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帰りの飛行機で人と人が手を取り合う姿に感動した話(HKO第38話、最終話)

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2015/9/21 Mon  イギリス→上海→日本 航空機内

 帰りの飛行機は中国の航空会社で、上海経由福岡行きでした。東京に戻るより、同じ九州内に降りる方が安心感があるので、福岡着にしました。

 上海では空港の外に出ませんが、中国に入るのはそもそも初めてです。実は上海って長崎から見ると、直線距離は東京より近いのです。スポーツだとテニスの有名な国際大会「上海マスターズ」があるので、いずれ行ってみたいです。

 ヒースロー空港から飛行機に乗ったとき、座席の隣には中国人の40代の男性が座ってました。

 席につくと笑顔で「日本人デスカ?」と聞かれ、おっ日本語喋れる!?と思い、そうですと返すと「私ハ、ワンデス」と。ワンさんというようです。

 「私は野瀬です。イギリスではどこに行きましたか?」と日本語で話すと少し困った表情をされ次の言葉が出てきません。

 どうやらワンさんの日本語は挨拶までで、それ以上は難しいようです。

 ならばと思い、かわりに簡単な英語を話してみるとそれも無理なよう。

 じゃあスマホの翻訳機能を使おうと思い、ワンさんも同じことを思ったらしく揃ってスマホを取り出すと、そもそも飛行機は既に空の上で電波がなくて機能せず。

 お互い諦めました。

 前の席に目をやると、パンチパーマの50代くらいの女性が座ってます。

 すごい髪形だなあなんて思い、そのまま映画を観たりしていると、機内の前方が何やらざわついてきました。

 前方左端にある席にCAが集まり、他のお客に声をかけています。

 どうやら医者を探している模様。意識を失った人がいるようです。

 CAもわりと大きめの声で機内のお客さんに呼びかけます。なんといっているか分かりませんが、たぶん映画とかドラマで見る「お客様の中にお医者様はいませんかー!」です。

 すると、前に座ってたパンチパーマの女性(以下、おかん)がすっくと立ち上がり、席に近づきCAに指示を出し始めました。

 どうやらおかんは医療関係者だったようです。

 おかんの指示に従い、真ん中にある5席を空けてもらい、そこにその人(アジア系中年男性)を移すことに。その男性の近くに座っていたであろう白人男性も手伝い皆で協力して運びます。

 困ったときは人種も国籍も関係ありません、みんなで助け合うんです。


 男性は鼻血を流していますが、おかんがCAに酸素ボンベを持ってこさせ口にあてるなど処置をした結果、無事男性の意識は回復しました。

 大事には至らなさそうで安心しました。

 おかんの活躍とみんなの連携プレーにより、飛行機が着く頃には男性はCAと会話できるまでに回復していました。

 ぼくは人種も国籍も越えてみなが協力しあう姿に、とても感動しました。

 結構大変なトラブルでしたけど、みなが男性のことを心配して手を取り合う姿に一種の美しさを覚えました。

 帰りの飛行機のなかでそんなこと気づかされるなんて、旅ってやっぱりいいもんです。

あと、おかんかっこよかった。


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 2015年9月、30歳のときに決行した海外一人旅の記録はこれで終わりです。

 11日間にわたるイタリア、イギリスを巡る初めての海外一人旅は風邪を引いてのスタートとなりましたが、歴史的な瞬間を目の当たりにする特別な経験をしたり、反対に人々の普通の暮らしを垣間見たり。

 見るものすべて新鮮に映りましたが、この旅を通して、世界中にいる人たちは自分と同じ人間であって、ぼくと大して変わらないんだなと強く感じました。

 それと、初めてのヨーロッパでしたが、十数時間に及ぶ移動時間がかかるものの、行ってみるとなんてことない、案外近いなと思いました。

 世界は広いけど、けっこう近い。


 こんな世界観を身に付けたことが、いちばんの収穫だったかもしれません。

 大して英語もしゃべれないのにツアーでもなく自力で行ったんです。ぼくはもう世界のどこにでも行けるという自信がつきました。

 ご覧いただいた皆さんありがとうございました。

 広くて近いこの世界のどこかで、またお会いしましょう!

(おわり)

↓ この連載「ヒラ公務員欧州へ行く(HKO)」のこれまでの記事はこちら


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