、先輩。学校も始まるというのに夏風邪なんて引いちゃダメじゃないですか。昼食を作ったので食べてください」
「ありがとう……そうめん?お粥じゃなくて?」
「消化が良くて、食欲が無くても食べられるようにです」
俺は苦笑いしながらすする。
(こりゃ、お中元を余らせたな)
#ツイッター小説

780

「変なの?料理なんて、1世紀は前に廃れただろ?3Dクッカーがあれば思い通りのものが食べられるんだから。なのに、わざわざ自分の手でそんな古文書みたいなレシピを使って」
その言葉に私は苦笑して答えた。
「それだと思い通りのものは作れても、まだ知らないものは作れないからね」
#ツイッター小説

781

「前から不思議だったんだけど、なんで君ってそんなに優しいの?もっと怒ってもいいんだよ?」
「うーん。多分、家庭環境のせいかな」
その答えに彼女は感心したように言う。
「へえ。いい家族だったんだ」
「ううん、そうじゃなくて。優しくならないと殺さずにはいられなかったから」
#ツイッター小説

782

今世紀に入って、スカートが履かれることはなくなった。『エアウォーク』という、電磁場と重力場の相互作用を利用して、『空を飛ぶ』のではなく、『空を歩く』ことができる技術の普及によるものだった。とても便利ではあるけれど、真下からだとどうしても見えてしまうので。
#ツイッター小説

783

「あ〜、空から女の子が降って来ないかな〜。黒髪の美少女」
他愛ないひとりごとのつもりだったが、底意地の悪い神様に聞かれていたらしい。
どしゃり、と音がして、目の前に真っ赤な景色が広がった。確かに黒髪だが、美少女だったかどうかは原形をとどめていなかったから分からない。
#ツイッター小説

784

付喪神というのは、見捨てられたものにこそ宿って
「本当にあったんだ…」
デンマークの骨董品屋で私を見つけた彼の目は輝いていて
「放っておいてください。私は無能な偽物です」
私がそう言うと彼は微笑んで言った。
「そんなこと無いよ。君は本物の『絡繰仕掛けの小夜啼鳥』だよ」
#ツイッター小説

785

「ただいま」
少し帰りが遅くなった日、改札の前で妻が待っていた。暖色の灯りが灯る住宅街を並んで帰っていると、妻が言った。
「昔、夜景が綺麗なレストランに連れて行ってくれたことがあったけど、こっちの方が好きだな」
「どうして?」
「それは……帰ってきた人の灯りだから」
#ツイッター小説

786

「生まれ変わったら、君の猫になりたいな。そしたらふわふわの毛並みをいっぱい撫でさせてあげるからね」
「そんなこと言って、撫でられたいだけじゃない?」
——そんなやりとりを神様に聞かれていたのか、果たして猫に生まれ変われたのだけれど
(品種がスフィンクスなんて話が違う!)
#ツイッター小説

787

「この街、いつか来たことがあるような……」
「デジャヴ、というやつですか?」
隣を歩く彼女が不思議そうに言った。俺は額を押さえて考え込む。何か大切なことだったような。そうだ——
「昔書いた小説に出てくる街にそっくりなんだ!ついて来て!この先にケーキ屋があるはず——」
#ツイッター小説

788

「先輩。夏って不思議だと思いませんか?」
「……何?」
「夏だけが、終わる季節なんです。他の季節の終わりは、次の季節の始まりとして表現されるのに」
「……なんとなくエモそうなことを言っても溜まってる宿題は減らないからな?」
そう言って俺は宿題を小突く。
「ぐぇ〜……」
#ツイッター小説

789

人類が滅んだ後、他の生物種が地球上を支配するということは起こらなかった。人類のように地球の支配者となれるだけの進化を遂げた生物種は他にいなかった、というわけではない。他の生物種は、地球を支配できるの能力があっても、それを実際にしてしまうほど愚かではなかったのだ。
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790

