ごく一般的な社会人アカペラーが、勢いに乗っているアカペラ団体を脱退した話。
これは何?
タイトルの通りなのですが、ごく一般的な社会人アカペラーである僕が、アカペラ団体「ハモニポン」を辞めましたという、いわゆる「退職エントリー」です。
ハモニポンって?
アカペラメディアや、アカペラ講師マッチングサービスを運営するアカペラ団体です。現在「背徳の薔薇」「Nagie Lane」といった大人気アカペラグループでアマチュアアカペラシーンの最前線を走るがっくん、バラッチ、Jぺいの3名により2017年に発足し、僕は同年の11月ごろから参画しました。
初めこそメディアで記事を公開したり、ワークショップを開催したりといった活動がメインでしたが、最近はありがたいことに企業から案件をいただいたり、他のアカペラ団体とコラボしてイベントを開催したりと、活動の幅がぐんぐん広がって来ています。
中でも6/23に開催された『SHIBUYA A CAPPELLA STREET』(通称「渋アカ」)は、東京の中心とも言える渋谷を舞台に、アカペラのストリートライブイベントを開催するという大規模な取り組みでした。こちらのイベントも、企業を含む複数の団体とコラボレーションし実現したものでした。
そんな勢いに乗っているハモニポンを、僕はこのタイミングで「辞める」という決断をしました。
おまえは誰だ
おっと失礼、自己紹介が遅れました。
僕は今年で社会人4年目の、至って平凡な会社員です。東北のとあるアカペラサークル出身で、現在は都内の社会人アカペラサークルに所属しています。
大会などで実績を残した経験はなく、特に歌が上手いわけでもない、どこにでもいるごく普通のアカペラーです。
縁があって、ハモニポンが立ち上げた「アカペラ総合メディア」のディレクターとして参画し、これまで1年と9ヶ月間、メディアの制作ディレクションやら記事の編集やらTwitter運用やらをやっていました。
※当時の話はこちらのnoteに書いています。
団体の中では、メディアのディレクターという以外にも、突拍子もないアイディアをポンポン思いつくメンバーたちのまとめ役的な立場であり、定例会議のファシリテーションやサービスの運用フローの整備などを担当していました。
また、立ち上げ当時は団体の理念のようなものがなかったため、団体としての存在意義や理想像、価値観を言語化する場を企画したこともありました。
(4人で5〜6時間かけて、本気で議論しました。)
つまりは色々やっていたのですが、一言で言うと、「他のメンバーの手の届かないタスクをひたすら拾ってはどうにかする」、そんな存在だったように思います。
なんで辞めたの?
ここまでお読みいただいた皆さんは、「頑張ったことが実を結んできているじゃん、なんで辞めたの?もったいない!」と思ったかもしれません。
辞めると決めたこと自体に後悔はないのですが、正直に申し上げると、ここ数ヶ月ほど毎日のように「ハモニポンを辞めるべきか否か」を悩みました。
アカペラ界隈の最前線を走り続けているメンバーと一緒に色々な取り組みができるのはとても価値があることですし、何より自分のアイディアを形にしたり協力者を募ったりする際、「ハモニポン」という看板を持っていることは一定のアドバンテージが(少なくともアカペラ界隈では)あります。
それでも最終的に「辞めよう」と決断したのは次のような理由からでした。
1.メンバーそれぞれが独立して活動しており、チームとして機能できていないと感じたから
僕が脱退を切り出す直前のハモニポンを一言で表すと、「各々がやりたいことを勝手にやっている」という状況でした。
このような体制になった背景は、ワークスタイルの違いにあります。他のメンバーがフリーランスであるのに対し、僕は一般的な会社員であるため、集まって会議したり相談したりする時間をなかなか確保できずにいました。
もちろん、個人が自律的に動く組織が一概に悪いとは言えません。むしろ物事を進めるスピードが速くなるというメリットもありました。
とはいえ、サービスについて議論をしたり、全員で1つのものを作り上げたりといったことができずにいると、「自分がこの団体にいる意味って何だ?」という疑問がふつふつと湧いてきてしまうのでした。
