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ヒクソン・グレイシー自伝

『ヒクソン・グレイシー自伝』ヒクソン・グレイシー 著 2022年2月刊 亜紀書房

ヒクソン・グレイシーは自分にとって特別な存在です。

彼が無敗のまま、リングを去ってから、総合格闘技の試合を見ることはほとんどなくなりました。

10代の時にその存在を知り、自分自身も格闘技を始め、これまで空手、柔術、総合格闘技、伝統武術をかじってきましたが、ヒクソンの存在を忘れたことはなく、憧憬の対象でした。

競技を引退し、一線を退いた今でも尊敬、憧れの存在であり、現在も稽古を続けている理由の一つとして、ヒクソンに少しでも近づけるようにという思いがあるからでもあります。

ヒクソン関連の出版物はほぼ、目を通していたのですが、本書、知らなかったエピソードがいくつもあり、改めてヒクソン・グレイシーという男がどのような考え方をしてきたのか、どのように生きてきたのかに思いを馳せることが出来ました。

本書では2歳の頃のまだ幼い時の様子から、白髪が混じり、皺の刻まれた60歳を越えたヒクソンの姿まで多数の写真が掲載されておりました。

しかし、ヒクソン、本当にモノクロームの写真がよく似合います!

本書の表紙には、若かりし頃のヒクソンが微笑んでいるモノクロームの写真が使われているのですが、ヒクソンの持つ暗さ、陰影を見事に引き出していました。

ヒクソンはブラジルに生まれ育ち、サーフィンもたしなむ、ナイスガイなのですが、自分にとって、ある種、人を拒絶するような暗さ、影の部分を強烈に感じさせるのです。

この暗さ、深さと言い換えてもよいかと思うのですが、400戦無敗を謳われ、格闘技界に伝説を残したスターの抱える影と闇はどれほど深いのだろうと写真を眺めるにつけて思うのです。

その一端が本書では明かされているのですが、その闇に飲み込まれず、しっかりと手綱を握り、コントロールしてきた心の強さこそ、ヒクソンの強さであり、魅力の一つでもあります。

若いころは相当なやんちゃで、13歳で学校をドロップアウトし、ストリートギャング団に身を投じ、ストリートファイトはもちろん、マリファナ、コカイン等の薬物の使用もあったそうです。

また、産みの母親と育ての母親が異なっていた事。家族の死、兄弟や父親との確執、和解まで、知らざれるダークサイドが赤裸々に語られておりました。

なお、バイク事故で亡くなったと報道のあった長男のホクソン・グレイシーの死の真相にも触れられており、衝撃でもありました。

他、「日本は私の人生の一部だった」と本人の弁もある通り、日本への思い、訪日の際のエピソードに少なくないページがさかれており、日本人として嬉しくもありました。

以下、目次となりますが、人の持つ強さにあこがれる方、強さを手にしたい方、強く在りたい方、本書、そのヒントが散りばめられております。

1……グレイシー一族
2……グレイシー一家に育つ
3……捕食者と獲物
4……不動の心
5……切磋琢磨
6……渡米
7……日出ずる国
8……パラダイムシフト
9……荒廃
10……再生

老いてなお、ヒクソン、ますます魅力的でした!

「意志は使えば使うほど強くなる」ヒクソン・グレイシー










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