警察小説好きの読書感想文

警察小説好きのサラリーマン 堂場瞬一・今野敏・誉田哲也・濱嘉之・富樫倫太郎・鈴峯紅也・・・

警察小説好きの読書感想文

警察小説好きのサラリーマン 堂場瞬一・今野敏・誉田哲也・濱嘉之・富樫倫太郎・鈴峯紅也・・・

最近の記事

今野敏「オフマイク」集英社e文庫

久しぶりに。数冊読んでいたが、なかなか感想を書けてなかったので、本当に久しぶり。本シリーズは、好きな作品の一つであり、もちろん全て読んでいる。本作も期待を裏切らないというか、想定の範囲の中で、着実に各プレイヤーが役割を遂行している、水戸黄門的安定感。今野さんの作品は、署長シリーズなど、多くのシリーズがあり、わたしも全て読んでいるが、どれも高いレベルでの安定感を発揮している。本来、警察小説には、非日常な世界を求めているはずが、その中にある安定性に落ち着いてしまっている。正直、シ

    • 冨樫倫太郎著『SROⅪストレートシューター』中公文庫

      読み続けているシリーズ作品の一つ。 シリーズ当初はワクワク感があるも、重ねるに連れ、単調になったり、残虐性が強まったり、登場人物が多くなり相関性がよく分からなくなったりと、ストーリーの深みより表面的な部分がこんがらがった糸みたいになることが多い。読んでいるほうも楽しみよりも、ここまで読んでいるからという意地になることがある。そんな中での本作品、若干、意地になりつつあったが、また、楽しみになる期待感を持てる作品だった。まさか、最後に新たなモンスターの誕生に繋がるとは!?もし、今

      • 今野敏著『隠蔽捜査9 探花』 新潮社

        もはや、水戸黄門ばりの定番感。読み進めるワクワク感よりも、答え合わせをしているというか、「はいはい。そうなるよね」という感じ。自分でも、なんで読んでいるか分からないが、ここまで、読んできているから、、、。という感じも、水戸黄門なのかなと。ここまでで、何度も‘感じ’を使っているが、読んで2週間くらい経って、書いているが、もはや、どんなストーリーだったか忘れている。なんか残酷というか、書くことへのエネルギーは相当なものだろうし、それこそ、出版社との調整と、多くの大人が関わる。今野

        • 堂場瞬一著『ボーダーズ』集英社文庫

          新作ということで久々に手にした堂場作品。出張の行き帰りのお供として購入。今回、作品の解説も読んでみた。フレームという設定や演出の妙を褒めていた。これだなと。自分にとっての違和感は。登場人物の葛藤、苦しみが入ってこない。学生運動に関わった人は、何かしらの想いを持っているだろうから、今回の犯人側の登場人物として出てくるのは、理解は出来るが、何故、この人が?という部分に重みがない。共犯者もしかり。もしかすると、堂場作品は、設定や、技術を味わうということが、楽しみ方なのかもしれない。

          小説を読むこと

          文字を追う。ただ、追うのではなく、場面を想像しながら読む。日常から、非日常の世界へ。空間の移動はなく、ページをめくることで、トリップできる。逃避だったり、なんとなくだったり、トリップの理由は時々で、異なる。リアルな旅行と同じく、気持ちは行き先(=作品)に反映される。色々と考える。このまま時が流れることへの違和感も。踏み出せない感じも。自分らしいで、片付けない。トリップに期待しない。判断を委ねない。読むなことで自分ノ頭を整理する。

          堂場瞬一著 チェンジ 警視庁犯罪被害者支援課8 (講談社文庫)

          どこに向かうのか。 自分が警察小説を読み始めるきっかけとなった鳴沢シリーズの作家、堂場氏。鳴沢シリーズ以外もとにかく読んだ。心理描写というか、事件自体よりも、そこに至るまでの心理、刑事が抱える闇とそこに抗うかのように犯罪に向かう姿など、作品に没頭してしまうことが多い。特に、鳴沢シリーズと高城シリーズ。そこから、時を経て、作者自身も経験を積む。これは企業も同じで、立ち上げ期の勢いから、成熟、停滞と移り変わる。その中でどう変化していくのか。たまには、刺激も必要で専門外にも手を出し

