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つる菜(浜ほうれん草)を採集して食べる
関東甲信越の梅雨入りが発表されましたね。5月が雨がちだったので、気分的にはまだ梅雨終わってなかったのか……という感じです。とはいえ先週は比較的良い天気で、その間に登山などを伴うリサーチを済ませられたので良かったです。こちらもいずれ記事にできたら。
5月は雨がちながらも晴れた日はとても気持ちの良い気候です。基本的にあまりリサーチは進められませんでしたが、休日に遊びに行きがてら野草などの採集をしたりしていました。
つる菜を採集する
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5月の下旬、初夏の陽気に誘われてピクニックに行こうという話になりました。今住んでいる横浜市は意外と広く、山も海も無いことはないのですが、せっかくなので鎌倉市と藤沢市の狭間、江ノ島のあたりに来ました。
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ピクニックには副目的がありまして、つる菜の採集です。つる菜は海岸の砂地に生える多肉植物で、食用に栽培されているほか、グラウンドカバーとしても用いられます。どちらでもないものは自生の可能性が高いですが、栽培されていたものが野生化している場合も少なくないそう。
日本では主に沖縄や奄美などで食べられるようですが、寒冷地以外の浜辺であればだいたいどこにでも生えています。ただし、海浜公園などでは動植物の採集を禁止しているところもあるので注意が必要。また、つる菜は重金属などを溜めやすいそうなので、汚染の可能性のある浜辺での採集は避けたほうがよさそうです。
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繁殖力が旺盛なのであまり気を使う必要はなさそうですが、採集するときはこんな感じで脇芽が出ているところから摘んでいきます。根本は硬いので先端の柔らかいところだけ採っていくのがよいでしょう。
つる菜を調理する
つる菜の下処理
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つる菜は英語でNew Zealand spinachと呼ばれたり、日本語でも浜ほうれん草と呼ばれたりもするそうですが、見た目はほうれん草とかなり異なります。分類的にはハマミズナ科で、アイスプラントの仲間です。
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よく見てみると、アイスプラントほど大きくはありませんが、塩嚢細胞とよばれる水ぶくれのようなものが葉の裏を覆っているのがわかります。この塩嚢細胞、基本的には浜辺の植物が摂取した塩分を隔離しておくためのもので、アイスプラントの場合はそれによって葉に塩気が感じられます。しかしつる菜の場合はサイズが小さいのもあってかアイスプラントほどの塩気は感じられません。
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細かい砂をかぶっているので、入念に洗って……
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たっぷりのお湯で1分ほど下茹でします。太い茎の部分は少し長めに1.5〜2分くらい。つる菜は結石の原因となるシュウ酸を含むので、下茹でして水にさらしてから使うのが食べやすくかつ安全です。
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冷水に浸して色止めします。
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軽く絞って下処理は完了。つる菜は肉厚なので多少長めに茹でても崩れません。茎の鮮やかな黄緑色と葉の深い緑色のコントラストがきれい。
つる菜を食べてみる
初めて食べる食材なので、簡単な料理で味見をしてみます。
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まずはシンプルにお浸し。下茹でしたものを出汁に浸してなじませたら鰹節を削ります。
つる菜は生でかじると若干えぐみを感じますが、下茹でするとかなりクセがなくなります。ほうれん草から鉄臭さを抜いたくらいの味わいで、ほのかに甘みがあります。
ただ肉厚なのと塩嚢細胞がざらざらとして口当たりがあまり良くありません。今回は下茹でしてそのままお浸しにしたので、もう少し長めに茹で時間をとったほうが良かったのかもしれません。
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続いて炒めもの。弱火でベーコンを焼いて脂を出し、その脂でつる菜を炒めます。お浸しではごわごわ感が気になったので、しんなりするくらいまで炒めます。ほうれん草などと違って、しっかり炒めてもぐずぐずになりません。
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食べてみると、つる菜は油脂分との相性が非常に良いことがわかります。焼き目からはたけのこを焼いたときのような、甘く香ばしい風味が感じられます。もう少し強火で軽く焦がすくらいの勢いで炒めるとより香ばしくなったのではないかと思われます。お浸しにしたときのごわごわとした食感も、炒めた場合は全く気になりません。多肉っぽいしゃくしゃくとした食感が心地よく、とても美味しいです。
