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トンガ紀行記

 ポリネシアの旅の楽しみは、何といっても白い砂浜とどこまでも透き通った青い海にある。

 トンガ行きの航空券を握りしめて、これまで経験したことのない異国の地に向かうことに、大いに期待していた。

 ニュージーランドからトンガに向かう機内では、ラグビートンガ代表U20の選手団に囲まれ、高まった期待が最高潮に達していた。

 ホテルに向かう夜道、数え切れないほどの野犬とすれ違った。これは郊外だけで都市部になれば落ち着くだろうとそれほど不安になることもなかった。しかし、あろうことか首都の町いちばんのホテルの前でさえ野犬がたくさん彷徨いていた。

 ふらっと散歩することにした。走る車がどれもボロボロで信号機すらない。半数近くが無免許で車検とは無縁の世界。道路を渡りたい時は、タイミングを見計らって渡るしかなかった。

 いつの時もアジア人が珍しいのか注目の的となった。JICAの活動もあり、日本人だとわかると友好的になる人もいた。しかし街ゆく人からはチャイナチャイナと言われ続けた。ほらきた差別!そんなことを心の中で発していた。後から聞くと、トンガ人はただ中国人を嫌っているだけで日本人はむしろウェルカムだそう。島にいるアジア人はほとんど中国人なので見間違えるのも無理はない。

 郊外を散歩した時にキャッチのお兄さんに麻薬を勧められたこと、小学生くらいの2人組に掏られそうになったこと、逃げ場がない一本道で野犬に囲まれたこと、日本ではそう出くわさない経験をした。

 冒頭に砂浜と海が楽しみなどと書いたが、そんな余裕などなく恐怖心と手を繋ぎながら滞在した。

 ネガティブなことばかりではない。ホテル近くのトンガ料理が食べられるお店に入った。オタイカと呼ばれる、魚の切り身がココナッツミルクに漬けられた料理を頂いた。これがまた美味い。食べ物はどれも美味しかった。

 他に良かったところを挙げようとしたが、書く手が進まない。もう人生で行くことはないだろう。



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