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Mak! garc!aインタビュー 「ニッチ、フレッシュ、サイケデリック」
KKV Neighborhood #217 Interview - 2024.5.2
interview / text / edit:木村直大
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Mak! garc!a(以下Mak!)という切り絵作家がいる。今日日切り絵とは、実にニッチである。切り絵を使った映像作品や切り絵とOHPを組み合わせたVJも行っている。益々ニッチである。ニッチの3乗くらいである。考えてみたら、自分の人生で切り絵を観たり、ましてや切ったりしたことある経験なんて数えるほどしかない。いや、切ったことなんてのはそもそもない。とにかく、それでもMak!の作品を観るとニッチどころか圧倒的な懐かしさや郷愁を感じてしまうのはこれ如何に。某日、三軒茶屋のコメダで話を聞いた。
"文字のフォントを紙でカットして作ったら、めちゃくちゃかわいくなった。「これだ!」みたいな。"
ーこんにちは。Mak! garc!aは本名ですか?
Mak!:はい、国際結婚しまして。
ー切り絵を始める前にはミュージシャンで、HBというバンドでドラムをやられていましたよね。
Mak!:HBは今は民クル(民謡クルセイダーズ)にいるムーちゃん(小林ムツミ)がパーカッション、あとツッチーというアップライトベースの子とトリオでやっていました。ミニマルでトライバル感のあるインストバンドで、1枚目は残響レコードから出して、その後P-VINE。他にも、HBと同時期にLOVE ME TENDERというバンドでドラムボーカルをやっていたり、HBの前にはmetro999というドラムとサンプラーのユニットをやってたり、色々やっていましたね。
ー今は音楽はやっていない?
Mak!:子供が生まれてからLOVE ME TENDERで復帰して7インチを3枚リリースしたんですけど、2021年に活動休止してからは切り絵の方にシフトしていきました。
ー切り絵を始める前から絵は描いてたんですか?
Mak!:毎日パーティーみたいなことしてたんで、フライヤーの絵を描いたりとか、そのくらいはしてました。でもちゃんと描いたりはしてなかったです。子供が生まれてからは、子育てで全然時間がなくて。そういう時にちょっとした息抜きでノートにいっぱい落書きしてて、気付いたらそれが3冊くらい溜まってて。それで、このデザインで切っちゃおうかな?!みたいな感じで切り始めました。
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ーへえ、何で切っちゃおうかな?!って思ったんですか?
Mak!:LOVE ME TENDERのベースのテッペイ君が結婚する時に、ウェルカムボードを作ってくれって頼まれたんですけど、昔フライヤー作る時に紙をチョキチョキ切って切り貼りするコラージュっぽいことやったの思い出して、それでなんか切り絵でやってみようかなと。
ー普通はいきなり切り絵という発想に辿り着かないと思うんですけど、気になる切り絵の作家とか作品とかがあったんですか?
Mak!:コラージュで文字の形を切った時に「かわいい!」って思ったことがあったんです。文字のフォントを紙でカットして作ったら、めちゃくちゃかわいくなった。「これだ!」みたいな。その気持ち良さを思い出して、やってみようかなーと。で、それまではほんとコラージュっぽく一個一個切って貼るみたいなことやってたんですけど、初めて1枚の紙から切り出すっていうことをやったら、すごい時間かかっちゃって。でもその時にデザインが繋がっていないと駄目だとか、コントラストのバランスとかを初めて意識するようになりました。
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ー美大に行ってたり、美術の教育を受けていたことはあるんですか?
Mak!:いや、もう全然そんなことはなくて。ずっとバンドとかやっちゃってて。バンドか水商売(笑)。何の道も通ってこなかったんですけど、まあいいやって思って(笑)。
ーそうなんですね。まあそれでとにかくウェルカムボードで初めての切り絵作品を作ったと。
Mak!:そう、それが評判も良かったし、自分的にも満足いく出来で。それで切り絵をもうちょっと色々やってみようって思って、子育て中の落書きノート見返したら、切るネタがいっぱいあって。インスタもそこから始めて。
ーなるほど。それで最初はコツコツ作ってはインスタに載せてって、溜まってきたから個展をやろうと。
Mak!:それも友達とか周りの人が「やってみなよ」って言ってくれて、最初の個展をやったFABREっていうお店も、お店の人が「やろうよ!」って言ってくれたおかげで何とか出来ましたね。あとその前にインスタでも高井くん(Ahh! Folly Jet)が「いいねー!」って言ってくれてて、それでAhh! Folly JetのMVに参加させてもらって。
ーじゃあ、あれは高井さんのオファーなんですね。
Mak!:そうそう。
"光と影だし、これはOHPでいけんじゃね?!ってなって。で、切り絵を動かしたい!とか"
ー切り絵を動画にするのが、すごい面白いなと思いました。あと、切り絵って普通のイメージだとペタッと観せるというかフラットな画面だと思うんですけど、Mak!さんの作品は動画に限らず影を付けて観せますよね。あれ面白いなと思って。何でそうしようと思ったんですか?
