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トメ俳優って何なの?

 主演。演劇、ドラマ、映画などの主人公を演じる俳優のことだ。一方、結構知られていない「トメ」「トメ俳優」の存在。今回は「トメ」について書いていく。トメとは? トメ俳優とは? 

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映画テレビドラマ等で主演の次に目立たせるために最後に出演者の名前を載せるクレジットタイトルの業界用語。

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 自劇団「獣の仕業」では「主演」と「トメ」を明確に定義しているのだが、トメのことはよくきかれる。その時は大抵このように答えている。

「風間杜夫や、吉永小百合のことです。」

 色々語弊はあるものの、結果一言で伝わりやすいので、ぱっと伝えたいときはこうしている。さて、みなさんはこのお二人に、どんなイメージを持っているだろうか。主演ではないときでも、役柄上主演と同じくらいあるいはそれ以上の重要性を持ち、貫禄があり、技術も存在感も人気も申し分なく、物語をグツと引き締め、ひっぱる、そんなあらゆる役割を持つ俳優。私にとって風間さんと吉永さんはそんな俳優だ。

 こんな人が、どんな座組にもいると思う。この人がいれば安心、とみんなが思うような、文句なしの助演リーダー。そうした俳優に敬意を込め、キャストクレジットの一番最後(先頭の次に目立つ位置)に配置する。それが、トメ。そしてトメを担う俳優のことを「トメ俳優」と言うのだ。

 ドラマや映画では、物語上の役割だけでなく、該当する俳優さんのこれまでのキャリアや世間での知名度も絡んでくるので、一概に作品内の役割だけで決まるわけではないようだ。しかし、獣の仕業は座組に大きなキャリア差や知名度差は今のところないので、純粋に物語上の役柄や演出上の役割だけを鑑みて、主演と対になる登場人物を演じる俳優を「トメ俳優」とし、キャストクレジットの表示順にも反映している。

 それは、要は「頼みましたよ。」という演出からのメッセージである。

 トメはある面では、主演より演じるのが難しい。
 何故ならば主演は、物語の起承転結と登場人物の起承転結が一致しているので(そこを背負う重責がかなり大きいのだが)ある意味やりやすいと言えばやりやすい。自分の状況が盛り上がるときには作品も盛り上がるし、下がるときは一緒に下がる。そうやって主演と物語は、原則常に並走するものだ。

 助演の登場人物はそうはいかない。
 たとえばトメが悪役をやっていたとする。クライマックス直前にその野望が挫け、とても悲しい様子を演じるべきだとする。しかし周りの人間はめでたしめでたしと大喜びをしているし、シーンとしては「ハッピーエンド」なのだ。
 そこで、自分の悲しみをシーン全体に行き渡る演技をしてしまうと、登場人物単体で見れば正しくてもシーン全体の役割には反していることになる。自分の悲しみの表現はほどほどに、シーン全体を立てる演技をすべきこともあるだろう。どんな作品も「JOKER」のようにするわけにはいかない(JOKERは個人的には好きなのだが)。
 表現は惜しんではならない、しかし、あくまで、主演ではない。
 このあたりに、助演の難しさがある。つまり、主演は助演の上位互換ではないし、まったく別の職能だと私は思う。主演の演技がどんなにうまくても、助演はからっきしという人もいる。

 そしてそんな助演の中で一番難しいのが、「トメ」だ。

 物語はあくまで主演を中心に進んでいく、しかし、確かな存在感を出さなければならない。他の助演を圧倒するような存在感を求められる、しかし、悪目立ちをしてはいけない。矛盾するふたつを見事にバランスする。それがトメの使命である。

 ここまで書いたところで(つまりハードルをガンガンにあげたところで)次回獣の仕業本公演「マクベス」のトメを発表する。
 手塚優希さんです。(どーん)よっ、風間さん、よっ、吉永さん!

見よ、渾身の顔!

 獣の仕業のトメは色んな人がやっている(前回本公演では雑賀玲衣さん)が、手塚さんのトメは二回目。演じるのは「第一の魔女」。主人公のマクベスを翻弄する三人の魔女のリーダー的存在だ。
 魔女が操る魔術、それにより狂っていく運命の歯車、第一の魔女には特にその運命そのもの「運命の化身」として、今回トメに任命した。

 手塚さんがしっかりきばるところ、お見逃しなく。

獣の仕業次回公演のお知らせ

獣の仕業 第十四回公演
マクベス [Tomorrow, and tomorrow, and tomorrow,]
2022年10月21日(金)〜10月23日(日)
会場:シアター・バビロンの流れのほとりにて
脚本:W・シェイクスピア 翻訳:坪内逍遥
脚色・演出:立夏

  • 21日(金)20:00

  • 22日(土)14:00,19:00

  • 23日(日)13:00,18:00

  • ※上演時間90~100分※

チケット予約フォーム

劇場観劇と、配信視聴でチケット予約窓口が異なっています。

劇場で見たい方

  • 劇場観劇チケット:2,500円

  • 紙脚本付き+劇場配信チケット:3,000円

  • ※上記フォーム内で券種を選択できます。

配信で見たい方(アーカイブ視聴)

あらすじ・演出ノートなど詳細

感染症対策なども記載しています。

詳細は決まり次第noteやTwitter@kmn_chan_botでお知らせいたします。
Twitterでは公演関係者たちもおのおので #獣の仕業 #獣マクベス のハッシュタグで情報や稽古場の様子を投稿しています。ぜひご覧になってください。

獣マクベス公演関係者リストhttps://twitter.com/i/lists/1558797824996753408

出演

マクベス/Macbeth(武将)…小林龍二

マクベス夫人/Lady Macbeth(マクベスの妻)…雑賀玲衣
ダンカン/Duncan(スコットランド王)、ヘケート/Hecate(月と魔術の女神)…長瀬巧
バンクォー/Banquo(武将)…恩田純也 
マクダフ/Macduff(スコットランド貴族)…今村貴登
三人の魔女/Three Witches:
・第三の魔女/Third Witch、マルコム/Malcolm(王子、ダンカンの息子)…きえる
・第二の魔女/Second Witch、フリーアンス/Fleance(バンクォーの息子)…野崎涼子(salty rock)

第一の魔女/First Witchシートン/Seyton(マクベスの鎧持ち)…手塚優希→これがトメです! イェーイ!


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