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あなたのこども、そのままだと近視になります。

『あなたのこども、そのままだと近視になります。』坪田一男 2017年2月刊 ディスカヴァー携書

娘が小学校の身体検査の視力測定において近視の指摘を受けたことも有り、本書を手に取りました。

著者は慶応義塾大学医学部眼科教授であり、本書、幾つものデータやエビデンスに基づき、近視に関して世間一般で流布されている通説を本書では検証しておりました。

そんなわけで、本書のタイトルは読者の不安を煽るようで好みではありませんでしたが、内容には好感を持てました。

私自身、視力が0.1に満たない超ド近眼で、家内も眼鏡をかけており、娘の近視もある程度、予感はしておりましたが、近年、世界中で爆発的に近視の人が増えているとのことでした。

特にその勢いが顕著なのは日本をはじめとする東アジアの国々で1950年から約60年間で20歳以下の近視の人が約4倍も増加しているそうです。その増え方はパンデミック並みと評され、WHO(世界保健機構)が「ハザードレベル」と明言したとのことでした。

また、多くの人が大人になると近視の進行は止まるとされているのですが、最近では成人しても近視の進行が止まらない人が増加中でもあるそうです。(私もこのパターンでスマートフォンを使用してからその傾向が著しいです)

実際に日本における失明の原因の第5位に強度近視がランクインしており、我が身を顧み、戦々恐々となりました。

なお、視力回復に関する書籍は今まで、数十冊は読んできたのですが、どれもエビデンスに乏しく、著者の持論やメソッドを展開するものがほとんどで、ピンとくるものはありませんでした。

本書は具体的な視力回復法が詳細に記されたものではありませんでしたが、そもそも近視とは何か?からはじまり、近視の原因とその予防法について多くのページが割かれており、大変、参考となりました。

本書の中で一番の収穫は数ある「近視のエビデンス」の中でも唯一確かだとされているのが「外で遊ぶと近視になりにくい」というものでした。

これは仮説レベルで多くの研究者が感じていたことだそうですが、研究をすすめ、データの蓄積から、紫外線と可視光の中間にあたる波長の「バイオレットライト」の摂取が近視の抑制につながることがわかったそうです。

外遊びをしている子供たちはこの「バイオレットライト」を浴びることが屋内で遊ぶ子供たちよりも当然多く、近視になりにくいとのことでした。

また、中国の近視研究では裕福な層には近視が多く、貧困層には近視が少ないというデータもあるそうです。富裕層が住む家屋の窓ガラスと貧困層の住む家の窓ガラスとでは仕様が異なり、UVカットされている富裕層の家屋の窓ガラスはバイオレットライトがカットされている可能性があるということです。

なお、現在、中国では近視の問題は深刻で、国を挙げて予算を投じ、近視を研究する拠点を国内にいくつも設けているそうです。

本書、子供だけでなく、現在、近視がいまもなお、進んでいる中年の自分にとっても今後の読書生活を続けるうえで、有用な内容でした。

外遊びの重要さもあらためて身に沁み入りました。

視力に不安のある方、どうぞお手に取ってみてください。

「人間は、自然から遠ざかるほど、病気に近づく」ヒポクラテス







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