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KKV Neighborhood

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KKV Neighbourhood『Talkin bout MoshPit & DanceFloor & Living』はライブやパーティーのフロアで感じたこと、心が動かされた音…
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#長谷川文彦

ヤング・パーソンズ・ガイド、というほどのものでもないハナタラシに関する記憶の断片 by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #236 Column - 2025.1.6 ヤング・パーソンズ・ガイド、というほどのものでもないハナタラシに関する記憶の断片 by 長谷川文彦  去年の話になるが、山本精一がボアダムスが再始動して自分も呼ばれているみたいなことを言ったらしく(Xで見かけた情報だけど、ソースが見つからないので記憶で書いています)、ボアダムスが始動するのかとざわついた。バンドの形態からボアダムスが離れてから山本精一は参加していなくて、「今回は呼ばれた」というこ

HYPER GAL 『AFTER IMAGE』 - 簡単には言語化されないノージャンルな音 - by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #228 Disc Review - 2024.10.7 HYPER GAL 『AFTER IMAGE』by 長谷川文彦 関西を拠点にする二人組ユニット HYPER GALの3枚目のアルバムが出た。昨年配信のみでリリースした曲「Ghost」(このアルバムにも収録)がよかったのでアルバムが出るのを楽しみにしていたのだ。 冒頭、意表を突く感じでブラスの音で始まる。あれれ、こんな展開は初めてだと少しびっくりしつつも、しばらくするといつものHYP

DRAHLA 『ANGELTAPE』 フィジカルで持っていたい一級品のアルバム by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #220 Disc Review - 2024.6.18 DRAHLA 『ANGELTAPE』 review by 長谷川文彦 海の向こうではもうCDはあまり作られていないのだろう。輸入盤だと、たとえ新譜を事前に予約しても発売日にはなかなか入ってこない。日本でも洋楽のCDはもうそれほど売れていないだろうから、お店も確実に売れるもの以外は仕入れない。日本盤が出ないマイナーなバンドのCDを手に入れるのはもうあきらめた方がいいののだ。そんな話は今

TORR -ここはかつてのシカゴじゃない、東京の今だ- by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #218 review - 2024.5.8 TORR review by 長谷川文彦 ネットを徘徊していておもしろそうなバンドに出会うというのは至福の時である。TORR(トルと読む)というバンドのことを知ったのは昨年の12月ぐらいだ。Xのタイムラインを眺めていたら、ソニック・ユースやスワンズを引き合いに出して彼らを紹介するポストが目に留まってピンと来た。チェックすると音源がいくつか出ていたのでまずは手に入るCDを購入。こういうことはすぐや

Killerpass 『あるいていこう』自分のことを歌うパンク・ロック by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #190 Disc Review - 2023.10.26 Killerpass 『あるいていこう』 review by 長谷川文彦 パンクも50年近く経つといろいろな流派が出来ている。かなり広範囲にパンクというものを聴いてきたつもりだが、その中で自分が苦手なのが「やさしさパンク」だ。これは自分が勝手に作った造語だけど、自分探しに熱心で人にやさしい一派がパンクの一角にいるのは間違いないと思う。この流派の源流は間違いなくブルーハーツで、ブルー

YARD ACT『THE TRENCH COAT MUSEUM』誇り高き大英帝国のひねくれ者の末裔 by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #184 Disc Review - 2023.9.12 YARD ACT『THE TRENCH COAT MUSEUM』review by 長谷川文彦 今年のフジロックで一番観たかったのはYARD ACTだった。昨年出たファースト・アルバム「The Overload」は本当に素晴らしかった。それまで出ていたシングルもよかったけど、アルバムは桁違いでよかった。一曲目の「The Overload」の爆発力と躍動感がそのままアルバム全体を引っ張

computer fight『suburban blues』 暴走する社会のサウンドトラック by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #163 Disc Review - 2023.3.28 computer fight『suburban blues』review by 長谷川文彦 以前ここでも紹介したPsychoheadsが2月に解散した。アルバム1枚と数年の活動、その一瞬の煌めきで消えていく美学。そんなものがロックにはインストールされていることを我々は了解している。その典型を作ったのはセックス・ピストルズであり、そうなれなかったのはマニック・ストリート・プリーチャーズ

