手紙
その人からの手紙は、いつも、陽の光に包まれている。
どんなに暗い部屋の片隅で開いても、便箋には太陽の光が差しているのだ。
お元気でしょうか。(変わらずに健やかな心のままでしょうか。そうであればもう話すこともないのですが、あなたとの大切な時間を思い出したのでペンを持ちました。)
宝の箱がある。幼い頃から数えて何代目か忘れしまったけれど、古い木の箱の中に手紙と日記と思い出の品を仕舞う。誰にも見せることはないけれど、その箱のことは少し自慢したくなる。
自分だけの感情を誰のものにもしたくない。でも時々手渡してみたくなる。どうして、なんてことはないんだよ、これは感情の入れ物から溢れて出てきたものだから。