Mak!:光と影とか黒と白とか、そういうコントラストが昔から好きで、インスタ用に作品を撮影している時にやっぱり影が面白いなーと思っていて。一瞬一瞬変わるし、深いなーと。
ーそこからOHPを使うって発想も出てきたんですか?
Mak!:そうそう、OHPいきましたね。民クルのムーちゃんと「セッションしようか」って久々に会った時があって、ずっとマッコリを飲んでたんです。それで普通にセッションやってもいいけど、「今やってる表現の方が面白くない?」って話になって。じゃあどうにかして切り絵とパーカッションでセッションしようと。それで、昔HBのステージをOVERHEADS(OHPを使用したリキッド·ライトニングとスライドや映像をミックスし幻想的なLight Showを展開しているチーム)がライトニングしてくれた経験があったのを思い出して、OHPだ!ってなって。
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ーなるほど、その時のOVERHEADSの印象が強かったんですね。
Mak!:光と影だし、これはOHPでいけんじゃね?!ってなって。で、切り絵を動かしたい!とか色々願望が出てきて。
ー僕もFORESTLIMITでVJを拝見したんですけど、とてもかっこよかったです。ハリー·スミスの実験映画を想起させるような雰囲気がありました。VJの時はどういうことを考えているんですか?
Mak!:やっぱり音楽があるし、セッションなんですごい音を聴いてますね。でもあまり考えてはいなくて、終わった後も何も覚えていないです。自分で音楽を演奏している時もそうだったんですけどゾーンに入ってて、すごい楽しいみたいな。
"いきなり「これ何ワット?」って聞いてくる人が現れて(笑)。インスタで「#OHP」って付けたら、世界中のOHPやってる人たちから一気にフォローされました"
ープロフィールに「誰の記憶にもある、どこか懐かしいが実はどこにも存在しない、オリジナルなサイケデリックを探求している。」とありますが、何でそういうことを探求しようと思ったんですか?
Mak!:OHPを使い始めた時に思ったんですけど、すごいアナログな機械じゃないですか。自分たちの世代にとっては懐かしいんですけど、子供たちの世代にとっては新しいんですよね。光もぼんやりしているし、重いし、熱くなるし。あんなぼんやりした光とかゆらめきって経験しないとわからない。でも見たことないけど懐かしいみたいな。その感覚とか捉え方が面白いなと思って。あと、自分たちにとってもそういうものってあるじゃないですか。その感じを残すというか、伝えたいなと思って。
ーOHPって小学校とかで使ってましたよね。
Mak!:そう、でももう作られてもいないんですよ。
ーそうなんですね。OHPは買ったんですか?
Mak!:ヤフオクで買いました。2台も(笑)。最初に買ったのは、25,000円くらい。
ー意外とそんなもんなんですね。
Mak!:そう、そんなもんだったんですよ。だけど、ずっとヤフオク張ってると他のずっと張ってる人たちがわかってきて(笑)。狭い世界なんで。段々値段は上がってきてますね。光の強さが違ったりとか、色んなタイプがあるっていうのもわかってきました。
ーVJの機会は多いですか?
Mak!:春風とかL?K?Oのパーティーとかでやらせてもらってますね。さっき言ったようにOHP業界は狭いんで、春風の時に噂を聞きつけたのかOVERHEDASの助川さんが観に来ちゃったんです。いきなり「(OHPを指して)これ何ワット?」って聞いてくる人が現れて(笑)。でも私はHBの時の共演で覚えていたんで、ほぼ初対面みたいなもんだったんですけど、そこで色々お話して、助川さんからも「面白いアイデアだねえ」なんて言ってもらって同志として認めていただいて。他にもOHP始めた瞬間に、インスタで「#OHP」って付けたら、世界中のOHPやってる人たちから一気にフォローされました。
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ー面白いですね(笑)。音楽業界の繋がりは多いから、これからもVJをやる機会は増えそうですね。
Mak!:そうですね。こっちの方がライブ感があるから、やってても楽しいし、色んな人とセッションしていきたいです。
ーMak!さんにとってのサイケデリックって何ですか?
