死ぬことと見つけたり
隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」が好きだ。葉隠をモチーフに隆慶一郎が小説にした未完の傑作だが、これ程、死を清々しく描いた小説を俺は知らない。
主人公の斎藤杢之助が最高だ。死人として生き、死人として暮らし、この国は死者のものであると喝破する。やることなすことが苛烈で美しいのだ。
作中には著者の戦時中のエピソードからアルチュール・ランボーの地獄の季節まで登場し、それが葉隠と見事に調和している。
斎藤杢之助のように世界を見れたならと思い、毎朝、死人になる為の鍛錬をしていた事もあった。
死と生きることによって、人は自由を得ることがあることも知った貴重な物語だった。
子供らにもいつかこの本を読んでもらい、死と共に己の生を生ききって欲しい。そして、俺もしっかり生ききって、いつかあの世で隆先生や斎藤杢之助たちと酒を酌み交わしてみたい。
一葉の風に抗う烈しさよ さてもこの世は美しかりけり
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人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。