「気候変動と持続可能な食料システム」② 食料システムと気候変動
前回は「世界食料デー」についてお伝えしましたが、今回はそれに関連して「食料システムと気候変動」について考えてみたいと思います。
食料システムとは、食料を生産・加工し、消費者に届けるためのネットワークのことで、私たちがどのように食べ物を生産、輸送、貯蔵、加工、小売、消費しているかという広範なものです。「フードチェーン」や「サプライチェーン」との違いは、それらが川上の生産現場から消費の場面に向けた直線的な物流をイメージさせるのに対し、「食料システム」は、SDGsの三つの柱である経済、社会、環境の持続性のために、関連する人やモノをすべて包含する考え方であることです。
世界の7億強もの人々が飢餓に苦しんでいる現実は、この食料システムが十分に機能していないことを意味します。また、食料システムの欠陥や崩壊は、それらによって、種や肥料、飼料などの投入財や食料の価格が高騰し、小規模農家が十分な利益を得られなくなったり、貧困層が食料を購入できなくなったりするなど、世帯レベルでの食料安全保障に影響を与えます。さらに、異常気象による農作物の不作など、食料システムは気候変動の影響を含む災害や危機に対してとても脆弱です。他方、現在の食料システム自体が、汚染を引き起こし、土壌、水、空気を劣化させ、温室効果ガスの排出によって、気候変動を深刻化させてもいます。例えば、牛などの反すう動物によるメタン排出や、アマゾンなどにおける牧畜や飼料作物栽培のための熱帯雨林の伐採は、地球温暖化を加速させていると言われます。また、オックスフォード大学が運営する「Our World in Data」という組織によると、食料の生産・加工・流通・調理・消費など食に関わるすべての活動を含む食料システムは、世界で排出される人為的な温室効果ガスのうち、実に21〜37%を占めています。
このように食料システムと気候変動は密接に関連しているのです。次回の記事では、その食料システムについての国際社会の取り組みを見ていきたいと思います。
(引用元)
独立行政法人 農畜産業振興機構(国連食料システムサミットの概要~持続可能な食料システムへの変革~|農畜産業振興機構 (alic.go.jp))
Our World in Dataウェブサイト(Environmental Impacts of Food Production - Our World in Data)