2.お互いのコミュニケーションスタンスにミスマッチを感じたから
1に関連するのですが、集まって会議ができないとなると、普段のコミュニケーションはオンラインチャットがメインになります。僕はIT系の企業に勤めていることもあり、社内コミュニケーションの半分以上をチャットが占めているため、チャットでのやりとり自体に抵抗は全くありませんでした。いやむしろ、考えを頭の中でまとめて話すまでに時間がかかるタイプなので、時にはチャットの方がやりとりしやすい、とすら思っていました。
一方で、他のメンバーはオンラインでのやりとりよりも、対面でのコミュニケーションの方がずっと得意なようでした。結果、チャット上で僕が一方的に議論を進めてしまうことがしばしばありました(本当にこれは反省すべき点です…)。
もしかすると仕組みや運営体制を変えることでこの問題は解決できたかもしれませんが、僕の力不足もあり、結局最後まで解決には至らなかったように思います。
3.アカペラ界隈で大きなムーブメントを起こすことよりも、自分の周りの人々や手の届く範囲の関係者に対し価値提供をしたいと思ったから
これはハモニポン参画前には分からなかったことなのですが、様々な活動をする中で、「自分が実感を持てなくなるような大規模な取り組み」を行うのはあまり自分に合っていないな、と感じるようになりました。
理由としては、僕のモチベーションの中心となっているのは「いかに大きいことをやるか」「いかに多くの人を巻き込めるか」よりも「関わった人にいかにいい影響を与えられるか」といったことだからです。
そのためメディアの運営においても、「記事が多く拡散された時」より「ハモニポンの記事のおかげでこんないいことがあった」という声をいただいた時の方が、ずっとやりがいを感じました。
あくまで僕の予想ですが、ハモニポンはこれからも、企業や各種メディアと連携してよりアカペラ界隈で存在感を増していくと思います。しかし、そこに自分がどのように介在して、どのように働きかけていくかのイメージが持てませんでした。
そういったことよりも、「もっと1人1人に寄り添った活動をしていきたい」「力を持つ存在を動かすのではなく、個の力を合わせることで、自分の半径5メートルの範囲からでも変えていきたい」
そんな想いが少しずつ自分の中に生まれていき「自分がいるべきなのはここではないのかもしれない」と考えるようになりました。
よかったところ&得られたもの
ここまでネガティブな話がほとんどになってしまいましたが、「辞める」と決めた今だからこそ見えるハモニポンのよかったところ、ハモニポンにいなければ得られなかったものもたくさんあります。
よかったところ①提案に対しすぐに「いいね!」と言い合える文化
僕の記憶する限り、「こういうことをやりたい」「こういうものがあったらいいよね」という提案に対して真っ向から否定されることはなく、非常に意見しやすい空気感の団体だったように思います。
僕は4人の中だと最年少だったのですが、上下関係のないフラットな環境の中で自由にやらせてもらえたことはとてもありがたかったです。
よかったところ②立ち上げ当初から大きな注目と期待を集めていた点
やはり僕以外の3人のメンバーはアカペラ界隈における影響力が大きく、正直この3人の影響力だけで団体の知名度を上げていったち言っても過言ではないと思います。
一昨年の11月、Jぺい氏によるメディア立ち上げ告知のツイートもかなり拡散されていました。様々なサービスやイベント、団体ができては消えていくアカペラ界隈で、これだけ初動の反応がよかったものはそこまで多くないのではないか、と感じています。
よかったところ③みんなアカペラが大好きだった
やりたいことや目指したい方向がそれぞれ異なっていても、団体として成立していたのはこの部分が大きいです。
自分たち自身がアカペラを愛する「アカペラー」だからこそ、変に金儲けに走ったりせず、「本当に求められているものってなんだろう」「どうしたらみんなのアカペラ活動がもっと充実するだろう」と考えられたのだと思います。
