檻ノ中のソリスト
『檻ノ中のソリスト』森屋シロ 2021年6月刊 集英社
犯罪者が収容される街・監獄街で生きる姉弟(きょうだい)の物語です。
主人公である姉のクロエは両親なき後、まだ赤子の弟と二人で健気に暮らしているのですが、突然の別れが二人を襲い、クロエは弟を一人、残したまま街を去ることになります。
それから、数年後、生き別れた弟を探し出すべく、再び、犯罪者の溢れる監獄街へクロエが舞い戻ってくるというストーリーなのですが、この物語、切なく、悲しく、美しく、そして、面白かったです。
2018年9月より連載がスタートし、2021年6月に完結したのですが、この連載は「少年ジャンプ+(プラス)」という漫画アプリで毎週、無料で連載しておりました。
少年ジャンプといえば、総発行部数が4億8千万部を超える大ヒット作「ワンピース」をはじめ、最近では「鬼滅の刃」等、キラ星の如く、ヒット作を連発している少年漫画の王者ですが、最近では雑誌だけでなく、アプリ、WEB配信にも力をいており、本書、『檻ノ中のソリスト』もその中の一つでした。
様々な出版社が漫画の電子化、WEB配信に力を入れ始めた昨今ですが、実際に配信、掲載されている作品は玉石混合で、名作であっても過去のヒット作をただ、そのまま電子化しましたというだけのものであったり、仮に新作であってもいま一つの内容のものも多い中、この『檻ノ中のソリスト』は別格でした。
連載一話目から心を揺さぶられ、家族全員に読ませた次第です。
娘は特にハマリ、一緒に単行本になる事を心待ちにしておりました。
そして、とうとう先月、単行本が発売されたのです。
連載は終了してしまいましたが、ここ数年、読んだ漫画の中で出色の作品であったことは間違いありません(20代の時分、漫画喫茶でバイトをし、そこにあった数万冊の蔵書を読み尽くした自分だからこそ、断言します!)
また、ストーリーだけでなく、作者の画力も飛びぬけていて、連載中、キャラクターたちの表現がどんどん進化していくのを見るのも楽しみの一つでした。
ちなみにソリストとは、バレエで、一人で踊る主役級の踊り手や音楽の独奏者のことを指すとのこたですが、主人公であるクロエはダンサーでもなければ、ミュージシャンでもありません。
闇の中、踊る様に、奏でる様にナイフを繰る刺殺者がクロエその人なのです。
『檻ノ中のソリスト』はジャンプの王道バトル漫画でもあったのです。
昨年、大ヒットした『鬼滅の刃』も素晴らしかったのですが、『檻ノ中のソリスト』も負けてはおりません。
是非、この作品を多くの人に知って頂きたく紹介した次第です。
なお、この主人公のクロエですが、我々、中年世代には往年の名作『銀河鉄道999』のメーテルの面影を見るのですが、気のせいでしょうか?
第一話であれば、現在もWEBにて無料でご覧いただける様です。
気に入った方は単行本にて是非、続きをお読みください!
「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない」松本零士(漫画家)
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