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エム・エム・エス社長の”産業機械設計会社の一口メモ”

エム・エム・エス 社長の閑話休題 8月

産業機械設計会社の一口メモ

ひょっとしたら役立つかもしれない設計のノウハウをちょっと!
シリーズ第3弾
今回は前回の「材料強度」の続きで、
最もよく使用される鉄の
「種類と強度・変形と破壊」
についてのノウハウをちょっとだけ!

「鉄」・元素記号Fe・原子番号26

ですが・・・

鉄は、原子単体では強度あまり強くなくて、構造物として使用するには向いていないのです。
針金は簡単に手で曲がりますよね。
こんなイメージだと思ってください。

そこで、鉄と鉄の原子の間に鉄の原子より小さい他の分子を含ませて、鉄の原子間のずれを止めるような配列で固めた状態で使用することが多いのです。
この分子は炭素原子がよく使われるのですが、このような形で使用される鉄を「炭素鋼」と呼んでいます。
日常の中で目にする鉄はほとんどがこの炭素鋼でできています。


炭素は通常、0.25%程度の含有率のものが一般的によく使われていますが、この含有率が0.45%程度まで多くなると鉄はさらに強度が上がります。

また、炭素だけではなくモリブデン、クロムなどを使用したものは、モリブデン鋼とかクロムモリブデン鋼とか呼ばれ、非常に強度のある鉄として使用されます。
炭素とモリブデン、クロムの原子の大きさはそれぞれ異なります。
それが、鉄の原子の間にはまってずれにくくなり強度が上がるのです。


では、同じ炭素鋼でも焼入れという言葉を聞いたことはありませんか?
約1000℃まで加熱して水に浸けて急速冷却したものですが、これにより鉄原子の配列が変わるのです。
原子と原子の間の隙間に原子が嵌り更にずれにくくなるのです。

刀鍛治でよく目にする光景ですが、さらに熱い時によく鍛いていますよね。こうすることによりさらに原子配列が綺麗に並び固くなるのです。
工学的には体心立法格子と面心立方格子とかで呼ばれる分子構造の違いなのです。

ここまで、結晶構造の違いによる強度との関係を簡単に書いてきましたが、鉄の合金についてはこんな単純ではありません。
上記の格子構造だけではなく、含有する化合物
それらを含めた格子構造の違いなど多岐にわたって種類が存在します。
専門用語で言いますと
 オーステナイト
 フェライト
 マルテンサイト
 セメンタイト
もっと詳しく知りたい方は
金属の冶金に関する専門書をご覧ください。

あと、鉄の曲がりと変形・破壊について
わかりやすく、針金を例に説明します。
約1mmぐらいの細い針金だと簡単に手でまげられますよね。
そこで、何回も繰り返して曲げてみてください。
繰り返しているうちにある変化が見られるようになります。
曲げている部分が、だんだんと熱くなってきませんか?
手で触れないぐらい熱くなってきたら、その部分が固くなって簡単に、ちぎれてしまいます。
これは、曲げることにより分子構造が徐々にズレてきて分子が擦れることにより発熱します。
そのうち、格子構造そのものが変化して分子間隔が元にもどらなくなりいわゆる加工硬化を起こします。
そして硬化した部分は元の状態に戻らなくなり分子間が離れてしまい、切断されるのです。

また、ニュースで崩落した橋やビルなどの説明で疲労破壊という言葉を聞くと思いますが、この針金のような状態を考えてもらうとわかりやすいかもしれません。
(厳密に言うと破壊に至る経緯は少し違うのですが・・・)
何回も同じところに繰り返して荷重がかかり続けると疲労破壊を起こすのです。


最初のうちは、何事もないので大丈夫だと思っていてもいつかは破壊されてしまうかもしれないので注意が必要です。

とりあえず今回は、鉄の種類と強度及び変形と破壊について簡単に書いてみました。
尚、ここで図で示した分子構造はあくまでも分かりやすくしたイメージを表したもので実際の構造を忠実に図示したものではありませんので、ご了解ください。
詳しく知りたい方は、冶金の専門書をご覧ください。

今回のちょっと一休みはここまで!
次回の技術コーナーでは、「物を吊り上げる」についての設計ノウハウを考えています。

乞うご期待!


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