ハモニポンにいたことで得られた、何よりも大きいもの
ハモニポンの活動を通して得たものはたくさんありましたが、一番はやはり自分たちと同じように「アカペラをよりよくしよう」と活動している方々との出会いです。
大変ありがたいことに、「アカペラに特化したメディアをでディレクターをやっている」というだけで、僕自体にも興味を持ってくれる方がたくさんいらっしゃいました。新しくメディアを立ち上げるという方の相談に乗ったり、「アカペラ界隈のこういう課題をどうにかしたいんだけれど、何かできることはありませんか?」と声をかけていただいたりしたのは、やはり「ハモニポン」という看板のおかげだったのだと思います。
それだけではなく、メディア掲載やイベントを通じて繋がった他のアカペラ団体のお力を借りて、自分の思いついた企画を実現する、ということもたびたび経験させていただきました。
その一つが、昨晩公開された「#ノートルダムに歌を届けよう企画」です。
こちらは4月にあったノートルダム大聖堂の大火災のニュースを受け、「アカペラや合唱といった垣根を超えて、日本からお見舞いの気持ちを歌にして届けよう」という企画で、King of Tiny Room・Mass A Cappella・アカペラサークル「色々」の3団体の協力があって実現したものでした。
ハモニポンに参画する前の自分だったら、こういった企画を思いついても何も形にできなかったと思います。
本当に、自分一人じゃ、何もできませんでした。
結局のところ、後悔は全くないです
振り返ってみると、仮に他の団体にいたとしたら、同じような経験は絶対にできなかったと断言できます。
ハモニポンに参画したことに対して後悔は全くないですし、いつも真面目で細かいことが気になりすぎる僕を受け入れ、ここまで一緒にやってきてくれたメンバーには感謝でいっぱいです。
これからどうするの?
さて、通常の退職エントリーであれば、ここらへんで「転職して次は○○で働きます」というような話が始まるのですが、次どうするかは決めていません。
「アカペラ団体のみんな!!オラに仕事を分けてくれ!!」という気持ちもそんなになく、しばらくは今所属しているサークルの運営やアレンジ代行、最近ひっそりと始めたアレンジャーコミュニティの運営などを細々とやっていこうかと思います。とか言って、数ヶ月経ったころにはまた思いつきで新しいことを始めたりしているんでしょうけど。笑
あと、これからアカペラ団体を立ち上げたり、アカペラメディアを作ったりということを企んでいる方がいらっしゃれば、もしかすると何かお話できることもあるかもしれないので、Twitterなどでお気軽にお声がけください。(その際はぜひ美味しいラーメン屋とか連れて行ってください!!)
最後になりますが、メディアの記事をいつも楽しみにしてくださっていた方、講師マッチングサービスを利用してくださった方、ワークショップや各種イベントに足をお運びいただいた方、様々な企画に協力してくださった方、いつも快く力を貸してくださったライターやスタッフの皆様、コラボしてくださった企業の皆様、そして僕が疲弊するたびに励ましたり支えてくれたりしたアカペラ仲間のみんな、本っっっ当に、これまで応援ありがとうございました!!
またどこかで!!
余談:ハモニポンの求人、出てます。
僕が言うと説得力ゼロで大変恐縮なのですが…現在ハモニポンでは、ともにアカペラ環境をよりよくしていく仲間を募集しています。
もしこの記事を読んで、「おっ、なんかよくわからんメガネがいなくなったらしいけど、この機会にハモニポンに関わってみようかな」と思われた方は上記ツイート内のフォームから応募してみてください。(7/31までなのでおはやめに…。)
ちなみに、フォーム内ではライターを募集していますが、ぶっちゃけライターの方がたくさんいても、制作全体を管理するディレクターがいないと空中分解しかねない、というのが私見です。
コンテンツディレクターや編集の実務経験がある方はマジで応募してやってください。マジで。
おしまい。
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