【書評:☆☆☆★★】わかりやすさの罪
おそらく2か月くらい前に読んだ本書。
正直内容はあまり覚えてないので、読みながら付箋を貼った個所をあらためて拾い読みしてみました。
最近統計の勉強ばかりしているのもあり、本書の内容は統計に通じるところがあるなという印象です。
統計学には大別して記述統計と推測統計という分野があり、データの状態を少ない数字で表現するのか、データから何かを予測するのかといった違いがあります。
前者である記述統計では、多くの数値データをそのまま並べても把握が難しいため、例えば平均値や標準偏差を求めると、なるほどデータはそんな感じで分布しているのかと理解しやすくなります。
このように無数のデータを限られた数字に要約することを「縮約」と言いますが、もちろんデメリットもあります。
例えば、「40代の平均年収」みたいな記事の数字と自分の年収を比較して一喜一憂(喜になることは、まぁないけど)するみたいなことがありますが、それは自分が平均よりも上なのか下なのかを踏まえてのことでしょう。
しかし、年収の分布は左右対称ではなく右の裾が長いのが普通で、つまり一部の高所得者の年収によって平均値が吊り上げられています。
なので自分が全体人数の半分より上なのか下なのかを判断したければ、平均値より中央値のほうが適切だし、最頻値だってひとつの視点になると言えます。
こんな感じで、データの様子をわかりやすくするために平均値だけにしてしまうと失われる情報がありますが、ここに本書の言いたいことの一端との共通点があるように感じました。
従来自分が意識しなかった視点がいろいろと含まれており、読んでよかったと思います。ただし、読後のすっきり感がないことは覚悟しといたほうがいいかもしれません。