映画『ラストマイル』を観て過去を思い出した話。※ネタバレ有

かなり話題だった『ラストマイル』観てきました。
シェアードユニバースということで、『アンナチュラル』『MIU404』も大好きな作品なので、楽しみすぎて緊張感がヤバかったです。

内容は色んな登場人物にクローズアップして話せそうなぐらい要素が多いので話しきれないし咀嚼しきれてないのですが、一人の人物に自分を重ねて考え始めてから頭から離れなくなってしまったので、一度自分の話として吐き出したいと思います。

※以下、映画のネタバレを含みます。
初見感想なので、細かい部分は記憶違いなところもあると思います。


今一番 印象に残っている人物が山﨑佑(中村倫也さん)です。(まず中村倫也さんの出演が発表されてなかったのでサプライズでした)

不謹慎だし共感は得られないと思いますが、
山﨑佑が飛び降りるシーン、私には【ヒーロー】のようにカッコ良く見えました。

飛び降りるシーン、本当にただ飛び降り自殺する気だったら、あんなに助走つけなくても、柵に乗っかって頭から落ちるような描写が作品では多い気がします。
ですが、飛び降りる前に山﨑は少し笑ってて、勢いつけてピョーンって飛び出した感じでした。
山﨑は自殺したかったんじゃない、ロッカーの方程式通りに「ベルトコンベアを止めること」が目的だったんだなと思います。
もう、ベルトコンベアを止めることがみんなの為になるって信じて止まないって感じがしました。
その瞬間は自分のこと【ヒーロー】だと思えたんじゃないでしょうか。それが最適解だ!って。
辛いから、今の現実から逃げたいから自殺っていうよりも、どうやったら会社に迷惑がかかるか、会社が回らなくなるか、そこに自分への被害があろうとそんなこと二の次なんです。

私の話をすると、
前職で会社への不満とストレスが溜まりに溜まる日々で、冷静な判断も出来ないしメンタルもボロボロになってって、明日が来ると会社に行かないといけないから怖すぎて寝れなくなっていって、日が昇っていくことを恨んで、出勤する電車内で毎日泣いてて、どうすれば会社に迷惑かけられるかな〜とか、リアルに爆発してくれればいいのにって真剣に考えてる日々でした。
でも会社への不満は沢山の社員が抱えていたのも事実だったので、みんなの為に私が何とかしてあげたい!私がこの会社を変えてやる!ぐらい本気で思ってました。
平社員が何にも出来ない事ぐらい冷静に考えればすぐ分かるんですが、あの頃の私は本気で革命起こす事が出来るし、それが社員の為になると信じて奮闘していました。

山﨑にそんな自分を重ねてしまって、ものすごく恐怖でした。
自分の行動でみんなの悩みを解決できるって思ったらどんなリスクがあろうとウキウキなんですよ。そんな気持ちがあの山﨑の"大ジャンプ"に見えてしまって、私には輝くヒーローだと思えてしまいました。ライトアップも綺麗でしたし。
言わずもがな、そんな冷静な判断が出来なくなっているほど限界が近かったということなんですが。

血を流しながら再び動き出したベルトコンベアを眺めてるシーンが映画で一番怖かったです。周りの皆もあんまり騒いでないというか「キャー‼︎」みたいな悲鳴とか無いし(記憶違いかな)、「大丈夫か⁈」みたいに焦ってるわけでもなく淡々と端に寄せられる、それも余計怖くて。みんなの為だ!と勇気を出して飛び出したのに、自分一人の無力さも感じるし、案外周りに響いてなかったりする虚しさが酷い。あの時の絶望感ってなんだ、何にも言えなくなりますね。
私もたっくさん奮闘したけど結局会社が変わることなんてないんだって思い知らされました。あんだけみんなに感謝されると思ってやった行動が、虚しさだけ残されるんです。あー、だからみんな文句言いながらも諦めて働き続けてるんだ、ってやっと気付いて。


