大型補強と若手の伸び悩みはトレードオフなのか?
チームを強くする方法はいくつかある
ドラフト、トレード、FA、海外からの補強
中でもNPBでの実績を残している選手を他球団から補強する方法は、実力が未知数なルーキー、新外国人選手よりも堅実且つ短期間でチームを強くする方法である
が元来選手の流動が少ないNPBにおいては否定的に見られることが多い
今回は大型補強にフォーカスしてお話ししようと思う
大型補強=弱体化!?
新年になり数日が経過。仕事始めと共にメディア各所でも来シーズンの順位予想や、戦力構図に対する論評が出てきた。我らがソフトバンクホークスは年末の大型補強も相まって例年の如く1位予想に挙げる声が多くあった。
がそう順当に予想したところで盛り上がらないのが世論というもので、ことNPBにおいてもその面は強い。
2023シーズンのホークスも例に漏れず、否定的な意見が複数あったがその中で最も大きかったのが現有戦力のモチベーション低下、中でも若手が伸び悩むというものであった。
元大洋の高木豊氏は自身のYouTubeにて
※以下要約
「ホークスの補強は見境がなさすぎる。現有戦力で賄える部分まで他球団から獲得し、昔の巨人のようだ。もちろん勝つとは思うが、順当に行くとは思えない。特に出番を奪われる若手には不満が積もるはずだ。ホークスの強みは育成であり、正直4軍まで作るのはやり過ぎだとは思うが、その強みを活かしたチームづくりをすべき」
との持論を展開している。
強くするはずの大型補強がなんとチームの弱体化に繋がるとは
はたまた驚くべき論評である
高木氏がこう述べる背景には、自前ではなく、金に物を言わせたような補強に対する苦言と共に2000年代の巨人の姿、近年の楽天を見てきたからであろう
が、ここ15年程度しか見ていない私はこう思うのである
別にホークスの大型補強って今回だけじゃなくね?
と
過去の大型補強を例を挙げてみよう
2010年オフ
2010シーズン、リーグを制しながらプレーオフで敗退したホークスは、日本一を手にすべく、その年のオフの目玉であった2人の獲得に踏み切った。横浜から稀代のヒットメーカー内川聖一、ライオンズの頭脳こと細川亨、オリックスから長距離砲のA.カブレラ、海外からは先発候補のA.レルー、怪我のため育成契約ではあったが元日本代表の藤田宗一と豪華な補強であった。
2013年オフ
4位に終わった2013年オフはFAで中日から中田賢一、日ハムから鶴岡慎也と九州にゆかりのある実力者を補強すると、オリックスから李大浩、阪神からスタンリッジ、ライオンズからサファテ、日ハムからウルフらの実績のある外国人助っ人、MLBから岡島秀樹、キューバリーグからカニザレス、またシーズン中には新垣渚、山中浩史とのトレードでヤクルトから川島慶三、日高亮を獲得。人数だけ見ればこの年の方がよっぽど見境なく見える。
ではそれではこれだけの補強を敢行して成績はどうなったのか
2010シーズン リーグ優勝(PO敗退)
⬇︎
2011シーズン リーグ優勝 日本一
2013シーズン 4位
⬇︎
2014シーズン リーグ優勝 日本一
普通に補強して正解です
補強して勝てない方がおかしいんですよ()
長期的な影響
いやいやと、短期的には勝てるかもしれないけど、長期的にはどうなの?
ちゃんと若手は育ってるの?
と言われそうなので、2010オフから長期的な経過を見てみることにします
2012シーズン 3位
2013シーズン 4位
ほら!弱くなってる!