Psychoheads『Pistol Star』 これはもう新しいスタイルのパンクロックとしか言いようがないでしょ

KKV Neighborhood #146 Disc Review - 2022.08.31 Psychoheads『Pistol Star』 review by 長谷川文彦 最近歩きながら一番よく聴いているのはこのアルバムだ。自然と歩くスピートが上がり、足取りが軽やかになっていく。そういうアルバムだ。 Psychoheadsというバンドのことを知ったのは2020年の最初の頃だったと思う。知ったのはMs.Machineのメンバーが推していたことがきっかけで、ちょうど2月に

Boris『Heavy Rocks』円熟とはほど遠くさらなる高みに達した”Heavy Rocks”

KKV Neighborhood #145 Disc Review - 2022.08.16 Boris『Heavy Rocks』review by 長谷川文彦 コロナ禍が始まった2020年以降、Borisは2枚のアルバムをリリースした。『NO』と『W』だ。振れ幅が広い彼らの音楽性の中でも対極に位置するアルバムだったと思う。 2020年にリリースされた「NO」はリアルな場が封鎖された状況の中にあって、敢えてそれに抗うようなフィジカルで激しい内容だった。Borisの音楽性の一

BORIS「Pink」 大文字「BORIS」の絶頂 ~ 下北沢シェルターの時代から次へ by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #133 Disc Review - 2022.06.03 Boris『PINK』7'inch review by 長谷川文彦 『Heavy Rocks』以降のBorisは「BORIS」としても「boris」としても快調に飛ばしていた。「BORIS」としては『あくまのうた』を、「boris」としては『boris at last -feedbacker-』をリリース。どちらもBorisの両翼に振り切った傑作だった。 この頃、彼らはよく下北沢の

BORIS『Heavy Rocks』 大文字「BORIS」の覚醒 ~ その後の路線のひとつを明確に示したマスターピース by 長谷川文彦

KKV Neighborhood #130 Disc Review - 2022.05.31 Boris『Heavy Rocks』7'inch review by 長谷川文彦 Borisを初めて観たのは1995年のことだ。the原爆オナニーズの対バンで観たのが最初。その頃、原爆はよくLa.mamaでライブをやっていて、対バンで若いバンドがたくさん出ていた。ギターウルフやTEENGERERATEを初めて観たのも原爆の対バンでLa.mamaでだった。 その時、原爆のタイロウさん

経血『Kankai』自分には「最高」としか言えないです

KKV Neighborhood #122 Disc Review - 2022.2.22 経血『Kankai』(悲観レーベル) review by 長谷川文彦 最初にちゃんとしておきたいのだけど、経血のボーカルの「まり」をどう表記するかということが悩みなのである。CDのクレジットには「まり」と記載があるので「まり」でいいじゃないかと思うのだけど、直接面識のない女性を下の名前で呼び捨てにするのは少々なれなれしい感じがして嫌だし、何より失礼に当たるのではないかと心配だ。かとい

裸のラリーズ 2021年、伝説からの解放を希望する

KKV Neighborhood #107 Column - 2021.11.05 by 長谷川文彦 10月21日の夜中、裸のラリーズのホームページが突然現れた。翌日の朝、ツイッターのタイムラインがざわついていた。昔から裸のラリーズは正式なバンドからの発信がほとんどないバンドだ。公式ホームページなんていうものが出来ればその界隈の人たちが戸惑ってしまうのはよくわかる。 そして、トップページには「Takashi MIZUTANI 1948-2019」と記載されていた。水谷孝が亡

BLACKPHONE666『PTN.YLW - HARM』ガバ+ハーシュノイズによる異世界へのファースト・エントランス

KKV Neighborhood #100 Disc Review - 2021.9.17 BLACKPHONE666『PTN.YLW - HARM』(Murder Channel) review by 長谷川文彦 ツイッターでBLACKPHONE666(黒電話666)の新しいリリースの告知が流れてきたのは7月。告知にはさわりの部分の動画が貼ってあって、それがすごく良くて、すぐに欲しくなって予約した。フィジカルはカセットテープのみのリリース(DLコード付き)。Bandcam