わたしのメモリアルコーナー ①家なき子
40、50は鼻垂れ小僧
60、70は働き盛り
90になって迎えがきたら
100まで待てと追い返せ。
渋沢栄一の言葉らしいが、わたしももうすぐ70歳。
人生100年時代とはいうものの、あと20年も生かせてもらえばわたしは最上級の本望だ。
振り返ってみると10年なんてあっという間だ。
あっアッといえば20年だから今から「わたしのメモリアルコーナー」をつくっておく。
幼いころの我が家は笑っちゃうほど貧しかった。
それがわかってきたのは小学校に入ってからだ。
事業家だったという祖父の急死で親父の人生は暗転した。
16歳の親父は東京の学校を中退して帰省。
家屋敷だけは残ったが借金のカタですべてを失って裸一貫からのスタートだったという。
母と一緒になってからもずいぶんと苦労したらしい。
そんな親父がわたしの誕生日に買ってくれた本が「家なき子」である。
なぜかこの本をいつもいつも読んでいた記憶がある。
なにしろ他におもちゃがあるわけでなし、他の友だちのようにグローブもバットもボールも無いから、これだけがわたしの宝物だったんだろう。
本のケースはボロボロだけど、どのページをめくっても破れていたり、イタズラ描きのひとつも見当たらない。
ひょっとしたらこの本だけが当時のわたしの友だちだったのかもしれない。
当時の記憶は曖昧だけど今日までこの本だけが大切に残されている。
この本のおかげでわたしの読書好きが始まった。