20221215

 快晴で気持ちの良い天気。今夜も寒くなりそうだ。テリー・ギリアムの『ドン・キホーテ』を観た。ホドロフスキーはじめ様々な監督が制作を試み、頓挫しているセルバンテスによる近代文学の記念碑的同名小説。今作に限らず、小説として完成されている作品はあまり映像化に向いてない気がする。ドン・キホーテが風車を巨人に錯覚し果敢に戦いを挑むシーンをはじめ、ドン・キホーテの精神の錯乱によって悲劇にユーモアを与えているこのような作品では、シーンの展開だけでは伝えられない心理描写が重要になってくる。そこは台詞や、役者の表情や言い回しなど演技による部分で多少補うことは可能であろう。だが、小説の読者による想像力喚起に勝る表現であるとは思えない。映像作品はその想像力をはるかに凌駕する必要性がある。それはやはり、SF作品など読者がイメージとして喚起しにくいものを映像で見せるような場合にこそ効力を発揮するものだ。とはいえ、テリー・ギリアムはとてもよく仕上げたと個人的には思う。ドン・キホーテの映画を撮る監督によるメタフィクションの設定、狂気の連鎖で円環するラスト、なによりジョナサン・プライスによるドン・キホーテとアダム・ドライバーの演技が素晴らしかった。

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