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初の人的補強 伊藤優輔
1月16日、福岡ソフトバンクホークスは甲斐拓也の移籍に伴う補償として伊藤優輔投手を人的補償として獲得することを発表しました。ソフトバンクがFA移籍の補償として選手を指名するのは初めてのことです。
今回移籍が発表された伊藤投手について、またソフトバンクが伊藤を獲得した経緯を考えてみようと思います。
伊藤優輔
1997.1.14(東京都)
178cm 82kg
投手 右/右
都立小山台ー中央大学ー三菱日立パワーシステムズ(三菱パワー)
都立小山台高校時代より、公立の星としてドラフト候補に名前が上がっており、14年春のセンバツに出場。初戦で履正社高校に破れるも主軸の中山翔太(元ヤクルト)から3三振を奪うなど、結果を残すもプロ志望届は出さず中央大学に進学。最速144km。(都立の星として騒がれていた印象)
中央大学進学後は1年春から登板機会を得ると主戦級投手として活躍。3年時に膝の故障で戦列を離れ、4年時より復帰。通算39試合 8勝13敗 防御率4.34 最速149km
三菱日立パワーシステムズ(三菱パワー)入社後は1年目からベンチ入り。日本選手権 トヨタ自動車戦で2回無失点の好投でドラフト候補に上がる。最速156km
2020年ドラフトで巨人よりドラフト4位指名を受け入団。
入団後の2021年にトミージョン手術を受け育成契約に移行。2024年7月に支配下登録となり、同年にプロ初登板を含む8試合に登板。
1軍通算 8試合 8.2回 防御率1.04 1H
2軍通算 57試合 66回 防御率2.45 4勝2敗14S
今季はファームのクローザーとして40試合に登板。14セーブをあげ、防御率1.29と抜群の安定感を誇った。
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獲得の経緯
当初ソフトバンクは甲斐の流失に伴う捕手のデプス不足から捕手の指名、もしくは左腕リリーフの獲得が濃厚との報道もありました。
特に出場機会の減少が見込まれる、ベテラン捕手の小林誠司を狙うのではないかとの報道はネット記事等で散見されましたが、その通りとはなりませんでした。
(個人的には劣化版嶺井にしかならないと踏んでいたので、獲得に至らず安心しました)
となると左腕リリーフか?候補としては大江や中川などの1軍実績も豊富な選手の名前が上がっていましたが、選ばれたのは実績の少ない社卒右腕の伊藤でした。
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獲得の経緯についてソフトバンク三笠GMは
「ジャイアンツは元々いい投手がいて投手力で昨年も勝ってきた。(伊藤は)トミージョン手術をしたあとですけど、今年も一軍でも二軍でもいいパフォーマンスをしていた。プロスカウトの意見も総合して」
と語った。(東スポWEBより)
個人的には安直にデプスの薄い捕手や、故障歴などがある割に中途半端にリターンの少ないリリーフサウスポーを選ぶのではなく、ファームで圧倒的成績を残しながら、長期間による保有で枠を圧迫しない中堅右腕の獲得は割と良いチョイスではないかと思いました。
伊藤の今季成績
トミージョンからの完全復帰を期した昨季は開幕当初こそ育成契約でしたが、7月時点で29試合に登板し、3勝9セーブ、防御率は0.90と抜群の成績を残し、支配下に復帰。1軍では8試合の登板に終わりましたが、それでも防御率は1点台と一定の成績を残しました。
今季の伊藤はファームで169人の打者と対戦し被本塁打は0、ゴロ率も56%と打球管理に優れ、被ハードヒット率も年々改善傾向にあります。
また今季はトミージョン手術以降、特段プラスを稼げていなかったピッチバリューもほぼ全ての球種でプラスを稼げており、特にカットボールは大きな武器になっており、手術による影響も今の所見当たりません。
ストレートが強く、カットボールやフォークなどの速球系の変化球で制圧できる投手はいかにもソフトバンクが好きそうな投手だなと思います。
伊藤の起用法
昨年こそリリーフとして起用されていた伊藤投手ですが、今季は先発起用を示唆されていました。ソフトバンクでも先発、もしくはロングリリーフでの起用が濃厚です。
別noteの上沢獲得の経緯でも記載しましたが、昨オフから年始のソフトバンクの動きは、このような先発できる能力を持つ中堅投手の獲得に熱心であり、明確に狙ってきています。
そこでも同じことを書きましたが、ソフトバンクは中堅投手の再育成に相当の自信があるように思われます。
この獲得の意図が上手く合致すれば、例年にないかなり高いレベルでの先発ローテーション争いが形成されそうです。
年齢層がやや偏ってはいますが、下の世代には前田悠、岩井ら有望な若手が控えているので、将来的にローテーションを任せたい若手の枠を圧迫しないのも利点ですし、先発ローテに残れなくとも、モップアップやロングリリーフなどの安定しない起用場面で若手の肩を消耗しなくて良いのもチームとしては非常に助かります。
さいごに
人的補償としての伊藤のチョイスは意外な反面、納得もできるチョイスかなと思いました。
これで残りの支配下枠は5人。育成でも多くの選手を抱えており、昨季同様に多くの選手が開幕前、7月末に滑り込みそうです。投手陣の競争はかなり激化しているので、野手の昇格が多くなりそうですが、一体誰が割って入ってくるのか。