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【第3回】「ロシア奏法」とは何か

#ロシア奏法 #ロシアピアニズム #ロシア楽派

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次にモスクワの4大流派とは何か。4大流派とは旧ソビエト時代モスクワ音楽院でのコンスタンティン・イグムノフ、ゲンリヒ・ネイガウス、アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル、サムイル・フェインベルクらの門下のことである。
まずは次の動画を見ていただきたい。
写っているのはイグムノフ、ゴリデンヴェイゼル、ダヴィッド・オイストラフ、オボーリン、ウラジミール・ソフロニフツキー、ギレリス、フリエール、フェインベルクである。

さて4大流派とされる人々は誰に師事していたのか。
ゲンリヒ・ネイガウスはブルーメンフェルトを伯父として持ち、イグムノフはニコライ・スヴェーレフやアレクサンドル・ジロティに師事、ゴリデンヴェイゼルはジロティやパーヴェル・パプストに師事、フェインベルクはゴリデンヴェイゼルに師事。

  • ネイガウスのスクリャービン3つの小品より

  • フェインベルクのスクリャービンピアノソナタ2番

また、サンクトペテルブルクのニコラーエワの流派も外せない。同姓のタチアーナ・ニコラーエワはゴリデンヴェイゼルの弟子で、ショスタコーヴィチに24の前奏曲とフーガを捧げられた名ピアニストなのだが、モスクワ音楽院より前に創設されたサンクトペテルブルク音楽院のレオニード・ニコラーエワは、スクリャービンの解釈で有名なヴラディーミル・ソフロニフツキーや、ブリューノ・モンサンジョンのリヒテルのドキュメンタリー「謎(エニグマ) - 甦るロシアの巨人」で「幻のピアニスト」として紹介されるマリア・ユーディナ、また近年作曲家として再評価され「ブーム」となりつつあるショスタコーヴィチを教えた。
イグムノフ、ネイガウス、ゴリデンヴェイゼルにニコラーエワを加えて、ロシア(ロシアピアニズム)の4大流派と呼ぶこともあるようである。

  • ユーディナのモーツァルトソナタ15番

  • リヒテルのドキュメンタリー

モスクワ音楽院とサンクトペテルブルク音楽院について簡単にまとめておこう。モスクワ音楽院は2人のルビンシテインの弟ニコライ・ルビンシテインによって創設された。その前に兄アントン・ルビンシテインがサンクトペテルブルク音楽院を創設した。モスクワ音楽院はチャイコフスキーが教鞭がとったことでも有名である。

チャイコフスキーが出てきたから簡単に紹介すると、ロシア音楽の伝統としては他にグリンカやロシア5人組(バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、ボロディン、リムスキー・コルサコフ)がいる。

モスクワのグネーシン特別音楽学校の伝統も無視できない。古くはマリア・グリンベルク等が教え、今では名教授タチアーナ・ゼリクマンやウラディミール・トロップが有名で、その音楽学校ではアンナ・カントールに師事したエフゲニー・キーシンやゼリクマンに師事したコンスタンティン・リフシッツが、モスクワ音楽院などの高等教育機関に進学することなしにメジャーデビューしているというのだから驚きだ。ちなみにリフシッツは卒業記念の演奏としてゴルドベルク変奏曲を演奏したと言われている。

  • グリンベルクのシューベルト即興曲集

  • キーシンのラフマニノフ前奏曲

  • リフシッツのデビューアルバム
    文献表にあるリフシッツのゴルドベルク再録音の解説を読めば分かるが、18歳頃の卒業記念のコンサートが収録されているのがこのCD。

  • タチアーナ・ゼリクマンのマスタークラス

参考文献

(アクセス日: 2025/1/14)

(アクセス日: 2025/1/17)

(アクセス日: 2025/1/17)

(アクセス日: 2025/1/14)

  • 大野眞嗣『「響き」に革命を起こすロシアピアニズム - 色彩あふれる演奏を目指して』

  • 真嶋雄大『ピアニストの系譜 - その血脈を追う』

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