確かに2年連続で優勝争いから離脱してますが、ちゃんと理由があります。
2011シーズンオフは今思い返しても悪夢のような冬でした。
MLBにリードオフマンの川崎宗則とエースの和田毅が流出、FAで先発ローテを担っていた杉内俊哉とDJホールトンが巨人へ移籍。むしろ22勝分が消えて3位で終えたことを褒めて欲しい。
実績のある、しかも貴重な先発投手が3人も抜けた穴を若手と新外国人で埋める?そんな夢のようなことがあればどこも苦労しませんよ。ちなみにその年はFAで帆足秀幸、新外国人としてB.ペニー、R.ピント、野手でもW.M.ペーニャを獲得しており、そこそこ大型補強だった。(そもそもメジャーで軒並み投球指標が悪化しまくってたペニーと専らリリーフだったピントを先発として獲得って)
加えて2010オフに先発投手補強してないし、、、あれ?レルーは?
若手への影響?
じゃあ内川と細川の補強で出番を奪われたのは?
補強当時の若手外野手といえば、江川智晃や中西健太、ドラフトで獲得した柳田悠岐らであり、特に前述の2人は既に出番は貰えていた。捕手で言えば中堅捕手として山崎勝己、高谷裕亮、堂上隼人らであったがいずれも正捕手として決め手を欠いており、こちらもルーキーの山下斐紹が出てくるまでの正捕手獲得が急務であった。
いずれの選手も確かに大型補強で出番は減ったかもしれないが、内川や細川並み、それ以上の貢献ができた可能性は限りなく低いだろう。
特に先発投手、長距離砲、正捕手はどの球団も確保するのに苦心している。そうでなければ、毎年中堅に近い年齢の助っ人や社会人選手を補強なんてしないはず。
2014シーズンはまさに現有戦力と補強した選手が上手く噛み合った年であり、それ以降は4年連続の日本一を含む7年間の黄金期を迎えたことは多くの野球ファンの知るところであろう。2021シーズンと2022シーズンは若手野手の台頭が課題となったが、むしろこの間の野手の補強で目立ったのはデスパイネ、グラシアル、バレンティン、ガルビスと枠に制限のある外国人野手であり、若手が出てこれなかったのはアピール不足と、起用出来なかった首脳陣の責任によるところだろう。
(この間はむしろFAで苦戦しており、浅村栄斗、西勇輝の獲得に失敗している)
むしろ大型補強によって勝ち星がある程度見込めるからこそ、余裕のあるポジションで若手を試せるといった効果もある。育成のホークスの名を轟かせた千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太に栗原陵矢、上林誠知。先発投手、正捕手、軸となる打者、短いスパンで各ポジションを自前で育てることができたのは、一軍が安定して勝てていたからに他ならない。
大型補強は正しくない競争?
そもそも競争社会である日本球界において、補強は悪なのか?正しくない競争なのか?
答えは分からないが常に優勝争いを目指し、補強と同様に選手育成にお金をかけているホークスからすれば、そのハイレベルな争いの中から生まれる才能こそが求めている選手なのであろう。
ただの良い選手ではなく、スーパーな選手を。
昨今のホークスの若手は長谷川コーチをはじめ、首脳陣、ベテラン選手から貪欲さやマナーなどメイクアップの部分で苦言を呈されることが目立っている。ホークスの無限にも思われるような育成枠によって、プロへの敷居が下がってきたことや、独立リーグなど野球を続ける環境が増えてきたことが原因かもしれない。
じゃあこういった若手が出番を与えられてセンセーショナルな結果を残せるのか、出番に見合う経験を得ることができるのか。
最後に
私が強く思うことが1つ
NPBにおいて補強と育成の関係性は決してトレードオフではないと思っている
ブチャラティ風に言えば
補強はする
育成もする
両方やらなくっちゃあならないってのがNPBのつらいところだな
結局ここの覚悟があるからこそホークスは大方補強と4軍の設立の両方に踏み切ったのではないかなと
10年ほど前の3軍設立時もきっとそうだったのだろう
果たしてどちらが本当にチームのためなのか、その答えはシーズンが終わってから分かるのか、数年後分かるのか。
今回の補強がホークス復活の一助となることを祈って締めたいと思う。
それでは次の更新で。
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