20230207
厚い雲が空を覆う一日だったが、雨も降らずに気温もずいぶんと上がって過ごしやすい一日だった。このまま春が来ればいいが、週間予報では来週に氷点下の寒の戻りがやって来るようだ。毎月七日は、新潮、文學界、群像、すばる、文藝、「五大文芸誌」と呼ばれる文学の雑誌が一斉に発売される――文藝は季刊なので、三ヶ月に一度になる――。今月は文藝を除く四誌が発売された。わたしは同人として参加している破滅派で、毎月それぞれの目次をチェックして読みどころを知らせる〝定点観測記事〟を書いている。今月は文學界が気合の入っている目次になっていた。群像も新連載、先日芥川賞を受賞した井戸川射子の受賞第一作が早くも掲載されていてラインアップに富んだ内容になっているようだ。今のご時世、雑誌をはじめ、文芸誌を購入する層は限りなく少ない。それでもそういう場所があることで自由業を生業としている人たちは生活をなんとか保てている部分は大きいと思う。反面、芥川賞に顕著ではあるが、賞の選考対象となる作品はこの五大文芸誌に掲載された作品に限ったりする。それは閉じられた空間でのうちわ的ヒエラルキーを生み、ひいては純文学と呼ばれるジャンルそのものが時代の流れに取り残されて衰退している大きな要因になっている。実際に、今ではSNSでブレイクした〝タワマン文学〟やweb文芸、惑星と口笛を主宰する西崎憲氏によってすくい上げられた今村夏子、徳島文学協会と徳島新聞による「阿波しらさぎ文学賞」をはじめとする地方文学など文壇と呼ばれる場所の外から現れる書き手が文芸誌に〝逆輸入〟のかたちで掲載される事例も多数ある。思えば、五大文芸誌ももともとは大衆的な文芸誌と分けて発刊された経緯がある。そういた当時の機運をもう一度取り戻すことを期待したいのが本音ではある。