Mak!:うーん、何だろ。とりあえず紙は好きですね。
ー切り絵作家ですもんね(笑)。ムーちゃんのMumbia Y Sus CandelososのMVではアニメーションを制作してますけど、あれもちょっとサイケデリックみがありますね。
Mak!:フェナキストスコープっていうんですけど、ストップモーションで撮ったアニメーションで、そこに影とかも入ってくると予想外な動きがあって、やっぱりアナログな動きが好きなんでそういうのが面白いんです。ほんとのフェナキストスコープとはちょっと違くて、アプリを使って作ってるんですけど。
ーえ、あれ自分で撮影してるんですね!すごい!
Mak!:そうそう。
ーこれをやろうって思いついたきっかけはあるんですか?
Mak!:一番下の子がずっと回っているものを見ているのが好きで、そういうおもちゃがあるんですけど、それを一緒に見ている時に思い付きました。
ー他に影響を受けたアーティストとかはいるんですか?
Mak!:エッシャー(騙し絵の版画でお馴染み)ですかね。白と黒のコントラストとか、宇宙感とか、結構切り絵での表現に影響を受けたと思います。
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ーあー、たしかに。
Mak!:あと回すやつで言うと、デュシャンもそうですね。
ーうんうん。
Mak!:結構かわいい中にもちょっと毒とか怖さのある表現が好きですね。あと、コントラストを付けるとことフワッとしてるとこを混ぜたいみたいな。
ー作品のモチーフはどうやって考えているんですか?
Mak!:下絵を描いている時はパースのこととか考えたり、結構頭使ってるんですけど、切っている時はメディテーション状態で集中してて。でもその最中に「あー、次こういうの切りたい」みたいな感じで思い付いたりしますね。
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"60年代くらいのコンプ感のある音がすごい好きですね。ローファイ感というか。録音の感じとか。"
ーHBを結成したり、VJを始めるきっかけにもなっているムーちゃんとはどうやって出会ったんですか?
Mak!:私が20歳くらいでムーちゃんがまだ10代の時で、当時私がやっていたバンドと彼女がやっていたバンドがたまたま対バンして、仲良くなりました。2人で西荻のリンキーディンクスタジオに入って、ブリブリになってセッションして、終わったら近くの回転寿司屋に行って寿司食うみたいな遊びをしてましたね(笑)。彼女は当時からオーラがやばかったです。高校生の時から井の頭公園でディジュリドゥ吹いてるみたいな(笑)。
ーMak!さんも東京出身なんですか?
Mak!:いや私は神奈川の小田原です。高校卒業して、バンドをやりたかったので東京に出てきました。最初はポニーキャニオンの新人を育成育成する部署があって、ガールズバンドのドラマーとして行ったんですよ。
ーじゃあオーディションみたいな?
Mak!:そうそう、高校生の時にそういうオーディションみたいのがあって勝ち進むとポニーキャニオンと契約できるみたいな。
ーへえ、じゃあ結構音楽エリートなんですね。
Mak!:いやあ、でもそれで東京に出てきたものの、何だかんだで会社と揉めたりして、辞めちゃうんですけど。それから別のバンドを始めました。当時バンドのメンバー募集する時に張り紙に電話番号書いてちぎれるようにするやつあったじゃないですか。
ーありましたね(笑)。懐かしい。僕もやったことあります。
Mak!:そう、あれを書いて下北のお店とかに貼ってたら、もう既にバンドをやってる人から電話かかってきて、話したらいい感じだったんで会ったら、実は浅野忠信くんがいるバンドで。それで「やるやる!」って言って、一時期そのバンドにいました(笑)。99年くらいに1枚レコードも出しましたね。でも浅野くんは当時から俳優として売れっ子だったんで、忙しくてバンドをやる暇もなくなって終わっちゃいました。そこからずっとストリート(笑)。
ーちなみに小田原から出てきた時はどこに住んでたんですか?
