
和煦峻烈
仕事や旅行で京都に足を運んだことは幾度となくあるが、次回、訪れた際、改めて行ってみたい場所がある。
蓮華王院本堂。通称、三十三間堂だ。
江戸時代、この三十三間堂では通し矢と呼ばれる各藩の威信を賭けた競技が繰り広げられ、三十三間(約120m)先の的を射通す事に弓の名手たちが鎬を削って挑んだという。
穏やかな春の日に、一昼夜かけ、総矢数13,053本を放ち、8,133本を的に当てたという記録が残っているが、これはチームの記録ではなく、和佐大八郎と呼ばれる紀州藩士個人が打ち立てた記録であるから驚く他にない。
120m先の的を射続ける技量、集中力もさることながら丸一日、弓矢を引き続ける持久力も驚異的だ。
実際、弓勢が弱く、放物線を描き、堂の屋根にぶつかる矢も少なくなかったという。
その場を訪ね、今なお、堂に残る矢跡を一度目にしたいと思った次第である。
梓弓春のうららに響かしむ 其の猛き音は永遠に残らん
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