「起爆都市」県警外事課クルス機関 柏木伸介 宝島社
ハードボイルド系
横浜を舞台に、米国、中国、北朝鮮、ロシアといった国々と、そこに関わる情報機関から、ヤクザ、半グレ、政治家、警察組織も、異なる部署や、マトリまでを巻き込んだ事件。もちろん、暴力描写も満載だが、自分は、根底にある優しさというか、登場人物たちの人生への敬意とまでいかないも配慮を感じた。主人公の来栖、今回、来栖のパートナーとなったマトリの鬼塚、そして、悪役たちさえも。目的のためなら手段を選ばないスタンスではあるも、その手段を遂行する際に、単なる残虐性というものはなく、それぞれの道理がある。ハードボイルド系だと、残虐性を際立たせる作品が多いが、ここにはなかった。矢代という存在がそうさせたのかもしれない。王道としては、主人公と悪役がぶつかる最後に向けて、残虐に殺されてしまう役回りだが、最後まで生き残り、しかも、軽傷。ラストシーンを読むと次シリーズにも登場しそうなので、そこであっさり殺されるかもしれないが、、、。県警と警視庁、公安や、CIAが出てきたり、中国・北朝鮮の覚せい剤が絡み、中華街を舞台にするなど、設定としては、よくある。よくあるだけに、そこでどう、”らしさ”を出すか。主役だけでなく、登場人物の描写が丁寧であり、シリーズを重ねると、思い入れが深まる気がする。その思い入れがいい意味で裏切られるようになると面白くなるなと思ったりする。