Mak!:豪徳寺(笑)。
ーあ、やっぱり小田急なんですね(笑)。
Mak!:そう、やっぱり安心感を求めちゃうというか。小田急沿線で、乗れば実家帰れるみたいな(笑)。
ー音楽をきっかけに上京して、そのままHBなどいくつかのバンドをやりながら、出産した後に切り絵を始めるという流れですけど、VJの話も聞いてもやっぱり音楽みたいにやってますよね。
Mak!:うん、やっぱり音楽でやってきた感覚が一番自分はやりやすいですね。
ードラムはどういうきっかけで始めたんですか?
Mak!:小さい時に伊藤かずえ主演の『ポニーテールは振り向かない』っていう大映ドラマがあったんです。伊藤かずえ演じる不幸な境遇で育った主人公がドラマーで、バーのマスターが親代わりみたいな感じで、グレながらもドラムで更生して頑張るみたいな話で。それを観てドラムやりたい!ってなって。それで高校生になってからドラムを始めましたね。
ードラム教室みたいなとこに行ったんですか?
Mak!:小田原だったんで、そういうのもなくて。でも逆に個人経営のスタジオとかあって。とりあえずそこに「ドラムやりたいんですけど」って言いに行って。で、学生でお金もないんですけど、そこの人が「じゃあ空いてる時間、やっちゃいなよ」って使わせてくれて。たまにその人のタバコとかコーヒー買いに行ったりパシリやりながら、ドラムの練習させてもらってました。
ーまさに伊藤かずえのドラマみたいですね(笑)。
Mak!:そうそう(笑)。その近くにライブもあるジャズバーみたいなお店があって、高校生なんだけどそこにもたまに連れて行ってもらったりして。そしたら、そこのロン毛のマスターにも気に入られて、「これ聴きな」ってスライ・アンド・ザ・ファミリーストーンの『フレッシュ』を渡されて、それがまたすごい衝撃でした。「めっちゃかっこいい!これ叩きみたい!」な。
ーじゃあ結構スライが自分の好きな音楽の根幹なんですか?
Mak!:うん、軸ですね。
ー他にどういうのが好きなんですか?
Mak!:色々ですけど、60年代くらいのコンプ感のある音がすごい好きですね。ローファイ感というか。録音の感じとか。
ーあー、切り絵の線って絶対微妙に歪むじゃないですか。特にフォントの部分とか。あれもなんかコンプ感ありますよね。ちょっと歪な線。
Mak!:うんうん、そうなんですよね。多分そういうのが好きなんですね。
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東京を拠点に活動中の切り絵アーティスト、Mak!garc!a(マキガルシア)のオフィシャルホームページ【MAKIN‘ THE CUT】が遂にオープン。彼女が発表してきたオリジナルの切り絵作品を閲覧·購入出来る他、過去から現在までの活動状況が集約·更新されていく。また、オープン記念として、第一弾アイテム「MAKIN’THE CUT刺繍トレーナー」を販売開始。色は、ホワイト·ヘザーグレー·スーパーブラックの3種。各サイズも取り揃えている。以後、続々と限定アイテムが登場していく予定。今年遂にブレイクの予感の切り絵インスタレーションをはじめ、Mak!garc!aの最新動向をチェックしていって損は無し。
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Mak!garc!a official website【MAKIN’ THE CUT】
https://makinthecut.net/
ガルシアマキ(Mak!garc!a)
切り絵作家/アートプロデューサー
神奈川生まれ、東京在住。
HB、metro999、LOVE ME TENDERといった多種多様なバンドでドラマー、
時にはシンガーとして活動。
のちに三児の母となる。
バンド活動休止のタイミングで、切り絵の表現に魅了され
切り絵制作を始める。
2021年池の上のバー、FABREで個展を開催。切り絵作家としてデビュー。
2022年中目黒CHILITAで個展。
2023年目黒KALAVINKAで個展。
2023年press shopアサヒヤにて個展。
Ahh! Folly Jet、Mumbia Y Sus Candelososといったアーティストの
ミュージックビデオを切り絵を駆使し制作。そして遂に単なる画像や動画の枠に収まらず、オーバーヘッドプロジェクターを用いて切り絵を立体的に空間投影しはじめる。誰に記憶にもある、どこか懐かしいが実はどこにも存在しない、オリジナルなサイケデリックを探求している。