【半・分解展】ヴィクトリア朝のドレス展
2024年4月13日、衣服標本家の長谷川さんの展示に行ってまいりました。
19世紀ヴィクトリア調が大好きなのもあり、意気揚々に春の陽気に誘われて行ってきたのですが予想以上に来訪者が多かったです。ファッション好きな人が多いのか、ロリィタさんやモード系の服装の方が多いと感じました。
ここにいる方全員、ドレスが好きな人たちなんだと思うと勝手に仲間意識が芽生えそうになります。
ちなみに、私はBloodborneのオタクで服装から考察とかやっていたので服をじっくり見れるこの展示は這ってでもいく!と決めてました。
しかも、この展示のすごいところは展示品であるドレスに触れることです。なので、ケープやスカートの裾を捲り、裏地や縫製を見ても問題がないのです。
19世紀の代表的なファッション、クリノリンも実際に触れることができます。ドレスの生地越しに触らせてもらったのですが、ワイヤーのような硬さと太さ、ボヨンとした反発力。これがくじらの髭であることが信じられません。
100年以上も前のドレスを手にする機会なんて、学芸員や専門職じゃなければ無理じゃないですか。そんな滅多にない機会をこの展示では体験できます。
展示のレイアウトですが、入り口から奥にかけて年代が新しくなるようにドレスが配置され、近代にかけてドレスが華美になっていくことが分かるようになってます。
19世紀最初期は、なで肩と腰のくびれが強調される時代だと知っていたのですが、その時代のドレスを見るのは初めてです。実物を目の当たりにして感じたのは、本当に肩に直線的な表現がないこと。何よりも腰回りが本っ当に細い。ありきたりな言葉で語るなら、折れそうなほどに細い腰です。私の太ももより細いんじゃないかなこれ。
関係ないですが私は混じりっけのない骨格ストレートなので、くびれはなく胸部は厚い。肩は怒り気味で直線上。この時代に生まれたらルッキズムで病む。さらに肌はイエベ春なのでくすみカラーや白黒は映えない。良かったこの時代に生まれてなくて。
今回特に実物を見るのを楽しみにしていたのが、長谷川さんのTwitterでも紹介されていたシャトレーヌ。
触った感じ、結構重たい。これを腰に下げるの邪魔だったりはしなかったのかなと思いつつ、趣味嗜好をこのアイテムで伝えるのって痛バッグ文化みたいだな……とかオタク側の発想が出てしまう。
一つ一つが丁寧に作られているのが分かるほど、装飾が洗練されてました。これも写真だけじゃ分からない部分もあったのでじっくりと触って拝ませていただきました。
こちらはヴィクトリア女王が喪に服していた時代に流行った黒のドレスたち。一つのドレスに三種類の生地が使われていたり、生地の上にさらにレースを重ねられていたりとかなり華美な印象です。
この時代にもなるとバッスルも大きく、より豪奢なデザインになってきています。
そして一生見る機会はないんじゃないかと思っていた。
ヒ素で染められた緑のドレス。毒物で染め上げられたとは俄かには信じ難い、綺麗な発色のドレスです。これもも触っていいとのことなので、恐る恐る触らせてもらいました。……思っていたよりツルツルとしたような感触です。当然ですが、指が痺れたりするようなこともありません。この綺麗なドレスはどんな女性の健康を害してきたのか想像もつきませんが、時代を跨いでも綺麗だと目に映ります。
個人的に心が惹かれたドレス。シルエットも色も形も全てが好みなデザインでした。胸元の花の形も、スカートのタックも、自分が想像する淑女が身に纏うものといった感じです。
懐中時計のチェーンがアクセントになっているのもまた素敵。
ポケットにはシノワズリを感じるセンスが収まってました。
19世紀はシノワズリの服も多く、こちらも何点か展示されてました。
気になった方は是非足を運んでいただければ。
そしてブラボのオタクが食いつかざるを得なかったドレスがこちらです。
に、人形ちゃん!!
シルエットが完璧に人形ちゃんでした。
人形ちゃんのケープって少し複雑なデザインをしてるんですが、フリンジやシルエットがあまりにもそっくりで興奮してしまいました。丈感もあまりにも人形ちゃんが過ぎる。
ケープの位置がずれないようになっているのか。
内側はこんな感じで裏地があり、腕を通す穴が空いてました。実用的!
このシンプルなドレスは……?と思ったらウエディングドレスとのこと。
聞き間違いでなければ、一枚の布で出来ているらしいです。(自信無)
装飾がほとんどないシンプルさに対して、シルエットが本当に綺麗。この時代にしては本当に飾りっ気がないデザインです。ヴィクトリア女王の時代のウエディングドレスってフリル・レースで豪華なイメージだったので、かなり驚きました。
シンプルな分、生地はいいものを使っているのか指感触のいいサラリとしてます。
靴や小物といった装飾品も展示されてます。19世紀の靴といえばフロントフックの靴のイメージだったので実物が見れて嬉しかったです。
その脇にはボタン留め用のやつも展示されてます。ボタン留め一つにも丁寧な彫刻が施されてたり、石が嵌められていたり、この時代の美に対するこだわりってやっぱり好きです。
半・分解ということで、このように衣装の型も展示されてます。
服飾の知識は皆無に等しいのですが、この服がこのパターンで製作されていることは一目瞭然になってました。当時の衣服のパターンを知れるのはこの展示以外ないかと思うので、本当に貴重なものを見させてもらいました。
【長谷川さんの口頭による解説】
※一部記憶違いがあるかもしれないです。
・ロココ時代のドレスの縫製(裏側)が汚いのは何故?
仕立て直すことが多いため、雑巾のように縫うのが当たり前だった。糸を解くのが前提だったので、ロココのドレスの裏側は糸が出ていたりガタガタの縫い目だったりする。むしろ雑に縫わないと怒られる。
19世紀のドレスの方が縫製が綺麗。
・19世紀の肌着(下着)とは
ドレス着用時の下着はシュミューズ。肌触りがいいように縫製は非常に丁寧で繊細。きめ細かいさらりとした生地になっている。また、細い針を使用しており縫い目はミシンのように細かい。このようなシュミューズは、かなり地位が高い者しか着ることができなかった。
上流階級でもリネンの下着を着用する。上記のものに比べてざらざらとした肌触りをしている。
さらにその下に位置する労働者階級は、たわしのような感触の下着(一応リネン)を着用していたそう。
・ドレスが中期あたりからより立体的になったのは
19世紀に入ってドレスの進化は著しく、横にステッチを加える技法が編み出されたのもこの時代。横にステッチを入れることでドレスに立体感が一層生まれるようになった。
・三角帽の内側に何故プリーツがあるのか
頭を支えるクッションの効果があるため。
他にも色々とお話してくれましたが、個人的にへえ〜!と思った部分を抜粋させていただきました。
衣装も解説も、全て書き出したいくらいなんですが実際に色んな人に行ってほしいな〜の気持ちのほうが大きいので、書きたかったところまで書くことに。
行ったタイミングが良かったのかもしれませんが、長谷川さんに直接質問ができるような、産業革命時代とは真反対の気軽で明るい雰囲気に包まれてます。
実際に展示に参加して、お話を聞く方が絶対に満足度や理解は高くなるはずですので、是非これを読んでくださった方も足を運んでくだされば嬉しい限りです。
ちなみに、ドール用のお洋服も展示されてました。
人形ちゃんの人形を作りたい(?)という気持ちがあったので、益々その欲が強まるのを感じました。
長谷川さんのアカウント
@rrr00129
展示会の公式ツイート(ポスト)
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