何かの大事件を起こす人って決して強いから大事件を起こせるわけじゃない。心の弱さがあるからそれが攻撃性になってしまうんですよね。よく言う、いじめられっ子をケアするよりいじめっ子のカウンセリングをするべきだっていうやつ。これは日本にももっと広まってほしいです。

山﨑の部屋が5年眠ったままでもそのままだったのは、筧まりかは山﨑が戻ってくることをずっと願ってたから、綺麗に保ってたのかなと思います。なのに筧は自らの死を持って罪を償う決断をしました。これも山﨑と同じ、自分の死よりも、世界への復讐?会社への損害?を佑の代わりにやるんだ!っていう使命感の方が強かったのかもしれないですね。それぐらい筧も正しい判断をできる状態じゃなくなっていったんでしょう……

最後、山﨑はやっぱり目を覚ますんでしょうか。目を覚ましたとしても現実は望んでたものにはなってないし(少しだけ進んだけど)、父親も恋人も、もう居ない。目を覚ますことが彼の為に良いことなのかって疑問もありますが、元々山﨑は死ぬことが目的ではないと思うので、目を覚まして、どうにもならない世界に絶望する前に、自分が息を吸える生き方を見つけてほしいです。大多数を助けるかもしれない行動で自分を壊してしまうことより、自分で自分を守ることの方が何倍も大事だから。

最後のエレナの決断は凄いなと思いました。
初めの頃は「私なら上手くやれる、大丈夫」って言い聞かせて対処していたエレナも、本当は眠れなくて休職したりする心の弱さを持っていて。
(これは忘れちゃったからXでポストされてる方のを見たんですが)五十嵐の「何が出来たって言うんだ」→「何も出来なかった」的なこと返してたらしくて、
「出来ないことは出来ないって認める」ことって弱いようでめっちゃ強いことだと私は思っています。
全ての責任を負って退職したエレナだけど、パトカーでぐっすり眠れるようになっていたので、あの会社で培ったモノとかプライドとか捨ててその場から離れたことが、あの時のエレナにとって正解でしかなかったんだろうなと思います。本当に眠れるようになって良かった。
『アンナチュラル』という作品でも「食べる」ってことを印象的に描かれてて、食べる=生きる為の行動だから凄い好きな演出でした。「眠ること」と「食べること」を印象的に描いてくれて、これからも「生きる」ことができるんだなって、本当に涙が出てくる……!

私も、結局メンタルが限界になって、仕事のことが帰宅後だろうが休日だろうが頭から離れない日々で、趣味も何も楽しめなくて、朝目が覚めても起き上がれなくて、正直この世から消える選択をする手前を経験したんですけど、退職してから仕事とプライベートのバランスが徐々に取れるようになって、今全力で趣味楽しめてるし、ご飯も美味しいです。
たまに、憧れて入社できた会社だったのに勿体無かったかなとか、あの時こうしていればとか、もっと上手くやれてたんじゃないかって後悔するのもゼロでは無かったりしますが、息が吸えるようになった今を思うと、絶対あの会社を離れる決断は自分にとって正解だったと思いますし、もう自分のこといじめるのはやめようって思えます。

映画の中には
なぜ死を選択することになったのか究明する人たちと、
最悪な状態になる前に間に合わせる人たちがいて、
野木亜紀子さんの作品は「生きてほしい」っていうメッセージを強く感じますよね。
「生きていれば勝つチャンスはある」って。

この作品、今まで苦しんだ経験がある人の中には、もう見るのも辛いってなる人もいるかもなってぐらいリアルな現実が描かれています。
一緒に観に行った友人が「この作品を観て、今も誰かを苦しめている元凶の人が何かに気付いて欲しいけど、苦しまずにあっけらかんとしてる人ってこういう作品に興味無いし観ないんだよ」って言ったのが真理すぎて一番怖かったです………

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