「気候変動と持続可能な食料システム」 ③持続可能な食料システムと国連食料システムサミット
前回は「食料システムと気候変動」について触れましたが、今回はそれに関連して「持続可能な食料システムと国連食料システムサミット」について考えてみたいと思います。
気候変動が引き起こす大規模な自然災害や地球温暖化などの原因によって食料システムの混乱が続くなか、将来にわたって食料の安定供給を図るには、健康的な食生活や持続的な生産・消費の活性化、ESG投資(環境、社会、企業統治の3つの観点に配慮した経営を行う企業に投資すること)市場の拡大などを含む、持続可能な食料システムを構築する必要があります。これまでの経済優先で環境負荷を軽視した食料システムを持続可能なものへと転換するため、2021年9月には国連食料システムサミット(以下、UNFSS)が開催されました。UNFSSでは、持続可能な食料システムへの変革を起こすには、政府、NGOや個人も、みな同列で解決策を出しあう必要があるとの着想により、1. 質(栄養)・量(供給)両面にわたる食料安全保障、2. 食料消費の持続可能性、3. 環境に調和した農林水産業の推進、4. 農山漁村地域の収入確保、5. 食料システムの強靱(きょうじん)化の5つを議題とし、環境問題や栄養、イノベーションの重要性などの幅広い観点から議論されました。実は、この後の同年12月に東京栄養サミットが開催されています。
2023年には、2021年に開催されたUNFSSのフォローアップとして、イタリア政府により「UN Food Systems Summit +2 Stocktaking Moment(UNFSS+2)」が開催されました。UNFSS+2には、182カ国からの使節団、21人の世界首脳、126人の閣僚、225の非国家主体(Non-State Actors:NSAs)および900人近い国連システム代表を含む、計3300人以上が参加し、食料システムの変革を加速させるため、以下の「Call to Action」(行動喚起)を発表しました。
【Call to Action 】
① 食料システム戦略を国家政策に組み込むこと
(持続可能な発展、生活、栄養と健康、経済成長、気候変動対策、自然保護、収穫後の損失削減のために、誰一人取り残さないことを目指す)
② 社会全体からのアプローチを可能にする食料システムのガバナンスを確立すること
(短期と長期の目標を組み合わせ、すべてのセクターとステークホルダーを巻き込む体制を作る)
③ 研究、データ、イノベーション、技術能力への投資を強化すること(科学、経験、専門知識とのつながりを強化しながら推進する)
④ 企業の参画を促進し、持続可能な食料システムを形成するための連携を拡大すること
(食料システムの中心的存在である企業に対し、持続可能性を高める責任メカニズムの確立と強化を求める)
⑤ 参加型にすること
(女性、農民、若者、先住民族など社会から疎外されたグループの全面的な参加を含める)
⑥ 食料システム変革のために、ドナーや国際機関と協力して資金を確保すること
(短期・長期の低金利融資、投資、予算支援、債務再編へのアクセスを確保する)
以上、持続可能な食料システムのための国際社会の取り組みについて見てきました。次回は、日本の取り組みについても振り返ります。
(引用元)
UNFSSウェブサイト(Food Systems Summit | United Nations)
農林水産省ウェブサイト(国連食料システムサミットの概要(2021年9月):農林水産省 (maff.go.jp))
UNFSS+2 ウェブサイト(UNFSS +2 Stocktaking | UN Food Systems Coordination Hub )(unfoodsystemshub.org)