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人生邂逅 ・まなび編 ◆仏教読書会から -36
”正法眼蔵随聞記” より 道元禅師と営業日和
道元禅師の仏道に励むものの心得を説いておられる中に、思わず過去の経験を思い起こす説話がありましたので、取り上げてみます。
3章8節にあります。
「仏法者とか道心者とかを表看板にしている人の中にも、・・・わけもなくみっともないふるまいをし、あるいはまたこの世に執着しないといって、雨降りに支度もせず、ぬれながら歩いたりするのは、内心のためにも、表面の行いのためにも、ともに無益であるのに、・・・。」
今からすでに35年ほど前になりますが
当時、希望が叶い、開発部署から営業に異動したころで、まだ世に出たばかりのMO(光磁気ディスク)の販売を担当していました。
そこで、新米営業のわたしが先輩から「営業日和」の話を聞き、それを実践したのがまさに、雨降りにぬれながらでした。
実際には、大雪の日にぬれながらですが。
そもそも、「営業日和」とは、荒天のときこそ客先に足を運べ! という教えです。
こんな日によくぞ、わざわざ来てくれましたね。 と、お客様の情に訴えることで、商談が優位に進む。という論法です。
丁度その日は、ソニーのワークステーション NEWS の販売代理店とMOメディアの販売契約を結んで頂く約束の日でした。
当時、NEWSはかなり評価が高く、その目玉となる外部記録デバイスとして4.25インチMOドライブに白羽の矢が立ち、鮮烈デビューしたところでした
ところが、タイミング悪く、発売はしたものの市場ニーズの読み違いでディスクの製造キャパが足りず、供給が追いつかない状況が続いていた時期で、
「ドライブ3台にメディア1枚をお付けします」と、冗談のような話がまことしやかにささやかれるほどでした。
それでも契約だけはお願いするという実に虫のいい話。
これは、新米営業にとってはかなり過酷な試練でした。
という状況下にあって、この日の天気は ”千載一遇” のチャンス。
大雪が降り積もるなか、革靴がすっぽりと覆われる雪道を後輩と二人で客先に出向き、なんとか無事に契約書に捺印を頂きました。
たしか、女性の社長さんだったように記憶しています。
まさに、ご利益あり。
が、道元さんに言わせるとそのようなものはご利益ではない。
下心ありありの行為で得られたものなど、ご利益とは言えないのでしょう。
ちなみに、この読書会にご一緒しているかたから、「わたしは以前、2月にカナダの客先を訪問し商談を成功させました」とのコメントを頂きました。
「営業日和」は国境を越えて存在したようです。