暗黙知の形式知化

日本電産後継者は吉本氏に続き、日産次期社長とまで言われていた関氏まで途中退任・・・カリスマ経営者から後継者へのバトンタッチはこうも難しいものなのかと。

日本電産永守氏だけではなく、ソフトバンク孫氏、FR柳井氏も後継者選びは苦戦しています。

その理由としては、単純に、
・後任に譲ったものの、創業者が自分と比べて物足りなく思う
・社長を譲ったあとも権限をもっている

ということだと思いますが、いちばん大きいのは”暗黙知の引継ぎ”にあるのではないかと思います。

10年くらい前になりますが、FR柳井氏と一橋大学野中名誉教授の対談を拝聴させていただいたことがあります。このときの衝撃がいまでも残っています。

柳井氏は野中教授に一切忖度せず、
「学者の書く本は難しくて読む気にならないんですよ。先生の本も悪いけど最初だけ読んでやめました。ビジネスは学問じゃなく実践からしか学べないんですよね。」
という趣旨の発言をしたところ、野中教授は、

「カリスマ経営者はご自身の素晴らしい”暗黙知”を”形式知”にしないから、事業承継に苦労するんですよね。だから代わりに学問がその役目を果たしているんです。」

と返されていました。
(たしか柳井氏は苦笑いされていたように思います)


私たちの組織レベルでも、後任は前任者と比較されます。

前任者が相当ダメな場合はともかく、優秀であった場合は後任者は気苦労までしょってしまいます。

自分が優秀な前任者の後任になった場合は、その人がいるうちに暗黙知を形式知化してもらうことが重要です。いわゆる「引継書」ですが、単なる業務の羅列ではなく、経験やノウハウまで記録したものを残してもらいたいものです。

事業の持続可能な成長は人材育成にありますが、さらに突っ込んで考えると、個人がもっている、あるいは組織に蓄積された”暗黙知”をいかに目に見える形にして蓄積していくかが大事だと、巷間の経営承継問題をみて改めて考えています。