          堂場瞬一著 チェンジ 警視庁犯罪被害者支援課8 (講談社文庫)

          濱嘉之著:院内刑事 シャドウ・ペイシェンツ (講談社文庫)

          濱さんの新作 コロナ禍での本シリーズでの二作目 多くが、コロナをどうシリーズに反映させるかで試行錯誤している中で、フィクションでありながら、リアルとシンクロしていると思わせてしまうほどの臨場感ある作品になっている。 濱作品に触れると、日常に対しての危機感というか、より複雑で深く沈んでいく犯罪の有り様を知れる。この複雑さや深さを小説にするのは非常に難易度の高いことだが、それは、流石としか言えない。日常生活と紙一重にある犯罪。紙一重ではあるが、その温度差は拡がるばかり。触れないこ

          濱嘉之著:院内刑事 シャドウ・ペイシェンツ (講談社文庫)

          「アウト&アウト」木内一裕著 講談社

          ここ最近、警察小説を読みたいという欲求がなくなっている。仕事で考えなくてはいけないことが多く、余裕がないということもあるが、心理的な変化もあるのかなとも思う。ただ、警察小説も難しいのかなと。犯罪規模も、グローバルになり、単純に、チャイナマフィアがということでは目新しさもなく、様々な地域、人種が絡み合う状況であり、描くには複雑過ぎて、状況、背景説明に大部分を取られてしまうことも。国内にしても、一時、半グレがネタとしてよく取り上げられたが、それさえ、より深く潜った結果、小説として

          「アウト&アウト」木内一裕著 講談社

          今野敏著「任侠浴場」中公文庫

          本シリーズ ここまでくるとお決まりの時代劇シリーズになっている気もする。展開も結末も全て予想が付く。気軽に読めるおやつ的な作品。おやつというよりは、瓶に入ったラムネか。正味、1時間くらいで読んだ。単行本となって購入。これが、ハードカバーの値段だと、流石に手が出ないなと思う内容。古き良き義理人情の世界。残すべき心と思いつつも、何か教科書的なフォーマット感がある。本当に、何から何まで想定通りということが、安心感というか、定番の良さと取るか。

          今野敏著「任侠浴場」中公文庫

          吉川英梨著「月下蝋人 新東京水上警察 」講談社文庫

          最高だった。 吉川氏、恐るべし。 このシリーズは最初から読んでいた。水上警察という新しいジャンルだなというくらいで、ここ最近は、あまり新作が出てもすぐには購入しなかった。そんなこんなで久々に読んだ最新シリーズ。 読むのが辛い内容ではあるが、圧倒的に引き込まれる。警察小説としてのクオリティもめちゃくちゃ高い。事件の必然性、人間の闇、狂気を描きつつ、それを解決に向かうまでの過程も細部まで丁寧。そして何より、人間ドラマとしてのクオリティ。警察小説と人間ドラマがしっかりと共存している

          吉川英梨著「月下蝋人 新東京水上警察 」講談社文庫

          「クロウ・ブレイン」 東一眞 宝島社文庫

          初めて読む作者の作品。 世界的な人口増による資源の枯渇がベースとなり、それを憂う研究者たちが起こそうと画策するバイオテロがテーマ。それを、新聞記者である主人公が取材を起点に事件解決にまで導く物語。 ウイルスの媒介をカラスにするところは、面白いと思った。公園で、本作を読んでいるときに、カラスが近寄ってきた時は少しドキッとしたりもした。カラスの種類や脳の特性など、勉強になることも多い。また、テーマも資源の枯渇とタイムリーであり、それを憂うことの犯罪というのはある種リアリティーもあ

