音と光の吹き溜り
その
音と暗がりに充ちた空間で
あなたは街角の雑踏に耳を留め
公園に遊ぶ子供たちに目を留め
巨大なサイバー空間の網目を潜り
地下深く唸るエネルギーの源へと降りていく
そのすべてがかぼそい光の帯に凝縮されて
小さく耳もとに問いかける
ねえ
ドコカラキタノ? あなたは
ナニヲミテイルノ? あなたは
ナニヲシッテイルノ? あなたは
ナニヲシラナイノ? あなたは
すべてが通過するからっぽの空間で
すべてが交錯する濃密な空間で
ふと
隙間からまぎれ込む外の気配を感じながら
空間を 音が 暗がりが 濃く薄く 深く浅く
何層にも明滅をくりかえしながら
行き交う足音が 風に乗り
行き交う吐息が 風に舞い
そう
そこはただ行き交うための場所
そこは音と光の吹き溜り
そこであなたはだれかと入れちがい
そこであなたはだれかの夢をみる
いま
覚醒と昏睡がまじるあわいのなかで
まだ見ぬ現実と記憶のあわいのなかで
まだ見ぬだれかとあなたのあわいのなかで
いま
光の明滅に耳をすませて
音と暗がりの海を漂うて
いま
あなたと世界の回路がつながる
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