「流れ着いたのがこの島で良かったな。ここはまあ、楽園みたいなものさ」
この島にただ1人住む男に言われて、私は周囲を見渡した。島には、野生化したうさぎがそこかしこを飛び跳ねていた。天敵の不在で大繁殖したのだという。
「とっても可愛いですね!」
「ああ、食うには困らない」
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791

「はぁ……」
子どもを病院に送り出した私は、ため息をついてへたり込んだ。そんな私の肩を抱いて夫が言う。
「子どもは怪我をして、痛みと共に成長するものさ。ちゃんと治るんだからいいじゃないか」
「いくら医療が進歩したからって、夏休みのたび手脚を一本落としてくるなんて!」
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792

頬杖をつきながら無数に実ったりんごを眺めている。丹精込めて育ててきたことで、りんごの木は立派に育ち、多くの実を結んだ。だが、少し立派に育ちすぎたみたいだ。高くなりすぎたりんごの木、梯子を使ってもりんごに手が届かない。頬杖をつきながら無数に実ったりんごを眺めている。
#ツイッター小説

793

「ごめんな。せっかくの誕生日なのに、お前が欲しがってたものは買えなかった」
「え……でも、これ鼈甲の櫛でしょ!?」
「鼈甲は鼈甲でもべっこう飴さ。気分だけでもと思って」
「……ふふ、ありがとう。大事に食べるね」
時は流れて、今日嫁入りする妹の髪にはあの櫛が光っていた。
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794

「そんなガラクタ集めて、何をやってるの?」
全てが瓦礫に帰った世界でうずくまる男に私は言った。
「これはね、ゲルマニウムラジオっていうんだ」
「……そんなもの作って何になるっていうの!」
「待った!ほら、聞こえる!絶対にいると思ったんだ!AMラジオを流してくれる人が!」
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795

「浮気ってどこからが浮気なんだと思う?」
「え?彼女もいないのに?」
「違うわ!昔、友達の彼女が二重人格でさ。その両方に告白されたらしいんだけど、それって浮気なのかって」
「そういう導入って自分の話をする時に使うんだよ?」
「俺に彼女がいない話はどうでもいいんだよ!」
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796

結局、自動車は電気自動車ではなくハイブリッド車が主流になった。けれど、電気とガソリンのハイブリッドではなく、電気とぜんまいのハイブリッドだ。CNTを用いた強靭なぜんまいは、完全に巻けば1度に500kmまで走ることができるし、充電切れになった時に手動で巻くことができるのだ。
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「大丈夫?」
頭を抱える僕の部屋に入ってきた君が訊ねた。
「少し驚いてるんだ。僕以外に翼がある人がいるとも、この翼で空が飛べるとも考えたことが無かったから」
「……着いて行かなくていいの?」
「……どうしようかな。ここで君の枕を作る生活も、僕にとっては幸せなんだよ」
#ツイッター小説

798

「スマートフォンの、これまでにない新しい使い方を考えたいと思います」
「はい!ボールの代わりに使って野球をするといいと思います!」
「採用」
「2人ともちょっと待って!なんでそんな物騒な話してるの!」
「彼氏のスマホに浮気相手とのLINEが見つかったんだって」
「あ〜……」
#ツイッター小説

799

「ああもう!お前はなんでいつもいつも!
『親子丼』って言ってサーモンといくらのどんぶりが出てくるところまでは許すけど、『目玉焼き』って言ってマグロの目玉を出してくるやつがいるか!」
「通だな〜って思ってたんだけど。美味いだろ?」
「美味いけど、余計に腹が立つ!」
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800

「あれ?」
父が遺した蔵書を整理していると、本の間から栞がはらりと落ちて私は息を飲んだ。
「お母さん。お父さんって栞使わない人だったよね?」
「その本——私が貸した本だ。確か私が特に好きって言った所に挟んでたの」
「…どのページ?戻してあげたい」
「さあ?忘れちゃった」
#ツイッター小説

いかがだっただろうか。100篇もあるのだから、1つくらい気にいるものがあれば嬉しい。

この更新も、残すはあと2回になった。ではまた100日、大体3ヶ月後に。

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