          「クロウ・ブレイン」 東一眞 宝島社文庫

          鈴峯紅也著 警視庁特別捜査係 サン&ムーン (小学館文庫)

          なぜ、いまこのタイミングでこの作品なのか。 JKQシリーズのファンとしては、そろそろQシリーズの第三弾が読みたかったりするが。「父と子」というテーマは、鈴峯氏の作品においては、一つのキーワードかも知れない。不器用だけど、真っ直ぐで、根っからの刑事である父。真っ直ぐさを受け継ぎつつ、優秀な母の血も引き継く息子。ある種、爽やかさを感じる。Kシリーズの東堂親子の物語がある中で、敢えて、新たなシリーズで、似ているとも捉えられる親子を描くのか。という疑問もある。確かに、東堂父が生きてい

          鈴峯紅也著 警視庁特別捜査係 サン&ムーン (小学館文庫)

          堂場瞬一 『時効の果て 警視庁追跡捜査係』ハルキ文庫

          ずっと読んでいるシリーズ。未解決のまま眠ってしまっている事件にフォーカスし、解決に導くストーリー。西川・沖田のタイプの異なる2人の刑事が主人公。今回は、西川がメインとなった回であり、今まで、二人のやり取りの中で、事件解決まで進んでいくというリズムとは異なる展開となった。読んでみて、このシリーズの終着点が見えなくなったというか、小説という枠を越え、西川・沖田の刑事としての日常を見ている気になった。警察小説としての面白さにもなる、事件の質や解決に至るまでのストーリー、シリーズだか

          堂場瞬一 『時効の果て 警視庁追跡捜査係』ハルキ文庫

          警視庁一課八係 警部補・原麻希「イエロー・エンペラー」吉川英梨 宝島社

          原麻希シリーズ いよいよ、警察小説の域を超えた気がする。シリーズを重ねると登場人物も人生を重ねる。警察小説だからこそ、重ねる人生は凄惨さが増す。はじめは、その凄惨さである事件にフォーカスされるが、次第に、凄惨さに立ち向かう登場人物たちにフォーカスが移る。主人公の強さと対照的な存在が堕ちていく姿とその周辺の人たち。シリーズを重ねるためには、主人公を逞しく、その分、脆さを周りに転嫁していかなくてはという部分もある。その転嫁にエグさを感じる本作だった。ここから、どう続くのか、何をも

          警視庁一課八係 警部補・原麻希「イエロー・エンペラー」吉川英梨 宝島社

          警視庁公安部 片野坂彰 紅旗の陰謀 濱 嘉之

           ここ最近、警察小説を読もうという気がなかなか起きないでいた。読みはするも、世界に入り込めないことも。現実世界がコロナにより、ある種、小説の世界のような空気感だからか。日常における刺激が警察小説だったのが、違和感のある日常に、より異質な刺激を求めなくなっているのかもしれない。そんな中、この人の作品は、新作が出れば必ず読む。小説を愉しむのはもちろんだが、世の中を知るというか、リアルとリンクする事件の背景を把握するために読んでいる面もある。中国、北朝鮮、トルコなど、ニュースで流れ

          警視庁公安部 片野坂彰 紅旗の陰謀 濱 嘉之

          『ブラックツイン』組織犯罪対策部特攻班 沢里裕二 双葉社

          コロナにより今までとは違う年末年始を過ごしながらの2021年最初の警察小説。より混沌とする日常が想像される中で、警察小説との向き合いも変わってくるのかなと考えたりもする。業務に忙殺され、肉体的にも、精神的にも追い詰められてくると無性に警察小説を読みたくなる。疲れてるとジャンクフードを食べたくなるが如く。しかし、いまは、忙殺されるほどの量がない。ただ、仕事を生み出さなければならない状況であり、急激な変化にどう対応し、生き残るかを考えなくてはという精神的な焦りがある状態である。そ

          『ブラックツイン』組織犯罪対策部特攻班 沢里裕二 双葉社