「半導体」という視点で、世界と歴史を眺めてみる
*2023/8/1作成
株トレで、どんな業界の株がいいのかしら?と考えてまして。
今は、AI医療・ロボテクス関連とか金・石油関連と並んで、半導体がいいなあと思ったので。
最近は「半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防」という本を読んでいるのですが。
この本がめっちゃ、面白い♪
まあまあ分厚い本で、4~5日かかって、まだ40%くらいしか進んでいないのですが。
まず、「トランジスタ」とか、「チップ」とか、「DRAM」とか、「マイクロプロセッサ」とか。
聞いたことはあるけど意味が分かってない言葉を説明してくれます。
テキサス・インスツルメンツとか、インテルとか、東芝・日立・NEC・富士通とか、サムスンとか、ASMLとか、TSMCとか、米国国防総省とか。
名前だけは知ってる半導体業界のメインプレイヤーたちが、過去と現在、どんな役割を果たしてきた/いるのか?
半導体製造のプロセスはどんな風に専業化されていて、なぜそうなったのか?なども教えてくれていて。
当時はフレーズしか知らなかった「日米半導体摩擦」とか「半導体の廉価販売」について、その意味と背景とか。
昔は大きなシェアを握っていた日本の半導体メーカーが、どんな過程で衰退していくのか?させられていくのか?などを理解することができます。
ぼくが、この本が特に面白い、と思う理由は2つあって。
第1に、半導体の開発やプラニング、会社・組織に関わった人物の様子が、リアルにほぼノンフィクションとして描写されていて。
その時代、その場所で個別に存在する各人の思惑や行動や、それらとは無関係に起こる出来事等が、絡み合いながら、時代の流れを形作っていく様が。
大河ドラマのような壮大なストーリー性があって、読みごたえがあるところが面白いなと。
例えるなら、日本人が三国志とか、戦国時代や幕末・明治維新の頃の歴史小説を読んで面白い的な。
第2に、ぼくらの日常生活でも最先端分野でも、広く使われている半導体という視点で世界と歴史を眺めてみることによって。
実は、半導体をめぐる覇権争いが、世界の重大な歴史を作ってきた、という視点を持つことができる。
そして、今ぼくらがある状況は、半導体事情によって決められていた部分があるのかも?と解釈することもできます。
だから、台湾のTSMC→米中冷戦→経済圏の二極分化、に象徴されるように。これからの日本や世界の将来についても、半導体という観点を持つことによって、いくつかのシナリオとその対応を準備することができる、というのも面白いなと。
半導体の歴史ストーリーについては、トランジスタの開発から始まる、半導体メーカーの創業者・経営者や国防幹部、大学教授、ソ連スパイなどの各登場人物のドラマが。
ぼく的には、ウォルター・アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ1・2」と同じくらいにエキサイティングだったのだけれども。
なによりも圧巻だったのは、「ソ連崩壊のきっかけは半導体だったのか?」と思えるくらいの、半導体から見た歴史解釈の視点でした。
それは大まかに言うと、
「米ソ冷戦時代は、ソ連の軍備は数量的にアメリカに勝っていた」
→「アメリカは、誘導ミサイルの的中率など、質的に軍備を向上させるべく、半導体業界を育成した」
→「ソ連には技術力も生産能力もなく、スパイ行為によって、アメリカの半導体をコピーしたが、5年遅れの製品では急成長する半導体業界では致命的であり」
→「核弾頭倉庫をピンポイントで狙えるアメリカを相手に、それができないソ連にとっては、もはや核の抑止力は機能せず」
→「もはや逆転できない軍事力格差を前に、ゴルバチョフはレーガンとの核軍縮に進み、ベルリンの壁崩壊、ソ連崩壊に続く」
・・というものです。
まあ、半導体の事情がソ連崩壊のすべての理由ではないにしても。
このストーリーは、ぼくには衝撃的でしたし。
今まさに、アメリカが中国に対してやってることは、その焼き直しである、というのが見てとれます。
それに、高度な半導体技術の移転禁止の経済的な意義はもちろん、軍事的な安全保障上の重要性も理解できます。
その前提として、半導体の工程は、世界レベルで分業化しなければならないほどに複雑で、技術的な蓄積と量産によるコスト追求が求められる分野である、というのを理解しておくことは重要で。
その点、やはりコピーしかできない中国に対して、高度な分野の半導体の移転を禁止する方針は、かなり効果が高いのかな?と思えてきます。
当時のソ連とは違って、今の中国はEVや国民監視システムなど、それなりの技術はあるのでしょうが。
このままいくと、時間の経過とともに、米中の技術力の差が開いていくように思えます。
ゆえに、中国による台湾侵攻=TSMCの略奪は、米中双方にとって死活問題となる・・という言葉の重要性がより理解できます。
ついでに言うと、アメリカは戦後の日本を強くすることによって、東アジア地域での共産化を防ごうとしていて。
だから、半導体に限らず、家電や自動車等の技術を日本に開放し、移転させていたそうですが。
日本がアメリカの予想以上に成長してしまって、日米貿易摩擦に発展してしまい、彼らの逆鱗に触れて、もしくは恐怖感を煽ってしまって、反撃を食らった・・という解釈ができるようですし。
今、台湾や韓国、東南アジアに半導体製造や組み立ての拠点があるのも、昔、日本を育てようとしたのと同じ思惑があったのだ・・と言われれば、合点が行きます。
(バブル崩壊というのも、アメリカ側に仕組まれていたのかもしれませんね・・)
・・長々と書きましたが。
自分の知識欲が満たされていくのが、うれしくてしょうがなくて。
こらえきれずに、文字にしちゃいました。
若かった頃と違って、今のぼくは、本を読む集中力は、せいぜい1~2時間しか続かないのですが。
いつでも好きなときに本を読める生活に感謝しつつ、ぼちぼち読み進めたいなあと思います。
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