鱈のポシェとつる菜のソテーを作る
つる菜の味わいがなんとなくわかったので、実際にひと皿に組み立ててみます。今回は、油脂で炒めた場合に生まれる甘く香ばしい風味と食感のアクセントを活かして、魚料理に組み込みます。
メインになる料理は前菜などに比べると分量が多めになるので、変化をもたせないと食べ飽きてしまいがち。特に魚料理は食感が単調になりがちなので、付け合せやスパイスなどで食感や香りに変化をつける必要があります。香ばしく炒めたつる菜の食感や香りで料理にアクセントをつけようというわけです。
鱈のポシェ
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職場最寄りのスーパーで安く売られていたので鱈を買ってきました。軽く塩をして水気をとり、腹骨をすいて血合い骨を抜いておきます。
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1人分サイズにカットして、キッチンペーパーを敷いた鍋に並べたら……
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冷たい状態のクールブイヨンを注いで、弱火にかけます。ゆっくり70℃くらいまで加熱。もう少し温度は低くてもいいかなと思いますが、鱈にはアニサキスのリスクがあるのでしっかりめに火を入れます。
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70℃くらいになったら火を止めて、60℃に予熱しておいたオーブンに入れます。10分くらいで魚に火は入りますが、多少放置しても大丈夫なのでこの状態で提供直前まで保温します。
みつばち花粉ガルム風味のオランデーズソース
ソースにはオランデーズソースを作ります。魚のポシェにはバターと白ワインでつくるブールブランソースやオランデーズソースを組み合わせるのが定番ですが、今回はみつばち花粉ガルムを使って少し香りに特徴をつけてみようと思います。みつばち花粉ガルムが酸味との相性がよいことは前回の試作でわかっているので、酸味の立ったオランデーズソースとの相性は良いのではないか、という目論見です。
オランデーズソース、ちゃんと作ると若干面倒くさいの今回は簡易版です。
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バター40gとサラダ油40gを小鍋に入れ、バターの水分が勢いよく沸騰するまで加熱します。やりすぎると焦がしバターになっちゃうので程々に。
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卵1つとレモン果汁10ml、みつばち花粉ガルム10gをミキサーでまわし、熱した油を少しずつ注ぎます。卵に火が入り、ふんわりとしたら追加のレモン果汁と塩で酸味と塩味を調整して完成。
つる菜のバターソテー・組み立て
パーツが揃ったので組み立てていきます。
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つる菜は少し多めのオリーブ油でしっかりと焼き目を付けながら炒めます。
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お皿に盛って……
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オランデーズソースをかけます。オランデーズソースは直前にもう1回ミキサーを回すと空気を含んでふんわりとします。
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鍋から鱈を出し、軽く水気をとったらハーブといっしょに盛って完成。ふんわりと火の入った鱈としゃくしゃくのつる菜のコントラストが楽しいです。
ポシェはポワレやムニエルと違って焼き目がつかないので、食感と香りが単調になりがち。そこを、しっかり焼き目をつけたつる菜が、香ばしい風味と食感で補ってくれるわけです。ハーブはディルを用いましたが、複数種類混ぜて使ったほうがいいかもしれません。盛り付け方の問題もあるかもしれませんが、ポシェはポワレなどと違って火入れや質感が均一になり(それが良いところでもありますが)、何口食べても同じ味で退屈してしまいがちなので、ハーブの種類を複数用いることで、ひとくちひとくちに香りのバリエーションを持たせても良いかな、と思いました。
おわりに
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以上でつる菜の採集から試食、つる菜を用いた料理の試作まで行いました。つる菜は基本的に春から秋にかけて長い期間採集でき、野草としてはくせがなく非常に使いやすい食材です。野草ならではの味わいか、というと微妙なところですが、日常的に使える野草としては非常に優秀だなと思いました。
また、ポシェは普段あまり調理法の選択肢に上らないのですが、温度や量の管理が非常に楽(=クオリティを安定させられる)で、複数人の料理を同時に仕上げないといけないようなシーンではかなり便利です。近年は食感のはっきりした料理が好まれ、特にメイン料理ではポシェやブレゼよりもポワレやグリエ、ロティがよく用いられているイメージがあるのですが、そういうなんとなくのイメージにとらわれずにいろんな調理法を試してみるべきだなあと思わされました。
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