20241119

 谷川俊太郎が老衰のため逝去の報。九十二歳。うちの母方の祖母も先日、老衰で亡くなったが九十六だった。祖母の場合は今年の初め辺りから固形物を食べられない状態で半年以上、ほぼ寝たきりだった。彼はそうでもなかったようなので、老衰にもいろいろあるのだなと思わされた。しかし、詩人と言えば谷川俊太郎、谷川俊太郎と言えば詩人、というくらいに日本現代詩を代表する巨人だった。それこそわたしが子どもの頃からずっと変わらない印象だったので、なんとなくいつまでも生きているような気がしていた。教科書で読んだ「朝のリレー」の冒頭、――カムチャッカの若者が――というフレーズは今でも頭に残っている。おそらく、カムチャッカという単語を始めて知ったのは彼の詩だったと思う。その頃はカムチャッカがどこなのか、そもそも場所なのかも分かっていなかったかもしれない。まさに世界というものを知らしめてくれたのが彼だった。とは言え、わたしは彼のというか、現代詩に関してはほぼ無知であり、良き読者でもなかった。それでも詩集『夜のミッキーマウス』には衝撃を受けた。詩の自由さを教えてくれた。わたしが書いた掌編「しのあるところ」は彼が自邸を建築家の篠原一男に依頼する際に詩を渡したという、なんとも詩人らしいというか、詩人すぎるエピソードから着想を得た。もちろん内容は全然異なるものになったが、彼がわたしに与えた影響は大きい。心から冥福を祈りたい。

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