【詩】おたより

昼下がりの喫茶店で
アメリカンコーヒーを啜る

流れてくるBGMに
耳を傾けていたとき
突然の素敵なおたよりを受け取った

それは
テクラ・バダジェフスカの
叶えられた祈りであった

あまりにも有名な同女史の名曲
乙女の祈り

その続きがあることを知らなかった

乙女が祈る先に何があるのか？
そしてその祈りは叶ったのか？
あの乙女のその後が気になっていた

乙女の祈りの
主旋律の高まる緊張感は
きっと恋のそれだ

乙女の心臓の鼓音と思われるあの副旋律は
胸に手を当て
自身を落ち着かせている
そんな様子が浮かんでくる
青さ　若々しさともいうべきか

一方で
叶えられた祈りは

静謐な夜明けの太陽
平穏な一日の始まりを予感させる
ありふれた日々の幸福
そして悦び

乙女から落ち着いた大人の女性へと
変貌を遂げた
どこかそんな印象を受けた

アメリカンコーヒーを片手に
僕は無形のおたよりを
ひとしきり読み終えた

そうか
あの恋はうまくいったのか　

アメリカンコーヒーをそっと置き
あとに残ったのは
ほのかな甘い香りと
乙女の面影を残したひとりの女性の
微笑みであった