20240925
オルタナ旧市街『踊る幽霊』(柏書房)を読んだ。オルタナさんは、そのペンネームと自主制作本『日常』と『往還』の装丁がとても印象的で名前だけは存じ上げていたが、実際に初めてよんだ『代わりに読む人0創刊準備号』に掲載されている「完璧な想像」というエッセイがとても格好良い作品でファンになった。
今作はオルタナさんがネットプリントなどで書き溜めてきたエッセイを加筆修正して集めたエッセイ集で、東京出身で東京育ちのオルタナさんが都内各地にまつわるエピソードを綴っている。「完璧な想像」はアメリカでの体験と、リー・リーという架空の人物との空想を織り交ぜた不思議な読み心地のする作品だったが、今作では実際に起きた出来事――それもかなりフィクションのような強烈なものばかりだが、真実は小説より奇なりということだろう――と自身の思い出や記憶が格好良い語り口で綴られている。どれも面白かったが、とくに冒頭の巣鴨の踊る老婆とのエピソードが強烈な「踊る幽霊」、渋谷での効き過ぎの冷房エピソードに激しく首肯した「(not)lost in translation」、小岩のスーパーでのマグロ解体ショーから哲学的思考へと接続する「がらんどう」が印象深かった。